第2章 熱砂の要塞 Act1忘却の彼方 Part4
壊れたミハルの心。
自らの終末を求める叫び。
その叫びはとある記憶を呼び覚ますのか?
その記憶は何をミハルに教えようというのか?
<フッ>
「ミハル、本当に怖ろしいのは自分が死ぬ事ではないんだ。
本当に怖ろしいのは、愛する人が死ぬ事。
愛する人を失う事なんだ」
目の前の記憶に、懐かしい男が現れた。
「バスクッチ・・・曹長・・・」
その人の瞳が優しさを湛えて教えてくれる。
「ミハル・・・強くなれ。
強くなって生き続けろ。
いいな、絶対諦めるんじゃないぞ!」
優しき心と諦めない強さを、その人に教えられた記憶。
「ミハル・・・お前は絶対生き残れ。
どんなに辛くても、苦しくたって。
諦めてはいけないんだ・・・いいな」
微笑むバスクッチに、一等兵のミハルが答える。
「はい!曹長。
何があろうと絶対諦めませんっ!
優しく強くなってみせますから」
潤んだ瞳で、その人に答える記憶の中に居る自分にミハルが気付かされる。
「諦めない・・・諦めては・・・駄目・・・」
澱む瞳に光が灯る。
周りに映る全ての人が、笑いかけて言った。
「ミハル!強くなって生き続けるのよ!」
消えた筈のタームが再び現れて笑う。
「大好きなミハルは、諦めたりしないわ。絶対強くなれるんだから!」
アルミーアがVサインを贈って来る。
「私達の分まで生き続けるって、約束したよね!」
キャミーがあの懐かしい笑顔で、バスクッチの横から笑いかける。
「抗えミハル!運命に!!
強くなれっ生き続ける為に!
諦めるな! 」
懐かしい人達が、笑顔のままミハルの心に訴えかける。
そして。
「ミハル・・・忘れないで・・・諦めない力を。
必ず生き抜くと誓った事を!」
その優しい笑顔が。
その女神の様に美しい微笑が言ってくれた。
「 リ - ン !!」
懐かしい人達の中に、愛する人は居た。
「私は・・・私の中に居る人達を忘れたりしない。
記憶を奪われたって何度でも思い出してみせる。
いいえ・・・奪える筈がないもの。
私から大切な人達と共に生きた証を奪う事なんて・・・
誰にも出来はしないっ! 」
ミハルの瞳が開かれる。
碧く染まった・・・その瞳が。
<ファサッ>
碧い髪が靡く。
「やっと眼が覚めた。
やっと気付いた・・・
ごめんねリーン、ありがとう皆。
私は・・・私は・・・諦めない。
諦めちゃあ駄目なんだあぁっ! 」
<バ ア ア ァ ン ッ>
力の奔流が周りに集う鏡を打ち消した。
ーなんと!-
その姿とその力に、水晶が慄く。
「私は抗う・・・喩えその先に闇が立ちはだかろうとも。
どんな苦しく辛い壁が立ち塞がっても。
絶対生き抜いてみせる。
何が起きても諦めたりしない!」
<シュオオオオォッ>
碧き靡く髪、碧く輝く瞳。
輝く魂は、ミハルの身体にオーラを纏わせる。
ーこの力は?この娘は何に気付いたというのだ?-
水晶は戸惑う。
神の使徒たる者に、闇の魔王に授けられた力に。
そして・・・人間ミハルの想いに。
ー娘よ・・・抗うというのか、運命に。・・・闘うというのか闇と?-
水晶の問い掛けに碧き瞳の魔法使いが答える・・・人の言葉で。
「私は、私の大切な人を護るだけ。
神だろうが悪魔だろうが、関係ない。
愛しい人達を護り、生き抜く事を諦めないだけ。
・・・それが私の約束だから」
ゆるぎない心で、ミハルは答える。
「喩え本当に、リーンと闘う事になったとしても、私は諦めない。
きっとリーンを救ってみせる。
必ず再び愛しいリーンを取り戻してみせる・・・」
決然と告げるミハルが最期にこう言い放った。
「そして、この世界でもう二度とリーンと離れたりしない。
ずっと一緒に生きて、生きて・・・生き抜くんだあぁっ!」
心の絶叫。
魂の誓い。
ー 成された。
今、この娘をおいて、他には居まい -
水晶の光が、祝福に染まる。
ー確かに認めよう、娘よ。
そなたの誓いと、そなたの中にある力を。
そして・・・人の成せる業を・・・-
<シュル シュル シュルッ>
水晶から光の帯が舞い散る。
ーそなたは我が知恵と力を受け取らねばならない。
古より伝わる<破邪>の力を。
そして、闘わねばならない・・・生きる為にー
「生きる為?
生きる為に、その力が必要だというの?」
光の帯に身を委ねて、ミハルが問う。
ー然り。
人として抗うには闇は強大だ。
生きる事は闘う事。
滅びる事は抗う事。
これまでも、これからも生き抜くには強くならねばならない。
その為には、この力が必要となろう、人の娘よー
水晶は認めた、人の娘がその力を受け継ぐ事を。
「その力で大切な人達を護る事が出来るのであれば。
古の力を受け継ぐ事で、リーンを救えるのなら・・・
その力を・・・渡してっ!」
<パアアァッツ>
光が満ち溢れ、ミハルの魂が光の帯に巻かれてゆく。
何も着けぬ清らかな姿。
それは魂そのものを意味する。
ー時は来たれり、娘よ。
我が古の力を授けん。
そなたは今より<騎士>となる。
人の世を護る最期の希望。
邪なる者よりこの世界を護る<聖騎士>となるのだ -
光の帯に包まれていくミハルの元に、水晶が降りてくる。
ミハルは胸元まで降りてきた水晶に誓った。
「私はこの世界を護る・・・大切な人を護って・・・生き抜いてみせる」
水晶を抱き、ミハルが誓った。
碧き水晶は、ミハルの魂へと融け込んでいった。
<シュオオオンッ>
光の帯が音をたてて消え去った。
いつの間にか碧き水晶と光が消えた祭壇の前に、蒼髪のミハルが立っていた。
青い衣装を身に纏い、瞳を碧き輝きに染めて。
「そう・・・これが<聖騎士>の姿・・・
魔法衣に身を包んだ<破邪なる者>の姿・・・なんだね」
天空の神を祀った祭壇に、瞳を向けたミハルは今、
<聖騎士>と成り、運命に立ち向かおうとしていた。
水晶は<破邪なる者>へと、ミハルを換えた。
<光と闇を抱く者>から・・・
遂に本当の<騎士>となるのか?
神の<聖騎士>たる、<御破瑠>に・・・
次回 Act2 聖騎士 Part1
君は闘う運命を背負いし、<聖騎士>となる!




