第1章 New Hope(新たなる希望)Act12王宮の闇 Part2
チアキ達が王宮に向った頃。
フェアリア派遣隊にも動きがあった。
本部に呼び出されたラミル少尉は、現れた人に驚きを隠せなかった・・・
「何でしょう、ロッジ中佐。私に御用とは?」
ラミル少尉が大隊本部へと出向いて来た。
「おう、教官。すまんな呼び立てて。
君に会いたいと言う方がお見えになられてな・・・」
フェアリア派遣隊、戦車大隊指揮官室でラミルは、
大隊長のロッジ中佐とその横に立つスーツ姿の人と会った。
「やっ!ラミルっ、お久しぶりっ!」
気軽く手を挙げて挨拶をしてくるスーツ姿の人は。
「え?マジカさんじゃないですか!
どうしてオスマンへ?いつ来られたのですか?」
フェアリア皇国、皇王側近の女官・・・マジカがどうしてこの国に居るのか。
不思議に思うラミルが、
「何か本国でありましたか?
それともユーリ姫に頼まれ事でもされましたか?」
いつもの調子で気兼ねなく訊くと、横の中佐が。
「ごほんっ、少尉。こちらは我が国を代表してみえられた大使閣下なのだぞ。」
言動に注意するように窘めた。
「は?マジカさんが・・・我がフェアリアの大使?」
ジト目でマジカを観ると、少し胸を張ったマジカが、
「そーいうこと、なのだよラミル君。おっほん 」
軽く咳払いをして自分を紹介する。
「あ・・・はっ、はあっ!?マジカさんがフェアリア大使?」
眼を見張ってマジカを観ると、
「お若いがそれを超える信任が皇太子から寄せられておられるようだ。
解ったかねラミル少尉・・・」
ロッジ中佐が苦笑いを浮かべて告げる。
「は!了解です中佐 」
漸く理解したラミルが敬礼すると、
「まあ、大使といっても一時的なものだから。
呼び方も今迄通りでいいからね、ラミル。
そんな事よりミハルから電報を受けたのを知ってるかしら。
この国で起きているお家騒動の話を 」
マジカが真面目な顔で尋ねた。
「はあ・・・良くは存じてはいませんが少々。それが何か?」
ラミルはこの国に着いて未だ日が浅いので実情は良く解らないと小首を傾げて答えた。
「うん・・・実はね。皇太子でもある第1王女が原因不明の病に倒れ、
次期継承者が確立出来て居ない事をよそに、国家転覆を謀るものが暗躍しているみたいなの。
先の戦争時のフェアリアみたいに・・・ね 」
マジカはラミルに教える、この国でもフェアリアと同じ様なお家騒動が起きていると。
「では大使、この国でも王位争いが起きているという事ですね。
でもそれと我々の派遣隊と、どう言う関係があるのです?」
ラミルが独立反乱軍に対抗する為に派遣されて来た、
フェアリア隊にどう言う関係があるのかと問う。
「何も無いわ今迄の処はね。
でも、これからはそうもいかない事となる。このまま放置しておけばね 」
「どう言う意味なのですか、マジカ大使 」
言葉の真意を問うラミルに、
「只のお家騒動ではすまなくなると言う事だ少尉。
我々派遣隊の帰還も難しくなると言う訳だ、反逆者達が政権を握れば。
我々はこの国で人質にされてしまうだろう、反逆者達に。
母国への交渉材料にされる事となる、最悪の場合は 」
ロッジ中佐がマジカを見てラミルに言った。
「そう云う事よ、ラミル。
我々はこの国で現政府が存続するように務めねばならない。
いいえ、少なくとも平穏な国家のままであれば現政権である必要はないのだが。
派遣隊全員が無事母国の土を踏む事が叶ううのならば・・・ね 」
マジカが真剣な瞳でマジカに告げた。
「では、どのようにすれば反逆者達を倒し、
現政権を維持出来るのですか?
下手をすれば内政干渉を他国から追及されてしまいますよ、マジカ大使 」
ラミルが軍を動かす事に注意を促した。
「うん、その事なんだけど。
先ず王位継承者たる第1王女ラル殿下の病状回復を促す。
それと同時に第2王女を祀り上げる反逆者を政権から一掃する。
それで一応の安定は見込める事となる 」
マジカが方策を教え、
「そこで・・・だ、ラミル。
あなたにお願いしたい事があるの。
ラミル少尉の指揮する車両にやって貰いたい事案があるのよ 」
マジカが指を一本立てて指し示した。
「私の車両?MMT-9・・・元ミハルの車両で何をしろというのですか?」
ラミルがマジカの指先を見て答えを尋ねた。
「それはねラミル。
現れし者を排除して貰いたいの。
邪なる者が狙って来る時、そいつらを倒して貰いたいの。あの娘の力で 」
マジカの指が窓から見える王宮を指し示す。
「あの娘?ミハルですか?」
指先を見詰めたラミルが訊く。
「いいえ違うわラミル。
あなたの車両でって私は言った筈よ。
あなたのクルーに一人居るのよ魔法使いが。碧き瞳の砲手が・・・ね。
その娘の事よ 」
マジカは指差しラミルに向って、
「東洋の島国から来た祖先を持つ者。
そう、ミハルと同じヤポンから来た魔法使いの力を受け継ぐ者の事よ 」
魔鋼の力を持つ者を言った。
「ああ、私の新たな砲手ですか。
まだ会ってはいませんけど。同乗員達に聞きましたよ。
確かこの国の第3王女シャルレット殿下と親密な仲なのだとか 」
ラミルがまだ会った事のない砲手について話す。
「そうよラミル。
その娘が力を発動させるわ、魔鋼の力をね。
邪なる者から仲間を護る為に 」
教えたマジカにラミルがその名を告げる。
「そうですか大使。
私の砲手はミハルと同じ様に力ある者なのですね。
会うのが楽しみになってきましたよ、チアキ・マーブル一等兵に。
魔鋼騎士チアキに 」
ラミルは窓の外に見える王宮に向って、新たな魔鋼騎乗りに期待を寄せてその名を呼んだ。
いよいよオスマンに起きた内紛を糾す時が迫る。
魔法少女チアキと王女シャルレットに迫る魔の手。
今、この国の未来を賭けた戦いの時が来ようとしていた。
第1王女ラルの魂を取り戻し闇の魔の手からシャルを護りきる事が
チアキに出来るのか?
その時ラミルは、マジカはどうすると云うのか?
次回 王宮の闇 Part3
君は眠りし王女に何を思うのか?




