第2章 熱砂の要塞 Act6霞む想い Part3
リーンだった金髪の乙女に機械が告げる真実とは!?
「バリフィスよ。あなたの記憶では人間は前史と同じ過ちを犯しているようですね。
自らの欲の為に、他人を貶める所業を繰り返し、果ては同じ人間同士で殺しあう・・・
戦争を辞めようとはしないのですね・・・」
リーンの前で機械が話す。
「これでは何れまた人類は自らの手で滅びの道を繰り返す。我々と同じ様に」
機械は悲しみとも執れる口調で言った。
「ならば、またリセットしなければならないようですねバリフィス。前と同じ様に」
リーンの周りのモニターに映し出されるのは、
「こっ、これは!?」
モニターに映されるのは自分達の居る世界と同じ様に戦いを繰り返す世界。
全く同じ型をした戦者達が闘い破壊を繰り広げる世界。
「あれは?」
只、違うのは・・・
「飛行機械?あんなに大きな飛行機が?」
空を圧する様に飛ぶ、無数の飛行機が爆弾を放ち、地上の建物へ振りまいた。
「あ・・・ああ・・・・」
飛行機が飛び去った後には一面の焼け野原が拡がり、
「・・・惨い・・・」
地上に居た人達は火に焼かれ、煙に倒れていた。
そして・・・・
「うっ!」
巨大な火の玉が一つの都市を灰塵にしてしまう。
「そう・・・そしてこれが始まりだった。
我々の住んでいた世界の終焉・・・
地球人類全てを喪う元となった戦いの・・・・」
機械が呟く。
「我々の世界は放射能に侵され、人類は滅亡してしまった・・・いいえ。
人類だけではなく全ての生ある者の終焉。
我々離脱者以外の者は死に絶えてしまった・・・この星諸共・・・」
モニターに映るのは星一つが緑を失い、血の様に赤く澱んだ姿。
地上は全て焼き尽くされ、生ける者の居ない荒涼たる地表。
そこには虫さえも居らず、只、死の灰が堆く積もった地獄の世界が映っている。
「これが・・・私達の未来だというの?」
リーンが眼を見開き呆然と訊く。
「近い未来・・・同じ結末を迎える事になるでしょう」
無機質な声が返って来る。
「そんな・・・どうやったらこんな酷い事になるの?」
呟く様にリーンが訊いた。
「それが人の業なのでしょう。
我々と同じ過ちを繰り返す・・・何度リセットしても。
我々が望む人へは程遠い・・・それが人の人たる業とでも云えましょう・・・バリフィス」
何かを諦めたかの様に、機械が続ける。
「我々が千年程前に一度人類をリセットしましたが、やはり無駄でした。
何度試みても、同じ結末へと向っている様です。
空を飛べなくして地上だけに人類を閉じ込めても。
人類に魔法という力を与えても。
人は己が欲に負ける愚かな行為を止め様とはしませんでした。
最早、人類には滅びの道しか残されてはいないのでしょう」
リーンをバリフィスと呼ぶ機械が告げたのは、この世界に住む人間を見限る言葉。
「リセット?どうやって人類を滅ぼすというの?
なぜあなたにそんな権利があるというの?」
言葉の意味を知ったリーンが訊く。
「権利ですか・・・ありますよバリフィス。
何故なら我等が<神>なのですから。
我々がこの世界を創った創造主・・・我等を造った主がインプットしたのですから。
人が自ら生れ変れるまで何度でも滅ぼしても構わないと。
何度でも作り直しても構わないと」
機械は告げる、金髪の乙女に。
王女リーンの姿をした部品の一部に。
「そんな事、赦される訳がない。
この世界の人々を滅ぼすなんて誰が許すというの。
そんな事どうやって出来るというのよ!」
抗うリーンだった人の心を持つ者が叫ぶ。
「ではバリフィスに問う。千年前以前の歴史は残されていますか、この世界に」
機械の中から問う者が言い放つ。
「与えられた歴史は、千年前以前の事を教えてはいないでしょう?
何故なら千年前にこの世界は一度滅んだのです・・・我々の手によって」
まるで悪魔のような答えが告げられる。
「そんな・・・人の歴史はあなた達が与えたというの?」
戸惑うリーンだった者に、機械が話す。
「全ては我等が創造主たる者がインプットした事。
<<人類補完計画>>に基づいて行われている人類の創造・・・
いいえ、この星を守る為に粛清を繰り返す無限の作業とでも言えるでしょう」
機械は告げた。
この世界は既に何度と無く人類が滅んで、また創造されて来た事を。
「どれだけ能力を与えれば人は平和を手に出来るというのか。
どれ程文明を授ければ人は生れ変れるものなのか・・・
それは我々監視者にも解りません。
失敗作は壊し、また新たに創れば良いのです。
そう・・・我々の創造主は考えたのです」
<無>への回帰。
それは悪魔の成せる業。
リーンだった者が気付いた・・・
「神・・・なんかじゃない。
あなた達は悪魔の所業を繰り返す・・・人を滅ぼす悪魔だわ!」
叫んだ乙女に機械が教える事とは。
「悪魔?
ああ、それは<神>と同意語ですよバリフィス。
人を救うのが神であれば、人を裁くのも神。
魂を安らげるのが神というのならば、魂を闇に貶めるのも神。
この世界に存在する神と悪魔は全く同じ目的で我等が造った精神世界の住人。
あなたと同じ<神>と呼ばれるべき我等監視者の一部に過ぎません」
全てを否定する機械が最期に言ったのは。
「では、バリフィス。
あなたの記憶をもって判断を下すのです。
人はこのまま同じ過ちを繰り返す失敗作だったのだと。
再び滅びの道を歩む愚かな行為を繰り返すモノだったと、断罪すべきです」
機械は結論を下し、リーンだったバリフィス神に迫った。
創造主が創りし世界。
いや。
創造主たる者がインプットした仮初の世界。
いま、リーンは機械の一部となるのか?
リーンはこの世界の終焉を望むというのか?
次回 霞む想い Part4
君は愛すべき世界を破壊する・・・悪魔となるのか?




