第1章 New Hope(新たなる希望)Act12王宮の闇 Part1
イスタールブルグの中心地に聳える王宮。
永き間、オスマン帝国を支配してきた王家は継承者を決めねばならない刻を迎えていた。
現王バハドールⅡ世の容態は明日をも知れないまで悪化している。
皇太子王女ラルは、意識を失ったまま眠りについている現状で、
王位は第2王女ミークへと譲られようとしていた。
しかし・・・
「え?ボクに継承権を譲るって・・・そんな勝手な事許されないよ 」
シャルが湯気の中で反論した。
「だからっ、シャルレット。内々の話だってば。
ラル姉が元へ戻れば継ぐのは第1王女で皇太子のラル姉なんだから・・・」
教えたミークが手を振って断わりを入れる。
「そんな事は知ってるよ。
でもミーク姉様はボクに継承権を譲ってどうする気なの?」
反論するシャルが王位を譲ると勝手に告げたミークに訳を訊くと、
「それはねシャルレット。私の身にもしもの事があった時の為なんだ。
奴等に気付かれたらどうなるか解らないんだから・・・その用心の為にね 」
苦笑いを浮かべて、ミークが話した。
「もしもの時!?
ミーク姉様の命を狙ってくると言うんだね、反逆者達が!」
薬湯から立ち上がってシャルが叫ぶ。
「そうならない様に務めてきたんだけど。
馬鹿者の真似を続けるのも、いい加減嫌になって・・・ね 」
肩まで湯に浸かってミークがシャルに笑いかける。
「もう少しで反逆者達の首班が判りそうなんだ。
それさえ解れば一気にかたをつける。
ラル姉を救い、反逆者共を一掃して、また姉妹仲睦まじく暮したい 」
ミークの願いに、シャルも頷く。
「うん、ミーク姉様の想いはボクが願う事と同じだよ 」
ミークの傍に寄って湯に浸るシャルが。
「ミーク姉様が独りでそんな役割を担っていたなんて全然知らなかった。
てっきり反逆者達に祀り上げられているのかと・・・」
俯き謝るシャルの頭へ手を載せて。
「シャルレットにも内緒にしていたのは、もし私が奴等の手に掛かってしまった時の為。
シャルレットの身に危害が及ばなくする為だったの。
私の策を知っている者は僅かに2人だけ。
この私とビシラス叔父さんだけなんだ、シャルレット」
ミークはふっと天井を見上げてシャルに言った。
「辛かったんだねミーク姉様。
誰にも話せず誰にも頼れず・・・たった一人で敵に向き合っていただなんて・・・」
シャルは反対に視線を湯に落として応えた。
「いいや、もういいんだシャルレット。
もう話す事が出来た。もう我慢しなくても良いと想ったんだ。
力強い仲間が来てくれたのだから・・・」
シャルに顔を向けてミークが教える。
その瞳には、湯船の奥に控える者を見ていた。
「力強い仲間?えっと・・・チアキの事?」
その視線に気付いたシャルが首を回してチアキを観た。
「ほえ?私?私ですかぁ?」
体の傷を摩っていたチアキが二人に聞き返すと、
「ふふんっ、どうだか・・・ね。
確かに魔法使いとしては心強い味方とは思うけど。
人間としては半人前の小娘に期待は出来ないね 」
ミークが肩を竦めて言い切った。
「半人前・・・ですよね。あははっ 」
苦笑いをして、チアキも認めてしまう。
「じゃあ?ミーク姉様の言う力強い仲間って?」
チアキの事では無いと聞いたシャルが、仲間について尋ねると。
「うん、私がシャルレットに逢いに来たのも、
チアキに決闘を求めたのも、その人に会ったから。
チアキの母国、フェアリアの大使に教えて貰ったからなの 」
ミークが二人に教える。
「その人はね。会った瞬間に私の事を見抜いたんだ。
それに反逆者達の事も。
凄い人なんだ、マジカ大使って!」
チアキとシャルは顔を見合わせて、ミークの話に聞き入った。
「マジカ大使が諭してくれたんだ。
この国に邪な者の手が伸びていると。
その者達の手から救う為にこそ、フェアリア派遣隊を使うべきだと。
もう一人で戦わなくても良いのだって 」
瞳を輝かせてミークは二人にフェアリア大使の事を教えた。
「ふーん、ミーク姉様がボクに会って話してくれたのもその人・・・
マジカ大使のオカゲって訳なんだね。
でも・・・どうしてチアキと決闘なんてしたの?」
シャルがミークに尋ねた。
「それはね。実はマジカ大使が頼んできたんだ、私に。
シャルレットにくっつく金魚の糞を使えるか試して欲しいと。
使えなかったら殺しても構わないつもりで挑んでみてって・・・あ 」
シャルとチアキがジト目で見詰めているのにミークが苦笑いして、
「い、いや。だからっ、金魚の糞が使い物になって善かったなぁっと・・・」
明後日の方を向いて付け足した。
「金魚の糞って・・・・」
シャルが聴き咎める。
「・・・そこじゃないでしょ・・・シャルぅ・・・」
そのシャルの言葉をまた聴き咎めるチアキ。
「まあ、兎に角。チアキがシャルを護れる事が解ったから良しとしよう 」
苦笑いするミークが話を誤魔化す。
「ミーク姉様・・・チアキが可哀想でしょ。
言い直してよ<金魚の糞>・・・」
「シャルレット・・・結構・・・根に持つんだな 」
姉妹の会話は明るさを取り戻し、
差し迫った反逆者達との決戦の前とはとても思えなかった。
チアキは今、シャルと共にミーク姉姫の事をも
守り抜いてみせようと心に誓うのだった。
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これより・・・
<お風呂回>補填計画発動!
