第1章 New Hope(新たなる希望)Act15狙われる魂 Part2
チアキ達を救ったマジカが大使館に戻ると
険しい顔をしたラミルが待っていた・・・・
急転する物語。
今、彼女は・・・・?
「マジカ大使!どこへ行かれてたのです!」
王宮から大使館へ戻ったマジカにラミル少尉が走り寄ってくる。
「ん?ラミルか、何事か・・・」
気安くラミルに訊いた時、そのラミルの表情が只事では無い事に気付いたマジカが声を呑んで、
「何かあったのラミル」
真剣なその瞳に尋ねた。
「先遣隊から報告を受けました。
先遣部隊の戦車隊が・・・・」
ラミルが一言一言を区切り答える。
「ミハルの部隊がどうかしたの?」
重々しい口調で、マジカが急かす。
「全滅・・・した・・・ようです」
ラミルの言葉をマジカは俄かには、信じられなかった。
「う・・・そ・・・でしょ?」
やっと拒絶の言葉をラミルに返すが、
「部隊の車両は全滅し、負傷者を後方へ移送中との事です」
ラミルが現実の結末を教える。
「まさか・・・?ミハルは?マモルは?あの2人はどうしたの!?」
父母を助ける為にこの国へ赴いた
2人の姉弟の無事を確認するマジカにラミルが首を振って、
「最期まで闘って・・・車両ごと行方不明になってしまった・・・との事です」
ラミルは唇を噛み締め、最後に付け加えた。
「最期にその姿を見た者は・・・
集中砲火を受けつつも、応射し続けるMHT-7が・・・
砲煙の中を敵に向って突撃して行くのを観たと、報じています。
・・・ミハル中尉以下、搭乗員は・・・絶望だと」
マジカは<絶望>の一言に目眩を感じ、ふらりと屑折れた。
「馬鹿な・・・最期の希望を断たれたのか・・・我々は」
額を押えたマジカが呟く。
「絶望なんて必要ないですよ、大使」
ラミルがその呟きを否定する。
ハッと気付いたマジカがラミルを振り仰ぐと、微笑んで言った。
「ミハルはやられていません。私には解るのです大使。
アイツはこれまでも、何度と無く死線を掻い潜ってきた魔法使いなのですから。
それにアイツの魂を奪う事に成功しているのなら、あの司祭は行動に移すでしょうから・・・」
そう告げたラミルは遠い星空に瞳を向けて断言した。
「どうしてそうまで信じられる?
それがラミルとミハルとの絆の結論だと言うの・・・
私とリンの様にはならないと言い切れるの?」
マジカがラミルを見詰めて聞き返す。
フッと視線をマジカに向けたラミルが微笑んだ。
「そう・・・あなたとミハルには絶対切れない絆があるのね」
ラミルの微笑みに絶対の信頼を読み取ったマジカも、信じる気になる。
「その絆に私も賭ける・・・あの娘が再び闇に立ち向かう時に。
更に強くなって戻ってくる時を!」
ラミルと同じ様に星空を見上げて、マジカも願う。
ーミハル・・・あなたがこの世界の希望なのよ。
あなたの力が、闇からこの世界を守る為にはまだまだ必要なの・・・
還って来るのよ・・・必ず ー
マジカの瞳には、遥か彼方の星空が映っていた。
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「・・・・う・・・・ん・・・」
眼を開けたミハルが気付く。
「そっか・・・私。気を失ってたんだ」
手の平を目の前に翳して、意識を取り戻した事を確認し、
「そうだ・・・皆は?マモルは?」
横になっていた身体を起こして周りを見ると、
「ミハル様、気付かれましたか」
女の子の声が呼んだ。
「あ・・・ここは・・・安全な場所なの・・・アンネ?」
ミハルに尋ねられたアンネと呼ばれた銀髪の少女が、
「皆は車外に出られています。
どうにかこの車体を修理されようとしているみたいですね」
ミハルを安心させようと教えた。
「そう・・・なら良かった。みんな無事で・・・」
ほっとため息を吐いたミハルを観て、
「それにしても無茶ですよミハル様。
いくらなんでも一両で突っ込まれるのは・・・」
先程までの戦いを思い出すと、ミハルを責めた。
アンネの言葉に何も返さず、ミハルはゆっくりと立ち上がり、自分の身体を調べた。
「ミハル様・・・?」
アンネは何も言い返さないミハルに尋ねる。
「あ・・・っとね、アンネ。ありがとう・・・助けてくれたんでしょ?」
寂しげに微笑むミハルが、アンネを観ずに礼を言う。
「アンネが来てくれたから。
敵の車両を分捕って追うフリをしてくれたから・・・敵の追撃をかわせた。
そこで私は気を失ったの・・・
もし、あの時アンネが来てくれなかったら多分私は・・・
いいえ、皆が奴等に殺されていたと思う・・・魂を奪い去られてしまったと想う」
ミハルは右手のブレスレットに付いた魔法石を見て、
その輝きが失われて居ない事を確かめて想いを告げた。
「ミハル様・・・私が偶然あの戦車を調べていたから助ける事が出来たのです。
運が良かった・・・それだけです。礼などいりません」
アンネが敵戦車の諜報活動を行っていたと話す。
「で・・・部隊は全滅してしまったようですが。
これからどうされるのです?ミハル様は・・・」
<ビクッ>
アンネの一言に、ミハルの身体が強張った。
「あ・・・すみません。いらない事を・・・」
口が滑ったと思うアンネが手を口に当てて謝った。
「そう・・・私のミスリードで部隊を全滅させてしまった・・・の。
あれだけ美夏姉ちゃんが言ってくれていたのに・・・」
思い出すのは、仲間の車両が敵に向って行く姿。
自分を護るように敵弾に撃たれる車体。
力なくうな垂れたミハルは、
「せめて怪我人が少ない事を願うしかないの・・・今の私には・・・」
か細い声で付け加える。
開口部から外光が洩れ入ってくる車内で、ミハルとアンネが今迄にあった事を話し合った。
気付いた彼女がアンネと話す。
助けたアンネが導いて来たその場所には訳が隠されていた!
その訳とは!?
次回 狙われる魂
君はその瞳に映る遺構に眼を向ける・・・その時!




