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第1章 New Hope(新たなる希望)Act9輝く希望 Part5

チアキとシャルの前に二人が寄る。


シャルレット王女の願いにチアキは戸惑う。


だが、その想いは二人に諭される事になる。


希望と夢を捨てる事になろうとも・・・。

「おやおや、シャルレット王女。

 我が国の兵士をお連れになられたいのですか?」


二人の後ろから声が掛けられた。


「あっ、小隊長。」


振り向いたチアキが、声の主に気付いた。


二人の後ろにはミリアと、


「チアキをオスマン王都へ連れて行ってどうなさるお積もりなのですか?」


分隊長のミハル中尉が立っていた。


「分隊長さん・・・それは・・・。」


口篭もるシャルが自分の願いを述べようとするのを、ミハルが片手を挙げて制し、


「お話はだいたい察しが付きますよ。

 でもシャルレット王女、これはあなたが解決せねばならない事なのですよ。

 チアキの手を借りずに・・・ね。」


一見突き放した様な言葉にも聴こえるが、

その顔には微笑が浮んでいた。


「ですが、ミハル分隊長。

 シャルは王都へ単身戻って、撤退命令が下されなかった訳を知ろうとしているのです。

 そこで何が起きるか解らないというのに。」


チアキがシャルを庇って反論したが。


「ではチアキ。

 お前が着いて行って、何の役に立つと言うのだ。

 シャルレット王女の護衛でもすると云うのか?

 他国の人間のお前に、一体何が出来ると言うのだ?」


ミリア准尉が、チアキに尋ねた。


「う。 そ・・・それは・・・。」


口篭もるチアキとシャルに二人の士官は、優しい笑顔で諭す。


「チアキ、シャルレット王女。

 あなた達を観ていると、少し前までの私を思い出すわ。

 大切な友を守るって一生懸命頑張る姿が・・・ね。」


ミハルは二人の気持ちを確かめようとする。


「シャルレット王女。

 あなたは誰かに狙われていると思われます。

 その誰かがお判りになられているのですね。」


先ず、シャルに狙って来ている者の正体を尋ねた。


「う・・・うん。多分・・・。」


問われたシャルが言いにくそうに答えた。


「そう。

 相手が解っておられるのなら、その者について情報を得る事です。

 それから王都へ向かわれる方が善いでしょう。」


シャルに情報を求める様に言ったミハルが、次にチアキに問う。


「じゃあチアキ、あなたは王女と共に敵対する者の居る処へ赴いたとして、

 何をすべきか解っているの?」


やや厳しい口調となったミハルに問われたチアキが考える。


ーシャルと王都へ行って・・・私はどうすれば良いのだろう。

 大切なシャルを、私は護りたいだけ・・・只それだけが私の願い、私の約束。-


想った事を反芻するチアキに、ミハルは黙って返事を待つ。


「チアキ・・・。」


シャルがそっと答えを促した。


「私は・・・ただ約束を守りたいだけなのです。

 シャルを、大切な友を護りたいだけ。只、それだけなのです。

 一緒に王都へ行き、シャルを狙う者の手から護りたいのです。」


チアキが偽りの無い心を告げた。


「ふむ。チアキはフェアリア軍を辞めてもシャルレット王女を護り抜くつもりなのだな。」


ミリア准尉がチアキの答えに頷いて、その決意が本物なのか確かめる。


「そうなれば、魔鋼騎士マギカナイトの称号は与えられなくなるが。

 それでも王女を護るというのだな。」


ミリアが告げた事は、チアキがずっと願っていた希望を捨てるという意味を示していた。


「フェアリア軍を辞める・・・魔鋼騎士への夢を捨てる・・・?」


チアキがミリアに告げられた言葉を繰り返し、一瞬戸惑った表情を見せた。


「チアキ、あなたがこの派遣隊へ加わるきっかけになったお母様との約束はどうするの?

 フェアリア魔鋼騎士マギカナイトの称号を得るのがあなたの夢。

 あなたの希望ではなかったの?」


戸惑うチアキに、ミハルが念を押すように訊いた。

チアキの決断に期待して。


チアキは母との約束、そしてシャルとの約束の狭間で心が揺れた。

ミリア准尉とミハル中尉の前で、拳を固く握り締め想いを巡らす。


ーお母さんとの約束。

 お父さんへの侮辱を晴らす為には、私が魔鋼騎士となってフェアリアに名を轟かせる。

 ・・・それが私の願い、お母さんの願いだった。

 でも、今は。

 そんな事よりもシャルの方が大切だと思える。

 異国の地で出来た大切な友を護る事が、何よりも一番大切な願いだと思うから。-


チアキの想いは今、大切な人の希望となる。


ーお父さん、お母さんごめんなさい。

 私は大切な友を護ると約束したの。

 大切なシャルを護ると誓ったの。

 だから私は魔鋼騎士マギカナイトになれなくてもシャルを守るという道を選ぶ。

 許してね、お父さん。ごめんなさいお母さん。-


決意を秘めた瞳を見開いたチアキが、二人の士官へ敬礼し、


「私、チアキ・マーブル一等兵は。

 シャルレット王女を護る道を選びます。

 喩え魔鋼騎士になれなくても、私はシャルを守ると誓ったのですから。」


自らの進退伺いを申し出た。


「チアキ!」


シャルが驚きとも歓喜ともつかない声で友の名を呼んだ。


「そう。それがあなたの選んだ道なのね。」


ミハルが頷く。


「チアキ、軍を辞めると言うんだな。」


ミリアが念を押す。


「はい。私はシャルを守る為なら軍を辞めても構いません。」


ミリアに決然と述べたチアキに、もう迷いは無かった。


「チアキっ!ありがとうっ!!」


挿絵(By みてみん)



シャルがチアキに跳び付いて、頬に唇を捧げた。


「わっ!シャルっ。人前で何をするの!」


驚いたチアキが頬を紅く染めた。




二人の姿を見ていたミリアとミハルが、微笑と共に頷いた。


「これで決まったわね、ミリア。」

「ええセンパイ。この二人なら大丈夫でしょう。」


ミハルは晴れやかな笑顔でミリアと話す。


「チアキ、これはミハル先輩からの命令だ。心して聴け。」


ミリアが分隊長と言わずにセンパイと呼んだミハル中尉が二人の前に進み。


「チアキ・マーブル一等兵。

 フェアリア軍オスマン派遣隊分隊長の命令を贈るわ。

 あなたにオスマン第3王女シャルレット殿下の守護を命じます。

 片時も離れる事無く、必ず護り抜く様。いいわね。」


ミハルがチアキに命じる。

それはチアキがまだ軍籍にある証拠。


「分隊長!?」


「隊長さん?」


二人がミハルを見て、歓喜の表情となった。


「解ったかな、魔鋼騎士マギカナイトチアキ。

 いいえ、魔法少女チアキ。」


ミハルが悪戯っぽく笑う。


「はいっ分隊長!」


チアキとシャルは、自分達の願いが叶ったかの様に想えた。


まだ、願いが叶ったわけでは無いというのに。

希望に輝くかのような瞳で、互いを見詰めて。


王女と魔法少女は、共に居る事に喜び合う。


 いにしえの魔女達が為し得た願いと同じ様に、

    心を一つに出来る喜びに満ち溢れさせて・・・



遂に私はシャルを護る為に特別任務に就く事となりました。


それは<派遣隊>とは、別行動となる事を意味していました。


それでも私は約束を守る決意をしたのです。


これから待つ戦いの幕開けだと知りながら・・・。


次回 ACt10 王女シャルチアキ Part1


君は友と共に因縁の待つ王都へと向う。約束を果たす為に・・・ 

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