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第1章 New Hope(新たなる希望)Act2厳しい騎士道Part3

チアキは目の前の中尉に告げられた。


「間違っている。」と。


チアキは中尉の瞳を見詰めるだけだった。

その瞳の奥にある願いに気付かずに。

「間違っている。

  あなたの考えは・・・新兵。」


黒髪の中尉は鋭い視線をチアキに向けたまま言った。


「魔鋼騎だって?

 何を言っているんだチアキ一等兵。

 魔鋼騎士となるには魔法力がなければ話にもならないんだぞ。」


横の准尉が怒鳴る。


「は・・・はい。解っています。ですから・・・。」


怒鳴られたチアキは緊張して答えようとすると、


「この考課表には砲術科卒とはあるが、

 魔鋼騎適性には非合格となっている。

 お前に魔法力が備わっているとは書かれていないぞ!」


たたみ掛ける様に准尉が言った。


「で・・・ですから、可能性だと。

 私のお母さんみたいに魔法使いなら出来るのではないかと。」


まるで叱りつけられている様な気分になったチアキが訳を話そうとすると。


「ある・・・あなたには確かに魔法力が備わっているわ。

 私にはそれが解っているから。」


黒髪の中尉が、眼を離さずに言った。


「えっ!?」


中尉の言葉に准尉とチアキが声を挙げる。


「本当なのですか、センパイ?」


准尉が尋ねたのに答えず、


「私が言った間違いと言うのは、あなたの考え方なの。

 可能性を確かめるのは良い・・・でも魔鋼騎士になると思うのは間違っている。

 闘いを知らない者が、その悲惨な世界へ入ろうと考えるのは間違っている。」


中尉はチアキを見詰め話した。


「確かに実情を知らない者が憧れるのは仕方がないのかもしれない。

 でも、軍隊に属した者なら少しは解っている筈よ。

 戦争がどんな物かを。

 大切な者を失い、果ては自らの命をも奪われる事にだってなるかもしれない。

 そう・・・悲惨な世界だと言う事を。」


そこで話を切った中尉が言った。


「私はあなたを守る事は出来ない。あなた自身が護れる様にならない限り。

 あなたがちからを放って大切な人を護れる様にならない限り、

  魔鋼騎には乗せはしない。」


鋭い視線を放つ黒髪の中尉が立ち上がり、

机の上に置いてあった考課表をチアキに突き出した。


「ミハル先輩・・・そこまで言わなくても・・・。」


流石に気が引けたのか、准尉が諌める。


「いいえ、ミリア。こういう事は最初に言っておかなければいけないの。

 この娘の為にも、私達の為にも・・・ね。」


そこで漸く黒髪を紅いリボンで結ったミハル中尉がミリア准尉に答えた。


「はあ・・・まあ。先輩がそう仰るのなら。」


ミハル中尉の手からチアキの考課表を受け取り、封筒に納めるミリアが。


「ん?この封筒の字は?お前が書いたのか、チアキ一等兵?」


チアキに差出しながら小首を傾げる。


「はいっ、自分が書きました。・・・変でしょうか?」


チアキが気を取り直して、声を張り上げる。


「いや・・・何処の文字なんだ?

 このミミズが這った様な字は?」

「はいっ!私の祖母の国、ヤポンの文字であります。」


物珍しそうに文字を見たミリアが、


「何故、ヤポンの文字を?」


訳を尋ねると。


「はいっ、分隊長の出身国でもあるヤポンの文字なら。

 きっと目に掛けて貰えると思いましたので。」


そう言ってから、また輝く瞳でミハル中尉を見たチアキに、


「あなたにもう一つだけ言っておくわ。」


ミハルが少しだけ笑って良い足した。


「もう少し、ヤポン語を練習してから書きなさい。


     ”チマキ” ・マーブル 一等兵。」


「は・・・? ”チマキ”  ?」


挿絵(By みてみん)


眼をキョトンとさせた”チアキ”に、


「では、”チマキ” 。分隊へ戻りなさい。」


厳しい表情の中に瞳だけが優しさを湛えている様な気がしたチアキが敬礼を贈り、


「退がります!」


ミハル中尉の顔を瞳に焼き付けた。




_________________



「マモル准尉・・・どうして魔鋼騎になっては駄目なのですか?

 なぜ命を狙われるというのです?

 戦争なら命を狙われるのは当然だと思うのですが。」


チアキは尋ねる、撃破王のマモル准尉に。


「駄目なのは君が未だ、自分の身さえも護れないからさ。

 今日だってそうだったじゃないか。

 もし、僕が撃たなかったら、君は仲間も護れず敵に撃たれていた筈だったじゃないのか?」


返された言葉は、厳しい現実を表していた。


「でも・・・ミリア小隊長の命令でしたから。

 私の魔鋼力で街を護り、仲間を護ろうとされた准尉の決断に従った訳ですから。」


そう言い返したチアキに准尉が頷き、


「ああ、聞いた。聞いたからこそ言っているんだ。

 君は敵がどんなモノなのかを知るべきだ。

 それを知った上で、今後君がどうすべきかを教えたいんだ。」


今迄明かされてなかった敵の正体を語り始めた。


「我々が闘っている相手は人ではない・・・いや。

 あったと、言うべきか。

 あの魔鋼騎達は全て無人で動いている。

 人が乗って動かしている訳では無く、

 その車体に封じ込められた魔法使いの魂が動かしているんだ。」


「は・・・無人? 魂で?」


言葉の意味が判らず聞き返すと、


「簡単に言えば、魔法使いのちからに因って動く車体。

 魔鋼騎の一種だと思えば良い。

 我々の相手はそんな魔法の戦車なんだ。」


「はあ・・・解った様な解らないような。」


准尉はそんなチアキを苦笑いを浮かべて見ていたが。


「問題なのは・・・その魂が如何にして封じ込められたかという事だ。」


真顔に戻ったマモル准尉が言った。


「封じ込められた?」


また解らない事を聴いてチアキが尋ねる。


「そう。封じ込められているんだ彼女達は、あの戦車の中に。

 命を奪われ、魂を闇に貶められて闇に闘わされているんだ。」


チアキはもう、頭の中が混乱してマモル准尉の声に聴き入るしかなかった。


「彼女達を下僕にしたのが何者なのかは解っていない。

 だが、仕向けた者の名は解っている。

 その者から大切な人を救い出すのが、我々の任務。

 フェアリア皇国<オスマン派遣隊>の命じられた本当の目的。」


そこまで言ったマモル准尉がチアキを見て、


「その者は、数多くの魔法使いの魂を奪い去っている。

 それは今も変わらず世界中から魔法使いの魂を集めて、

 最強の軍団を創ろうとしているんだ。

 それが僕達の敵、<魔女兵団>と言う訳さ。」


マモル准尉は、チアキに教えた。


自分達が闘わねばならない、敵の正体<魔女兵団>の事を。

私はマモル准尉の言葉に耳を疑いました。


私達の敵の正体に。

<魔女兵団>の正体に。

だけど・・・私は諦めません!

きっと、魔鋼騎士になるんだって・・・約束だから。


次回 厳しい騎士道 Part4


君はどんな誓いを起てたというのか、その辛さに押しつぶされそうな心を涙と換えて。

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