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第2章 熱砂の要塞 Act4 再臨 Part2

悪魔を倒した後。


ミハルはグランを伴って王宮を後にする。


それぞれの想いは・・・何を求めるというのか・・・

「・・・どうしたんだミハル。さっきからずっと変だぞぉ」


白い獅子の魔法石が・・・

着けられているミハルの胸から訊いて来る。


「う・・・うん。ちょっと・・・ね」


悲しさを滲ませた少女の声が返ってくる。


「あの悪魔に・・・アイツの後ろに何を観たっていうんだい?

 教えてくれよミハル。教えてくれないと・・・こうだぞ!」


白い獅子の魔法石が、ブルブル震えた。


「あ・・・あはは。くすぐったいよグラン。

 ・・・ありがと・・・ね。・・・心配してくれて」


少しだけ微笑んだミハルが、


「見えたの・・・あの悪魔の主人あるじが。

 信じたくないけど・・・あの人の姿が観えてしまったの」


呟く様な小さな声で答えた。


「あの人?誰の事なんだい・・・ミハルの知っている奴なのか?」


グランが思わず聞き返して、


「いや・・・いい。言わなくても・・・」


ミハルが涙を瞳に湛えて耐えている事に気付き、答えを求めなかった。


挿絵(By みてみん)



「信じたくない・・・けど。見えちゃったの・・・ルシちゃんの姿が・・・」


ミハルはとうとう耐え切れずに涙を零す。


「ルシ・・・ルシファー!?まさか!?」


グランはミハルの想いを知る。


「あの魔王ルシファー!?

 ミハルの記憶では、ミハルを護って消え去った筈の・・・あのルシファーだって!?」


ミハルと魂の契りを交わしたグランには、

ルシファーに対するミハルの想いが、痛い程解っていた。


「どうして・・・どうして邪な者の主人がルシファーなのか・・・

 嘘であって欲しい・・・幻であって欲しい・・・のに」


ぐすぐすと泣き出すミハルにグランが、


「か・・・神にも見間違いはあるって。

 ミハル、姿だけでは解らないよ。

 きっと何か訳があるんだって・・・泣くなよぉ」


ミハルの涙に、グランは慌てて慰める。


「う・・・ぐすっ。ありがと・・・ね、グラン。

 そうだよね、きっと何か訳があるんだよね。

 ルシファーが邪な者に戻るなんて・・・そんなの嘘に決まっているもんね」


涙を拭いて、ミハルは白獅子の魔法石に手を当てる。


「そうだよミハル。

 そいつはルシファーの姿をしているだけの偽者かも知れないんだぞ」


グランが調子の良い事を言って、ミハルを元気付けようとする。


「うん。解った!グランありがとうっ大好きだよ!」


挿絵(By みてみん)



やっと笑顔を取り戻したミハルに、白獅子が呟く。


「・・・ホント・・・単純ななんだな。・・・ミハルって・・・」





__________




「どうやら・・・中央の方にはこいつらが蔓延っているだけだな。

 こいつらを捕らえてしまえば、内戦は終えられるみたいだな」


姿を隠したアンネが居るとも知らず、反逆者達が話していた。


「真総統様から矢の催促だ。

 早く反乱軍を都へと招き寄せて、内戦を拡大させねばならん」


高級参謀が部下に命じている横で、アンネがため息を吐き、


「こんな馬鹿者共が中央に居るとは・・・国王もよっぽどお人好しだったんだな。

 まあ・・・どこぞの国でも同じだったけど」


呆れた表情で呟き、


「もう、いいだろう。

 帰ってミハル様に報告しようっと」


誰にも気付かれず、その場を後にした。


アンネが政府庁舎から出ると、壁の処で待っていたのは。


「遅かったじゃない、アンネ」


既に王宮を出ていたミハルが、壁を背に佇んでいた。


「あ!ミハル様。もう、王宮の方は?」


「終ったわ。どう?政府の方は?」


ミハルの問いに頷き、


「はい。大体解りました。数名の首謀者達が居る事が・・・」


確信の出来る情報を掴んだ事を告げる。


「そう。それならマジカさん達に報告して。きっと良い解決策を執ってくれるから」


そう言ったミハルは、そのまま、また何処かへ行こうと歩き出した。


「ミハル様、お待ち下さい。

 一度皆に会われてはどうです?

 それにお疲れのようですし・・・お休みになられては?」


アンネが引き止める様に促す。


「いいの、アンネ。私はまだ、やるべき事があるから。

 皆には宜しく言っておいてね」


引き止めるアンネに片手を差し上げて別れを言ったミハルは、足を止めずに歩き去って行った。


「ミハル様・・・」


その後姿が、どこか寂しげに眼に映ったアンネは、

心の中になんとも言い知れない不安をいだいていた。




_________


「マジカ大使、本当ですか!」


チアキが大声で聞き返した。


「そうだチアキ。

 我々フェアリア人には手を出す事は許されないが、お前は別だ。

 立派にやり遂げるんだぞ。

 ミーク姫、シャルレット姫を護るのは、お前の任務なのだからな」


笑うマジカが3人に言った。


「チアキ、頼むぞ!」


ミーク王女が続いてチアキに命じる。


「チアキ・・・お願いね。私達を護ってね」


シャルがチアキの手を取って頼んでくる。


「勿論っ!私なんかでよければ。喜んでお供しますっ!」


大きく目を見開いたチアキが、周りの人々に宣言する。


「よしっ、先ずは2人の王女を護りつつ、中央政府に居る逆賊を拘束するんだ。

 勿論一人残らずにな。

 それから全軍を把握し、反乱軍との停戦協議に入る。

 いいか、チアキ。ここが正念場さぞ!」


マジカの命令に敬礼で答えたチアキが、


「了解ですっ!」


復命する。


「ではミーク王女、シャルレット王女。ご健闘をお祈りしています」


マジカが手を差し出す、数本の。


「あ・・・あはは。大使閣下・・・いつもながらお見事で・・・」


ミークが現れた魔法の手に戸惑いつつも、握手を交わす。


「マジカさん。観ていてください、必ず平和を取り戻してみせますから」


シャルが力強くマジカに言う。

その姿を微笑んで見詰めるチアキに、シャルが驚く一言を告げた。


「そしてボクはチアキのモノになります。

 いいえ・・・チアキがボクのモノになるのです」


「・・・ははは・・・」


シャルの宣言に、チアキは空笑いをする。

マジカ達の作戦で、オスマン王家に再び政権が取り戻される。


シャルレットは震えていた・・・

国を治める事に不安を抱いて。


幼き王女を護るチアキは

少しでもシャルレットの傍に居続けようと願うのだった・・・


次回 再臨 Part3

君は大切な人の傍に居続けたいと願う・・・それは<愛する>という事

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