・・・・・・・・・・・・・
ここは、とある野営地。
「聴いたわミリア。
アイツって、こんなチャンスを2度も台無しにする気なのね!」
ミハルが机に向って座っている。
「あ・・・?ミハルセンパイ?何の事ですか?」
「決まっているわ!<お風呂回>の事よ!」
眼が点・・・
「あの?センパイ・・・頭可笑しくなってますね・・・」
「いいえミリア!私はあの娘の事を考えてやってるのよ!」
またまた眼が点・・・
「はい?どう言う事で?」
<バアアァンッ>
机を叩いてミハルが立ち上がる。
「善い事ミリア。はっきりさせておくわ!
主人公はね、お風呂回でどれだけ人気を取れるかが勝負処なんだから!」
「・・・・・。」
もはや・・・開いた口が閉じれないミリア・・・。
「私だって初めは恥ずかしかったわよ、うん!
でもね、これが<魔鋼騎戦記・シリーズ>の鉄則らしいのよ!」
「誰がそんな事を?」
⇒ 指差されたのは・・・・作者・・・・
「それなのに・・・ああ、それなのに!
”チマキ”め~っ、可愛娘ぶりやがってぇ~!」
「センパイ・・・キャラ崩壊してますって・・・」
「こうなったら!チアキにも一肌脱いで貰うしかないわね!」
「一肌って・・・もう脱いでますから」
ミハルはブレスレットを掲げて・・・
「♪ぱるるんぱるるん♪ ”チアキ”から羞恥心を取っちゃえぇ~」
「なんスカ、その呪文は?」
「こういう時はお決まりの魔法の呪文を唱えないといけない決まりらしいよ!」
「・・・。」
ミハルの呪文は一体何を引き起こすというのか?
ここで視点をチアキに振ります。
「はあ・・・シャルもミーク王女もおっぱ○大きくていいなぁ・・・」
拘るチアキが風呂場で孤立していた・・・・。
ーチアキ、チアキ・・・大切な話しがあるわ!-
「あ?ミハエルさんですか?」
ーう・・・うん。そう・・・ミハ・・ブツブツです。この大切な時に、
チアキは何をしているのよ!-
「は・・・い?」
ー大事なお風呂回だというのに、湯船で浸かってばかりでは駄目よ!
チャンと自己主張しなきゃ!主人公失格よ!-
「・・・・はい?」
ーいいことチアキ!魔鋼騎士になるには、この試練を越えねばならないの!
お風呂回で<お肌を晒す>という試練がぁっ!-
「・・・。どんな関係があるんですか?」
ーふふふっ!人気が上がればレベルも上がるのよ!
つまり・・・主人公の人気が上がれば無敵になる訳よ!-
「おおっ! <キラーン> そうなのですね!」
ー(くっくっくっ!簡単に釣れたわ)そう云う事よ!
さあ!チアキ。主人公無双への第一歩!
<お風呂回>補填計画発動の刻よ!-
「はい!恥ずかしいけど頑張ります!」
ー(くっくっくっ!まんまと引っ掛かったわね!)
ごほんっ、でわ。
先ずは腕で胸を締め付けて・・・両側から。
それから手の甲で胸を押し潰すように・・・ぎゅっと!-
「はいっ、こうしてこう!ですか?」
ー(む・・・チアキ・・・言うほど貧○じゃないじゃないの)
う・・・まあ。そんな感じで。
後は上目使いにモニターを観て -
「はい・・・こんな感じですか?」
ーうむぅ。まあ・・・今回はこれで許してあげるわ。
次回にはもっとセクシーさを身に着けておくように!-
「はぁあぁ~いぃ。」
チアキのヌードにミハルは残念がった。←なんでだよ?
「じゃあ、ミハエルさん。また教えてくださいね!」
ー・・・・信じやすいんだな、チアキって。疑う事をしらんのか?-
こうして・・・お風呂回補填計画は無事に終了した・・・のか?
・・・・・・・・・・・
また、ここはとある野営地。
「ぬぅっ!チアキめっ、良い子ぶりおって!」
「まだ・・・やってたんですか。先輩・・・」
以外とすんなりチアキが晒したのに拍子抜けしたミハル。
「嫌がって<お風呂回>失敗したら・・・私の出番かと思ったのに!」
「センパイ・・・悪堕ち。し過ぎですから・・・」
呆れるミリア。
「こうなれば作者に直訴だ!」
「無駄ですよ・・・」
ミリアが止める。
「なんでよミリア?」
「チアキ・・・目覚めましたから。主人公に・・・」
・・・・・・。
「ガッデェーム!畜生やでぇ~っ!」
机にヘシ折っ鉛筆を投げつけるミハル・・・
呆れて驚くミリア。
ああ、今日も「魔鋼騎戦記Ⅱ」は・・・
平和だなぁ・・・・。
後書き前のおふざけでした。
あ・・・の。
観ましたよね・・・私を。
二人の姫を護る為にも、私はもっと強くならなければいけないのですね!
私頑張りますからっ!(恥ずかしいのは嫌だけど・・・)
次回 王宮の闇 Part2
君は懐かしの人と会う事になる祖国を遠く離れたこの地で・・・




