第2章 熱砂の要塞 Act3請う者乞われる者 Part2
「なんだって!
ミハルが助けに来ていたというのか!」
MMT-9の前で、ラミルの大声が響く。
「はっ、はいっ!そうです車長っ、大使閣下」
姿勢を正して答えるのはチアキ。
闇の襲撃が終わりを告げた事が夜空に月が現われ、マジカの知るところとなって、
「てっきりチアキが倒したと思ったが・・・彼女が救ったとは・・・な」
マジカがラミルを押えてチアキに訊く。
「で、肝心のミハルは何処に居る?」
マジカとラミルに詰め寄られてチアキがしどろもどろに答えるのは。
「あ・・・中尉は私達を助けてくださった後、
どこへともなく行かれてしまわれまして・・・
私は任務がありましたので、その場を離れられませんでした」
結局、どこへ行ったのか答えられないチアキだった。
「どこへ行くのか聴かなかったのか?
どうやってお前達の処まで来たのか、教えて貰わなかったのか砲手!」
ラミルが呆れる様な罵声で聴き返す。
「はっ、はいっ。申し訳ありませんっ」
俯いて謝るチアキを見て、ラミルもマジカもため息を吐く。
「ミハルの奴。
助けるだけ助けて、さっさとどっかへ行くなんて・・・相変わらずだな」
ラミルはミハルを思って苦笑いを浮かべる。
「全く・・・心配させるだけ心配させて。
だが・・・そんな処も変わらない娘だ」
マジカが腕を組んで笑う。
「あいつの事だ・・・またどこかからひょっこり現れるんだろうな」
「そうそう・・・神出鬼没な娘ですからね、ミハルは」
マジカもラミルも、ミハルを善く解っていた。
「まあ、チアキもシャルレット王女も・・・客人達も無事だったから良しとしよう」
マジカが話を締めくくり、
「で、先程の報告だと、<闇騎士>は逃げてしまったのだな、チアキ」
闇との闘いに話を移した。
「はい。中尉の一撃を避けて・・・逃げました」
真顔で答えるチアキに、マジカが頷き、
「そうか・・・次の機会だな」
言い終えて、夜空の月を見上げた。
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「あ・・・戻って来た・・・って。あれっ!?」
キューポラで上空を見上げているミリアが、
「マモル君っ、あれっ!アレっ!」
その姿を見つけて大声で叫ぶ。
「何ですかミリアさん・・・わあっ!」
装填手ハッチから顔を出したマモルの眼に飛び込んで来たのは。
「ごっねーんっ、遅くなって!」
上空からミハルの声が聴こえた。
白い獅子に跨った碧い魔法衣を着たミハルの声が。
「どええええぇっ!?」
ミリアとマモルの声が見事にハモる。
「どうしたの2人共」
停車中のMHT-7に降り立ったミハルを見て、
マモルもミリアも白い獅子を見上げる。
「はわわ・・・。どうしたのですかセンパイ。
このホワイト・ライオンは?」
「・・・グラン」
・・・・・。
「えええっ、あのマヌケなぬいぐるみがぁ!?」
ミリアが見上げる体長4メートル程もある白獅子が、人の言葉を話す。
「ああ、オレはグランさ。
これからオレはミハルの友として、
そして使徒として行動を共にさせて貰うから・・・宜しく」
・・・・。
「ひいいっ!グランが宜しくって言ったあぁっ!」
ミリアの絶叫に、
「そこ・・・突っ込むところか?」
白獅子が呆れた様に呟いた。
ミリアとマモルが驚く横でミハルは微笑み、そして2人に話す。
「間に合ったからね、助けるのが。
暫くは攻めて来ないと思うよ。邪なる者達は・・・ね」
グランの前足に手を掛けて、
「グランが来てくれなかったら、とても間に合わなかったんだから。
オスマンの危機もチアキ達のピンチも。
教えてくれていなかったら大変な事になってたんだよ、ねぇグラン」
微笑んだまま、白獅子を見上げた。
「う~っ、ミハルセンパイとグラン・・・なぜか、良い雰囲気・・・」
ブスッとしたミリアが呟いて、
「では、我々はこのまま味方部隊の元へ?」
派遣隊本隊との合流を目指すのかを問う。
「いいえミリア。私達は一度都へ行きましょう。
ラミルさんやマジカさんと合流して、オスマンの憂いを晴らす必要があるから」
グランを見上げたまま、ミハルが答えた。
「と、言うとミハル姉。この国に蔓延る反体制派を討つのかい?」
マモルが内政干渉に関わる事だと眉を顰めるが。
「それは王女達が成すべき事。
私が言うのは、第1王女の魂を取り戻す事なの」
マモルの問いに答えるミハルが、顔を向ける。
「チアキだけでは到底無理な事だから。
<闇騎士>・・・いいえ、魔王イブリスから取り戻すなんて」
第1王女ラルの魂を助け出すには、魔王を倒さねばならないと教えた。
「ま・・・魔王!?ミハル姉、まさか魔王と闘うのか?」
驚くマモルに、
「あらマモル。いけないの?」
微笑んだミハルが小首を傾げると。
「だって・・・相手は魂を喰らう者なんだぞ。
そんなのと闘ったら・・・」
マモルがそこまで話した時、
「なあ友よ、ミハルは魔王の力を授かり、今度は神の力をも授かったんだ。
負ける訳がない。
もし、相手が神の力を使えるのなら話は別だがな」
グランが闘う前から勝つと予言した。
「でも私は油断はしないけど。
相手はあの<闇騎士>リンを寄り代にしているんだから・・・。
リンを生きたまま取り戻さないといけないから」
少し寂しげな表情になって、ミハルが言った。
チアキです!
流石ミハル中尉って、事ですよね。
あんな凄い力を身に着けるなんて!
私はシャルと花火でも観てよぅっと!
次回 請う者乞われる者 Part3
君は打ち上がる花火の明かりの中で大切な人に身を寄せる・・・




