第1章 New Hope(新たなる希望)Act11剣と魔法 Part5
「くそうっ!魔法が通じないのなら、この剣で直接攻撃を掛けてやるまでだ!」
斬波が防がれたミークが、剣を振り翳して突っ込んで来た。
ー素手の私に剣を防ぐ事は出来ない。
魔法で防ぐ事が出来たとしても、ミーク姉姫様を降参させる事は無理だー
チアキは防ぎ続けられても勝利するのは適わないと悟る。
ーでは・・・どやって?
剣に対して剣を出しても、私に剣術の長けた王女とマトモに闘えるとは思えない。
もし、勝てたとしても王女を傷つけてしまう事になるー
シャルを想うチアキは剣の力をどう使うのかを、考えあぐねる。
ーミーク王女を闘えなくすれば・・・動けなくする事が出来れば。
降参してくれるかも。
そうだ!身動きできなくなったら認めてくれるかもしれない。
私の力を・・・私の想いを -
チアキの想い等考えもせず、ミークは突きかかって来る。
<ビシュッ>
ミークの剣がチアキを襲う。
「くっ!」
剣先をギリギリ避けたと思ったが、右足のストッキングが千切れ跳んだ。
ーでも。どうやってミーク王女の動きを停めればいいんだろう。
傷付けず動きを停める方法は?-
振り回される剣を避けつつ考えるが、なかなかその方法が思いつかない。
「動くな小娘!
私の剣を避け続けるのなら、縛り付けてやるぞ!」
ミークがイラついて怒鳴りつける。
ー縛り付ける?そっか、その手があった!-
チアキはミークの言葉にヒントを得た。
ー剣の魔法でロープが出せないのかな?
ミーク王女を縛り上げて、動けなく出来る魔法のロープが・・・-
チアキの出した方法は魔法力でミーク王女の身体を動けなくし、闘いを終えるというモノだった。
ーでも、あんなに剣を振り回されていたら近寄り縛り上げるなんて無理だろうなぁ ー
実行は難しいと考えたチアキが誰言うとも無く呟いた。
「相手を縛り上げられる魔法ってないのかなぁ 」
ー あるよ・・・・-
「え?」
頭の中に、また直接語りかけられて。
「どうすればいいの?」
訊き返してしまう。
ーあなたの思い描くモノを望んでみなさい。
それがどんな物なのかをはっきりイメージしてみて -
声が教える通り、チアキは自分の求めるモノをイメージした。
「ロープ・・・いいや違う。
ミーク王女に近寄らずに身体を動けなくするモノ・・・えーっと。
そうだ魔法のチェーンみたいなもので・・・」
チアキのイメージは魔法石に届く。
「これだ!」
右手から伸びた光の紐を右手に持ち、チアキは身構える。
「! 何だそれはっ?」
ミークはチアキの手にする光の糸を警戒しつつ剣を構える。
「ミーク王女殿下!あなたを闘えなくすれば私の勝ちなのですよね!
身動き出来なくなったら私の勝ちだと認めてくれますよね!」
剣を構えたミークに叫びながらチアキは魔法を放つ。
「王女を捕まえろ魔法のリボンよ!」
右手を振り抜き、チアキが叫んだ。
<ビュルルッ>
光の紐が、ミークに伸びてゆく。
「 ! 何だこの糸は!?」
光を放つ紐の様なモノが、ミークに迫る。
「切裂けっ剣よ!」
ミークの剣が紐を斬ろうと振られるが。
「何っ!?」
光の紐は、その剣を掻い潜りミークの身体に迫り、
「わああっ!?」
あっという間にミークの身体に巻き付いた。
<ギュルルッ>
胴も手も足さえも、光の紐が絡みつき、グルグルと締め上げる。
「むぎゅうっ」
一声叫んだミークの身体は光の紐に拘束され、身動き一つ出来なくなった。
<ぎゅううっ>
更に紐が強く締め付け、剣を持つ手から力を奪い去る。
<カランっ>
剣がミークの手から取落とされる。
「ミーク姉姫様、これで認めて頂けますよね。
シャルの傍に居ても良いと。
私も魔法使いの端くれだと認めて下さいませんか?」
チアキが光の紐を握り締めて訊く。
「・・・むう・・・」
ぎゅうぎゅうに締められたミークが頷いたように見えた。
「では、認めて下さいますよね、私とシャルが手を繫ぐ事も!
今迄通りに、傍に居ても良いと!」
念を押すチアキがミークに頼むが、ミークは眼を廻していた。
「チアキ!もう許してあげてよミーク姉様の事を。気絶しちゃってるよ!」
シャルの声がチアキを気付かせた。
「ありゃっ!?」
夢中になっていて気付くのが遅れたチアキが慌てて魔法を解く。
光のロープが消え、ミークが地面に倒れ込むのを抱き止めたチアキは。
「ミーク王女殿下!しっかりして下さいっ!」
気付かせようと声を掛ける。
「検分使ビシラス中将!判定してよっ!」
シャルが、腕を組んで勝敗を下さぬ師団長を促した。
「うーむ。 勝者、警護官チアキ・マーブル!」
仕方が無いと認めた検分使の勝ち名乗りが、広場に響いた。
「よしっ、チアキ!やったねっ!」
シャルがガッツポーズでチアキを褒める。
「ミーク王女殿下、さあ、御立ちください 」
薄く眼を開いたミークに、チアキが手を差し出す。
ズタズタに服を裂かれても諦めず、
闘い続けた魔法少女を見上げるミークの瞳には。
最早戦い続ける意志さえ見受けられず、頬には笑みさえ浮んでいた。
傷付きながらも、
ミーク姉姫様に実力を認めて貰う事が出来ました。
私を見上げて微笑まれたのです。
優しい目で。
そして私の傷を看られてお風呂に誘われたのです・・・
断われる訳ありませんよぉ~。
次回 Act12 王宮の闇 Part1
君達はお風呂で何の話をするんだい?え!?真面目な話ですか、そうですか・・・




