第1章 New Hope(新たなる希望)Act11剣と魔法 Part3
シャルを護りたいと願ったチアキ。
彼女の前に光が現れる。
その光が語り掛けて来たのだ・・・
「私は誓ったんだ、シャルを護り抜くと。大切な人を守るって約束したんだ!」
ミーク王女の前でチアキは叫んだ。
<ビシャッ>
叫んだチアキの周りが光に包まれる。
ーあなたには力がある・・・けど、使い方が解らないというのね・・・-
チアキの耳に聴き慣れない女性の声が入って来る。
いや、耳にというより魂そのものに。
「誰?私に話しかけてくるのは?」
思わず聞き返して気付いた。
「えっ?此処は何処?」
チアキの周りは薄暗い空間と化していた。
何も無い。
つい今しがたまで居た広場の光景は無く、
只、薄暗い何も存在しない空間の中で身体が浮んでいるだけだった。
「ここは?それに私に話し掛けて来た人は?」
<ポウッ>
周りを見渡すチアキの前に、金色に輝く光の玉が現れる。
ーここは魂の居場所。
魂だけが話す事の出来る天界の入り口・・・-
先程話し掛けて来た人の声が再び聞える。
「え!?私って死んじゃったの!?」
魂、天界と話されて自分が、あっさり死んでしまったのかと想ってしまい聞き返した。
ー・・・あなたってホント。素直っていうか、何というか。損な娘ねぇ・・-
声の主が呆れた様に言い返してくる。
「え?でも。魂とか天界とか・・・それにこんな場所へ突然連れてこられたら。
死んだのかと思っちゃって・・・」
返事に戸惑うというか、自分の居場所自体が解らず困惑したチアキに。
ーあの娘が頼むのも無理ないわね。
この娘を護るには一苦労しそうだわ -
ため息混ざりの声が光の中から聞える。
「あの娘?それは誰の事?
それにあなたは私をどうする気なのですか?」
訳が解らないチアキが尋ねてみると、
ーあなたの事を護って欲しいと、あの娘が頼んだのよ。
命の恩人だった人の娘を、護って欲しいと願ってきたの、あの娘が。
だから、私が此処へ来た -
「はあ?」
話が呑み込めないチアキが小首を傾げると。
ーあなたは今、魔法力を使う相手に苦しめられている。
命の危機に直面している。
だから此処へ導いたの、あなたを護る為に。
あなた自身でこの危機から脱出できる様にする為に -
光はチアキを救う為に導いたという。
「じゃあ、あなたは私に何を話してくれると言うのですか?
私にどうしろというのですか?」
光に自分が成せる事を訊く。
ーそうね・・・単純な話よ。
あなたの魔法をあなた自身の手で使える様にすれば善いだけ。
そのやり方を教えてあげれば済むって話 -
光の声が優しく諭す。
「私に魔法が使えるのですか?ミーク王女みたいに?」
半信半疑なチアキが尋ね返す。
ーそう・・・あなたには元々あった力と、与えられた力が秘められているの。
その力を使えれば相当な敵にも対処出来る。
それだけの魔法力があなたにはあるのよチアキ。
チアキ・アベノ・マーブル -
光が告げた名に、チアキが驚く。
「どうしてお婆ちゃんの苗字を?あなたは一体何者なのっ?」
訊き返すチアキには答えず、
ーさあ、魔法石に命じるのよチアキ。
その石にあなたの名を告げ、力を放てと。
あなた自身が望む力の在り様を -
光はペンダントに求めるように促した。
「え?この魔法石に命じるのですか?
たったそれだけで魔法が使える様になるの?」
胸元から取り出したペンダントを握って聞き返した。
ーそう。
あなたの名を石に告げれば魔法力を使う事が出来る。
あなたの事を魔法石が認めれば<剣と盾>の紋章が力を放つようになるわ。
あの娘みたいに・・・-
光が教えたのは、自らの力を解き放つ方法。
「それで私も魔法を使う事が出来るのですね。
シャルを護る事が出来るのですよね!」
ーそれはこれからのあなた次第。
あなたがあなた自身を守れなくては、他人を護る事なんて出来はしないのよ。
それだけははっきりしているから。
あの娘が歩んだ道の様に・・・-
光に教えられて、チアキも納得したように頷く。
そして教える者に尋ねた。
「最初から”あの娘”って仰られていますけど。
それは誰の事なのですか?
私を守ってと、あなたに頼んだ人は?
それにあなたは一体、何処の誰なのですか?」
光を見詰めて正体を訊く。
ーふふふっ、それはあなたも知っている者。
あなたを守りたいと願い、辛い願掛けをしてまでもあなたを護ろうと願った者。
その者は<光と闇を抱く者>。
神の使徒たるその者が、私達に頼んだの。
・・・こう言えば解るでしょっ -
優しい声が教えた時、チアキが想い描いたの人の顔は。
「ミハル中尉!?」
声に出して、その名を呼んだ。
ーそう・・・あの娘があなたを守って欲しいと願ったから私達が導いたの -
「では・・・あなたは?
それに”私達”って言っておられますけど。他にも?」
チアキに尋ねられた光が応える。
ーそう、此処にはミハルの友が大勢居るわ。
共に闘い共に生きた者達の魂が。
私はその中の一人。
いいえ、ミハルそのものとでも言った方が良いのかも知れない。
何故ならミハルの恩人は私の恩人でもあるのだから。
ロール・マーブル少佐の娘、チアキよ。
ミハルは私の生れ変った姿なのだから -
光の魂が教える。
「ミハル中尉の生れ替わる前の人?」
ーそう・・・人。人に憧れ、人となるのを誓った者・・・とでも言えば良いのかしら。
私はミハルになった者、<堕天使ミハエル>。
そう覚えていなさいチアキ。
私はあなたを見守っているから・・・-
光が渦を巻いてチアキを包む。
「 <堕天使ミハエル> ・・・そっか。ミハル中尉は魔法使いなんかじゃなかったんだ。
天の使徒・・・天使様だったんだ・・・」
チアキは光に包まれ、眼を瞑った。
私は魂に教えられたのです・・・
あの人が私の想像を超えた人だったのを。
いいえ。ミハル中尉の本当の姿は・・・天の使い。
天使<ミハエル>の生れ変った姿だったのだと。
そして、私は導かれるのです。
魔法使いとして覚醒する為に。
次回 剣と魔法 Part4
君は目覚める、自らの能力に。闘う術を手にして・・・




