第１章 Ｎｅｗ Ｈｏｐｅ（新たなる希望）Ａｃｔ１４闇に堕ちし友 Ｐａｒｔ２
決着の刻。
＜剣聖＞チアキの一撃が炸裂する！
必殺の剣技「「闇を斬れ！」」が邪なる者を倒す！
魔獣鬼ジャドウは、地の底から闇の力を求めようともがき続けて、
８本の足を再生させながら同時に剣巫女に向かって触手を放つ。
＜剣聖＞千秋は左手に出した＜式神＞の札を＜破邪の剣＞で斬る。
＜ボウッ＞
斬られた札が五芒星を燃え立たせ、碧き炎となり剣に宿った。
「魔獣鬼ジャドウ！
我が剣の前に滅びの刻を迎えるがいい。
我が術で邪なる魂ごと滅びるがいい！」
剣を構え直した千秋が言い放った。
「ほざけっ！剣巫女っ！！我は滅びぬ！」
抗うジャドウが再生しつつある８本の足で襲い掛かるが。
「剣よ闇を斬れっ！」
千秋の剣が一閃し、アオキ炎を纏った斬波が魔獣鬼へ叩きつけられた。
＜ザ シ ュ ッ＞
＜破邪の剣＞から放たれた斬波は、闇のオーラごと魔獣鬼ジャドウを真っ二つに切裂いた。
「・・・・・！！・・・・」
断末魔の叫びさえあげる事が出来ず、
闇の者は碧き斬波の前にあっさりと斬られ滅びの刻を迎えた。
＜ブシュウッ＞
魔獣鬼ジャドウは、黒い霧となって文字通り霧散して果てた。
ーうむっ。善くやったチアキ！－
宿りし天使ミハエルが手を打って褒める。
＜剣聖＞姿の千秋は、黒い霧が消え失せた室内で右手の剣を一振りする。
＜シュウンッ＞
千秋の頭上に光輪が現れ、式神達がチアキから離れ光輪の中へ戻った。
和装の巫女姿へ戻ったチアキが振り返り、横たわるシャルの傍に寄る。
「シャル・・・シャル？」
気付かせようと呼びかける。
＜シャンッ＞
天界の鈴の音が鳴る。
「う・・・ん？ チアキ？」
薄く開けた瞳で、ぼんやりと見えるチアキに答えるシャル。
眼を開き、気付いたシャルにチアキが謝る。
「ごめんねシャル護りきれなくて。
命の危険にされさせて・・・辛く苦しい想いをさせて」
謝るチアキは、それでも助ける事が出来た大切な人へ、微笑み掛けた。
「・・・・・誰？」
微笑み掛けるチアキに向って、シャルが訊いた。
「へ・・・・！？」
突然尋ねられた事が解らず、大きく口を開けて驚くチアキに。
「あなた・・・誰？チアキのお姉さん？チアキに良く似てるけど・・・？」
「・・・は？」
シャルとチアキは、お互いを見詰めて固まった。
「もしかして・・・チアキなの？」
「もしかしてじゃなくて、チアキなんですけど・・・」
またも沈黙。
「えええっ！？別人だよチアキ。どうしちゃったの？」
「えええっ！？どうして別人だなんて言うのシャル？」
シャルと巫女姿のチアキが戸惑い言い合う。
「だって・・・大人になってるよ・・・チアキが！」
＜ペト＞
・・・・・・。
シャルの手が、チアキの胸に当てられて。
＜ムニッ＞
「ホンモノだよね・・・コレ」
マジマジとシャルに観られ、触感を確かめられてしまう。
「・・・。って！ ぎゃあっ！？」
慌てて飛び退いたチアキにシャルが、
「ねぇ、チアキ。どうして大人になってるの？
ボクの好きなチアキは、可愛いチアキなんだよ？
必死にボクを護ろうと頑張る優しいチアキなんだよ？」
頬に手を当てて見詰めてきた。
「えっ？えっと・・・これはその・・・。
シャルを護ろうとしたら、私の中から能力が目覚めたっていうか・・・」
説明するチアキが、どう言ったら解って貰えるのか戸惑っていると、
「チアキの中？ さっきの天使さんじゃなくて？」
シャルが守りし者ミハエルの事を尋ねて来る。
「あっそうだ、ミハエル様っ。説明して頂けませんかシャルに」
気付いたチアキが宿る者に訊くが、返事は無かった。
「あ・・・アレ？ミハエル様？ねぇってば、何とか言ってくださいっ」
天使の声を聞こうと呼び続けているチアキに、不審顔のシャルが言った。
「チアキ・・・魔法使いの２重・・・いえ、３重人格って・・・どうなの？」
ジト目で訊かれてチアキが涙目で首を振り、
「違うんだよシャル。これには訳が！」
必死に説明しようとシャルを掴むと。
「ふふふっ、チアキ。その姿を見れば多重人格者ではないのは解るよ。
チアキがボクを救おうと必死に闇と闘ってくれたのが解る」
シャルがジャドウが居た辺りに顔を向けて、
「あの魔物に捕らえられて気を失っていた時、魂の中に光が現れたんだよチアキ。
その光の中に居たのは・・・」
巫女姿のチアキに振り向いたシャルが、
＜チュッ＞
驚き瞳を丸くするチアキの頬に唇を着ける。
「チアキがね、手を指し伸ばして求めてくれたから。ボクの事を・・・」
微笑み教えるシャル。
チアキが救ってくれたのは、肉体だけではない事を。
魂までも救ったという事を。
「じゃ・・・じゃあ。今迄のは・・・？」
「・・・ジョウダン」
＜ ポ ン ッ ＞
真っ赤に頬を染めた巫女姿のチアキが＜チアキ＞に戻る。
「わっ！？チアキ？」
シャルの前で巫女姿が解け、警護官の制服姿へ戻ったチアキが眼を廻してひっくり返った。
「チアキ？どうなってるのコレ？」
シャルの瞳に映るのは、元の魔法使いに戻ったチアキ。
シャルに肩を抱かれ、揺さ振られて眼を廻すチアキに、
神の使徒たる娘が、肩を竦めて呟いた。
ーこの娘も・・・損な娘だなあ・・・
なぁ、そう思うだろミハルも・・・－
ため息を吐くミハエルの顔は、２人の少女に微笑みかけていた。
あの・・・やっぱり。
こんなオチだったのですね・・・判っていたけど。
＜損な娘＞の仲間入り・・・私って・・・不幸？
次回 闇に堕ちし友 Ｐａｒｔ３
君の前にもう一つの闇が近付く。そう、あの闇の騎士が・・・
