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第2章 熱砂の要塞 Act2聖騎士 Part1

挿絵(By みてみん)


ミハルが神殿へと入ってから、既に時間が経っている。


車両の修理を終えた者達が、その帰りを待ち侘びていた。

神殿の中へと入って行ったミハルを待つアンネが呟いた。


「ミハル様はちからを授かるだろうか・・・神の元で。

 この<聖騎士>となって人を護ったという戦神せんじんアキレスの力を」


神殿へと入ったミハルの身を案じつつ、期待を胸に唯ひたすら待った。






挿絵(By みてみん)



「私に力を授けるあなたの名は?

 <聖騎士>と名乗っていたあなたは一体誰なの?」


碧い魔法衣を纏ったミハルが、祭壇に向かって尋ねる。


ー<聖騎士>となりし娘よ。

 我が名はアキレス・・・いにしえの魔王イブリスを封じし者。

 人は我を神と祀り、この地に神殿を築いたー


神を祀る祭壇から声が届く。


「ではアキレス。

 私に授けた力を使えば、イブリスに勝つ事が出来るの?」


右手を掲げて魔法石へ新たに宿った力を感じて、ミハルが確かめる。


ー力は魔王にだけ通じる訳ではない。

 その力は神の意志を受け継ぐ者が使い、人を守る為に使うもの。

 人を守りし者が求めれば、魔王をも滅ぼせようー


戦神アキレスが、ミハルに知らせる。

神の力は魔王をも倒せると。


ーだが娘よ。心しておくが善い。

 使い方を誤れば、その力はそなたをも滅ぼす事になる。

 命を奪う事にもなり兼ねぬ危険をも併せ持つ力なのだと、心に秘めておくが善いー


絶大なる力は、己をも滅ぼしかねないと告げた戦神にミハルが答えた。


ーありがとう忠告してくれて。

 覚えておくわ、間違った使い方をすれば、己をも・・・

 人の世界をも滅ぼしかねない・・・と言う事を」


魔法石を翳して、神へと答えた。


ー娘よ、運命に抗う事を忘れるな。

 この世界を守る<破邪なる者>よ、いざ往くが善い。

   おのれの信じる道を -


祭壇の光が消えながら教えた。


ー<破邪なる者>よ、闇が迫っている。

 オスマンの都に。

 そなたの知る<邪なる者>が、再び現れようとしている。

 救うのだ友を、救うのだこの国を -


アキレス神が最期に告げた。


「私は私の信じる道を歩む。

 そして皆を護って、必ず還ってみせる・・・フェアリアへ。

 懐かしい故郷へ・・・そして、リーンの元へと!」


決然と祭壇に言い放ったミハルは、振り向き祭壇へ背を向け歩き出す。


碧い魔法衣を身に纏い、碧き髪を靡かせて・・・


「リーン・・・待っていて。

 きっと還ってみせるから・・・きっとあなたと一緒に生き続けてみせるから」


見開いた瞳は深い碧さで澄み切っていた。






「あっ!えっ!?」


神殿から出て来たミハルの姿を見て、皆が驚く。


「ミハル姉?どこで着替えてきたんだよ?」


「ミハルセンパイ・・・どうしたのですか、その服?」


マモルもミリアも、ミハルの姿を眺めて訊いた。


「ミハル様・・・それは魔法衣ですね。物凄い力を感じます」


アンネは目を見開いて感動したように言った。


「力を・・・古の<聖騎士>の力を与えられたのですね!」


アンネはミハルの傍に駆け寄り、祝福しようとする。


「皆、急いでここから出発しよう」


ミハルがアンネを無視した様に話す。


「ミハル様ぁ・・・?」


肩透かしを喰らったアンネが戸惑うと、


「邪な者が、狙っているこの国を・・・オスマンの都を。助けに行こう!」


「え?ミハル姉・・・どうして解るの?」


マモルが聞き返すと、


「この石が教えてくれてるの、マモル」


右手のブレスレットを差し出して、ミハルが教えた。


「あ・・・前の輝きと違う」


ミハルの魔法石を見たマモル達が気付く。


「ミハル姉・・・何があったの?」


マモルは姉の姿を見詰めて訊く。


「マモル。今は一刻も早くこの国の都へ向わなくっちゃ。

 話は道々教えてあげる」


ミハルは皆を急かして、MHT-7へ登り、


「アンネ!あの人は私達に協力してくれるの?」


もう一両の重戦車JS-2を指して尋ねると、


「もし、協力してくれるのなら、一緒に都まで着いて来て欲しいの。

 力を貸してくれるのなら、共に闘って欲しいの。

 それから天界へ送ってあげたいの」


自分達の窮地を救ってくれた重戦車の魂に願った。


「それは勿論。お伴して貰いますよ、ミハル様!」


アンネが胸を叩いて請合った。


「うん・・・では、一緒に行こう!」


促すミハルがみなへ出発を命じる。


「目標オスマンの都イスタールブルク!出発っ戦車前へ!」


車上で腕を振るミハルの瞳が、碧く輝いた。





______________




「チアキ・・・どうしてもドレスを着てくれないの?」


青いドレスを纏ったシャルが、上目使いに訊いて来る。


「うん・・・私は警護官なんだ。

 シャルを護るには、動きやすい服装の方がいいんだよ」


シャルの私室で2人が話し合う。


「うーん、勿体無いなぁ。折角誂あつらえたのに」


ぶつぶつ文句を言ってるシャルにチアキが苦笑いを浮かべて、


「仕方ないよ。

 大使が忠告してこなかったら、きっと私も・・・

 そのドレスを着ていたと思うよ」


着る事が嫌ではなかった事を知らせるチアキ。


「むうぅ・・・マジカ大使め。

 折角作ったドレスが台無しになっちゃったじゃない・・・」


ぷうっと頬を膨らませたシャルの顔を見て、チアキがポッと顔を紅くした。


「ん?チアキ。ボクの顔に何か付いてるの?」


見詰められたシャルも顔を紅くする。


「う~んん。  シャルって薄化粧するとホントに、綺麗だなって思ったんだ」


    <ぼっ!>


チアキの一言に、シャルは真っ赤に染めた顔を手で覆い、恥ずかしがった。


「チアキの馬鹿!ボクなんてチアキに比べたら・・・ちんちくりんなのに!」


「は?・・・ちんちくりん・・・って?」


言葉の意味が解らないチアキが小首を傾げて、苦笑いを浮かべる。




星祭りは明日の夜。


その前夜祭が執り行われようとしていた。

こんにちは!お久しぶりのチアキです!


明日は星祭りと呼ばれるオスマンの公式行事が執り行われるんだそうです。


だけど、マジカ大使が忠告してきたんです・・・何かが迫っているって!


何かって?


あーっ、また魔獣鬼かな?

懲りない人達・・・いいえ、魔物達だなぁ・・・。



次回 聖騎士 Part2

君の前に現れしは・・・魔獣?いいや・・・そいつは!

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