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第1章 New Hope(新たなる希望)Act10王女(シャル)と私(チアキ)Part3

シャルに連れられて着替えに来たチアキ。


言われるままに着替えてみたが・・・。

 「どう、チアキ。」


着替え終えたシャルが鏡の前で、放心状態のチアキに声を掛けてくる。


「・・・シャル。これって士官服?それとも学生服?」


鏡を見詰めたままのチアキが訊いた。


挿絵(By みてみん)



「ああ、それはね。王室警護官の制服なんだよ。

 一応女性用なんだけど、嫌だった?」


シャルが悪戯っぽく笑ってチアキの手を取って自分に向かせ、


「うん、似合ってる。見違える程、凛々しい感じ。」


うんうん、頷いて見回した。


「そ・・・そうかな?」


白い制服に赤のラインが入ったスーツ。

短めのタイトスカートに白のストッキング。

そして膝下まであるブーツ姿。


軍服というより学生服に近いんじゃないのかと、チアキは思った。


「うん、それじゃあチアキ。

 これからはボクの付き人として振舞ってもらうよ。」


「うん、解ったシャル。」


シャルに頷いたら、


「うーん。取り敢えず皆の居る前では一応敬語でね。」


困った様な顔で、シャルが注意する。


「あ・・・そうだねシャル・・・いえ、シャルレット王女殿下。」


はっと気付いたチアキが、改まって言い直した。

ニコっと笑ったシャルが、


「じゃあ、皆の処に出るから。行こう!」


シャルが前に立って会議室へと向った。




チアキが居る近衛師団司令部。

ここは王室警護を司る近臣達が務める部隊でもあり、

政府にも手が出す事が出来ない直属の軍でもあった。


シャルが参謀達の勧めで此処に入ったのは、

何故自分に対し命令が下されずに無視され続けたのかを調べる為。

そして王室の中で何が起きているのかを知る為であった。


今、シャルレット王女の侍従武官扱いのチアキは他国の軍人としてではなく、

シャルを護る警護官としてオスマン内部の陰謀と対峙する事となる。



「第3王女シャルレット殿下。

 我々の知る処では、電報は着電していない事になっております。」


恰幅の善い年配の軍人が、慇懃いんぎんに頭を下げて言った。


「着電していないの?何回も送った筈なのだけれど?」


シャルが怪訝な顔で尋ねる。


「どうなのネイサ少佐。ちゃんと送っていたのでしょう?」


傍らの参謀に訊くと。


「はい、間違いなく。軍司令部とこの近衛師団の両方に。」


固い表情のまま、ネイサ少佐は答えた。


「それが本当ならば、我が師団の中にも朝敵が侵入している事になる。」


年配の軍人が周りを見廻し、


「情報参謀、それに通信参謀。

 これは一体何とした事なのだ!」


声を荒げて叱りつける。


「まあまあ、ビシラス中将。落ち着いてよ。」


シャルが年配の軍人を宥めて、


「着電したのかどうか調べれば直ぐに解るでしょうし、

 報告を怠った者も直ぐに判明するよね。その人に訳を訊いてみてよ。」


今回の件は上官に報告されていなかったのが解った。


「ではシャルレット王女を貶めようとする者が、我が師団の中にも居ると?」


ビシラス中将の参謀が、口を歪めて尋ねると。


「カラン君、失礼な言葉を吐くな。

 第3王女殿下の疑われるのも最もだ。これはワシの不行き届きなのだ。」


嗜らめられたカラン参謀が、口を噤む。


「殿下、部下の失言をお詫び致します。早速今回の件を調べ報告致します。」


ビシラス中将が改めて謝罪の言葉を述べた。


「うん、それは任せるよ。

 それよりも軍中央に居る反王室分子達の方が問題だよ。

 その方は何か解ったの?」


シャルが本題に移すと、


「は、それについては・・・カラン君、君から説明してくれ。」


中将は傍らの参謀を促した。


「解りました。

 先ず軍中央において暗躍している者達の正体ですが。

 奴等は国王陛下の病状悪化に伴い、事を早急に成し遂げようと焦り始めております。

 第1王女様の目覚める前にと、行動を開始した模様です。」


カラン参謀が現状報告し、


「今回、シャルレット殿下の進言を認めなかった事も含め、

 奴等の手は軍中央にまで伸び、見過ごす訳にはまいりません。

 我等近臣の軍として、王家に背く朝敵を討つべきだと思われます。」


自説を話した。

だがシャルもビシラス中将も、眉を顰めるだけだった。


「その朝敵を討つとは言っても・・・。

 その後ろに居るのが、あの方だと知って言っているのかカラン君。」


中将がカラン参謀を遮って問う。


「ですが、閣下。

 このまま放っておけば、いずれは奴等が全軍を手中に納めてしまいます。

 今の内に粛清をしなければ・・・。」


ビシラスに停められたカラン参謀が自説をげずに答える中、


「こちらから先に手を打てば、きっと奴等はあの方を出してくるだろう。

 そしてそれこそ奴等の狙い通り、王家が瓦解する事となるのだ。」


ビシラスが、カランの先走りを諌める。


「・・・そうでした。

 奴等の狙いは王家の転覆。現王室の崩壊が狙いでした。」


カランが気付かされたのは、


「そう。奴等の狙うのはオスマン帝国の崩壊。

 王室を潰し、自らの思うままになる政府を創る事。」


シャルが二人の間に割って入り、悲しみを湛えた瞳で、その名を告げる。


「ミーク第2王女。私の姉様でもあり、我がオスマン帝国の戦姫ミーク。

 姉様を使って自分達の野望を果そうとする者達が、朝敵の正体なのだから。」


私はシャルの傍で会議に臨席していたのです。


そこで聴いたのは耳を疑うような話。


シャルのお姉さんが王室に背く者の仲間だなんて・・・。


でも、それが本当なのかは直ぐに解る事となったのです。


次回 王女シャルチアキ

君は真実を告げる者に溜飲するが・・・その時、友は。

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