第1章 New Hope(新たなる希望)Act13闇を討つ者 Part4
シャルを助ける為にミハエルに頼んだチアキ。
絡みつくジャドウの黒い霧は、身体を締め付けてくる。
近寄りシャルを救わんとしたチアキを苦痛が襲う!
「があっはっはっはっ!望み通り、この王女と共に喰らってやるわ!」
ジャドウの黒い糸に絡め捕られたミハエルの身体が、シャルの元へと手繰り寄せられた。
「うっぐ!」
黒い糸はミハエルの身体、元はチアキの身体を締め付ける。
「チアキ!気を失うなよ!
お前が意識を失ってしまえば、私の力も失われてしまうのだから!」
ミハエルが寄り代の娘に忠告する。
ーうっく!解りましたっ、ミハエル様!-
魔法力と気力を奪われていくチアキが苦痛に耐えて答えた。
今チアキの瞳には、ぐったりと力を失い虚ろな瞳のシャルが写っている。
ーシャルっ、今助けてあげるから。
あなたを護れるなら、こんな苦しみになんて耐えてみせるから!-
ジャドウに囚われたシャルに向って、心で呼びかけるチアキ。
「さぁてぇ・・・喰らってやろう、天使ミハエルよ!
お前の魂から先に戴くとするか」
ジャドウの邪な瞳がミハエルを見て、
「先ずはその寄り代の娘からだ 」
チアキの肉体を弄ぶ様に、黒い糸を締め上げる。
「ぐうっ!」
ーうっああっ!-
ミハエルとチアキが苦痛の呻きを挙げた。
<ミシ・・・ミシッ>
身体が圧迫され、骨が軋む。
「しっかりしろっチアキ!」
ミハエルが寄り代の娘に呼びかける。
ーきゃあああっ!身体がバラバラにされるっ!骨が折れちゃうっ!締め潰されるぅっ!-
あまりの苦痛にチアキが悲鳴をあげる。
「どうだどうだ、天使よ!
お前は保てても、寄り代の娘は最早耐え切れぬぞ!」
ジャドウが嘲り笑う。
ーあああっ!シャルっシャルっ・・・私・・・もう耐え切れないよ。
身体がバラバラになりそう・・・辛い・・・苦しいよ・・-
気力を失い、瞳が霞んでくる。
もう失神寸前になったチアキが、シャルに届かぬ声で謝る。
ーシャル・・・ごめん・・・もう・・・私・・・駄目・・・-
諦めそうになるチアキの瞳にシャルの顔が映る。
その顔が、その瞳が微かに動きチアキを観た。
「チアキ・・・ありがとう・・・」
微かにシャルの口から感謝の言葉が漏れた。
苦痛に歪んだ顔が、一瞬微笑みチアキを見た。
ーシャル!?-
一瞬。
そう・・・ほんの一瞬の事だった。シャルの微笑が観れたのは。
次の瞬間、その顔がガクリと垂れ、瞳が閉じられていった。
ーシャル!?-
チアキの呼びかけにシャルはもう、動かなくなっていた。
ー嘘!? シャルっ? シャルぅっ! -
苦痛も忘れ、大切な人の名を叫ぶ。
チアキの魂は、シャルの魂へと手を伸ばす・・・・。
ー許せないっ!-
<ドクンッ>
ーシャルをこんな酷い目に遭わせた者をー
<ドクンッ>
ーシャルの魂を奪おうとする邪な者をっー
<ドクンッ>
チアキの中にある<とあるモノ>が目を醒ます。
「! チアキっ・・・お前っ!?」
ミハエルがそれに気付き、驚愕の声を挙げた。
ー許すものか!シャルをこんな目に遭わせた者を。
私の大切な人を傷つけた者を!-
<ピキイイィンッ>
チアキの中で、何かが開かれた。
「おっ、お前は!?チアキっお前は何に目覚めたと言うのだ!?この力は一体?」
ミハエルも驚く、その力とは!?
<シャンッ>
天界の鈴の音が鳴る。
「まっ、まさか?そんな事が!?_」
<シャンッ>
光がチアキを包む。
ミハエルがチアキの魂を観て驚愕の叫びをあげた。
「チアキっ!それがお前の継ぎし真実の姿だったのか!
古より受け継いだアベノ・・・安倍の血脈の者の姿なのか?」
<シャンッ>
チアキの姿は、天界の巫女とは違う。
剣の巫女と化していた。
紅い袴に白い衣装。
何より目を惹くのは、その<破邪の剣>。
ーなるほど・・・お前の魔法石は、剣と化したのか。
古より受け継いだ魔法石は・・・<破邪の剣>だったとは。
お前が受け継ぎし魔法力が現した魔法石の姿だというのだな -
ミハエルは、納得顔でチアキを観る。
「これなら私の出る幕は無いかもしれないな。
・・・ちょっと試してみてもいいのかもしれないな」
ミハエルが悪戯心を出して呟いた。
「チアキが今後、ミハルの手助けを必要としない為に・・・いや、違う。
ミハルを助ける者となって貰う為にも。
その力を試させて貰うとしよう」
ミハエルは現れたチアキの姿に希望を抱く。
「チアキ、お前だけの力でシャルレット王女を護れるか?」
ミハエルがチアキの魂に告げる。
「勿論。そのつもりです、ミハエル様。
古の力に目覚めた今、邪なる闇を祓うのが私の務め。
シャルを護り抜くのがチアキの約束なのですから」
尋ねられたチアキがはっきりと頷いた。
「そう・・・だったらジャドウを倒すのを譲るわ。
チアキ自身の手で滅ぼし、シャルレット王女を護ってみせて!」
つい今迄、苦悶の声をあげていた娘とは思えないチアキの声に、ミハエルが勧める。
「はい、私に倒させて下さいミハエル様。
私自身の手で、目覚めた力で!」
チアキの瞳が両眼共、金色に輝いた。
私の中に在る古から受け継いだ扉が開かれたのです
受け継いだのは陰陽師の血脈・・・そして剣の紋章
それが意味するのは私が<闇を討つ者>となる事でした
私は今、古から受け継いだ力に目覚め様としていました!
次回 闇を討つ者 Part5
君はあの陰陽師の末裔なのか?闇を祓い邪なる者を討つ力に目覚めたというのか!?




