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第2章 熱砂の要塞 Act5奈落 Part6

ミハルは闇の中で魔王に屈しようとしていた。


その魂を奪われてしまうのか・・・

「あ・・ああ・・・うぁ・・・」


徐々にミハルの瞳から輝きが奪われ始めて、


「ル・・・ルシちゃん・・・駄目・・・だよぉ」


哀願するかの様な声が、ミハルから漏れだす。


「ふふふ・・・いつまで保つかな、天使の力を授かりし娘よ。

 最早、抗う力もあるまい」


ゆっくりとルシファーの手が、ミハルの胸に伸びる。


挿絵(By みてみん)



     <ポウッ>


ミハルの胸から金色に輝く魂が抜き出され現れた。


「さあ・・・その身を余に与えよ。

 その口で求めるが良い・・・余のモノと化すと。

 余と同化すると・・・望むのだ!」


紅黒き瞳でルシファーが命じる。


「ルシちゃんと同化するの?ルシちゃんのモノになるの?」


闇の波動が苦痛から快感へと換えられて、ミハルを惑わす。


「あ・・・あんっ、駄目ぇっ・・・や・・・やだぁっ!」


仰け反る身体を紅潮させて、ミハルが精一杯の抵抗を試みるが、


「ふふふっ、抗っても無駄だ。

 そなたは余のモノになるのだ。

  諦めろっ!」


ルシファーの波動は強くなる一方だった。


だが。


「違う・・・あなたはルシちゃんじゃない。

 私の好きなルシファーは諦めろなんて言わない!」


瞳に生気を取り戻したミハルが、目の前に居るルシファーに言い返した。


「くっくっくっ、何とでも言え。

 そなたの魂はもう余の手に握られておる」


金色の魂を前に、ルシファーが勝ち誇った。


「そうだとしても、私は諦めない。

 諦めたら駄目って、ルシちゃんも言ったから!」


目の前に居る魔王に向って叫んだミハルに、

魔王が言い返そうとした時。


「そう!誰が我が主人を魔王なんかに渡すものか!喩えこの身が滅ぼうとも!」


ミハルの魔法衣が叫んだ。


「何っ!?」


魔法衣によって気配を隠していた者が吼えた。


「ミハルはおまえなんかに渡さない!

 魔王なんかに喰わせて堪るかぁっ!」


    <グルオオオォッ!>


叫びと咆哮が重なり、


      <バシッ>


白獅子の聖獣が闇の波動を突き破り、魔王ルシファーを突き飛ばした。


「グ・・・グラン?」


金色の魂を奪い返したグランが、倒れこむミハルに魂を戻す。


「大丈夫かミハル。すまない約束は守れなかったよ」


謝る聖獣に、ミハルが微笑む。


「もう・・・駄目じゃないグラン。

 でも・・・善いよ。赦してあげるから・・・ありがとう」


挿絵(By みてみん)



ミハルの微笑を見たグランが、魔王に向き直り吼える。


「我が主人たるミハルを傷付けた者は、俺が許さない。

 我が牙に賭けて貴様を倒す!」


吼える聖獣に、


「な・・・なぜ、聖獣が?この闇に耐えられるのだ!?」


うろたえる魔王に、グランが言った。


「我は元、魔獣だった者。

 我が主人ミハルによって聖獣となりし者なり。

 ・・・この意味が貴様には解るか!」


怒りに燃える聖獣の瞳を見て、ルシファーが叫ぶ。


「なんだと!?この娘・・・ミハルによって魔獣が聖獣に変わるだと?」


グランの後で横たわる娘を見て、驚愕の声をあげた。


「そう。

 私がグランを聖なる使徒へと昇華させたの。私の力で・・・」


ミハルの声でルシファーは理解した。


「まさか・・・そなたは神と同じ力を?」


後退り恐れを抱いた魔王が、闇の中へ溶け込みだす。


「待て!逃げるな!」


グランが魔王に飛び掛り、


「ミハエル様の魂を返せ!」


牙を魔王に突きたてようとしたが、寸前に姿を消してしまった。


「くそぉっ!逃げるな!戻って来いっ!」


グランの叫びが、魔王を求める。


「ミハエル様っ!ミハエル様!」


奪われた天使の魂に、呼びかけてグランは悔しさの叫びをあげた。


「ちくしょうっ!」


闇に響き渉る聖獣の叫び。


「グラン・・・」


その声に我に返った聖獣は、主人の元へ駆け寄る。


「ミハル・・・さあ、ここから出よう。

 早くここから抜け出さねば、他の闇の者達が襲ってくるから・・・」


ミハルに自分の背に乗れと、頭を低くした。


「うん・・・でも・・・」


ルシファーが消えた辺りに眼を向けているミハルに、

痺れを切らせたグランがミハルを掴んで強引に背に載せて走り出した。


「きゃあっ、グランっ!ちょっとぉっ!?」


突然走り出したグランの背で、ミハルは鬣にしがみ付きながら振り返り、


ーさよなら・・・ミハエルさん・・・ルシファー・・・-


心の中で別れを告げる。


「さあ!門を開けてミハル。脱出しよう」


グランの背で、呪文を放つミハルの前に光が差し込む門が見えてきた・・・・





門が開くと、そこは一瞬にして別の世界へと変わった。


「ここは?・・・ここが?」


呟く声に、何者かの声が答えた。


「そう。

 ここは神の居る場所。

 <神の祠>なのです。

 ・・・お帰り、我が娘・・・」


その声に、金髪の乙女が目の前を振り仰いだ・・・

ミハルは危機を乗り越えられた。


しかし、その想いは悲しみの中で暗く霞んでいた。


一方フェアリアでは、リーンが<神の祠>の中に居た・・・


次回 Act6 霞む想い Part1

君は真実を受け入れられるのか?それとも・・・

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