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第1章 New Hope(新たなる希望)Act9輝く希望 Part4

敵<魔女兵団>の戦車から離れる為に後退するMHT-7。


ミハルはチアキに希望の輝きを観る想いだった。


やがて一人前の魔鋼騎士となってくれると確信し。

ーチアキなら・・・この二人なら大丈夫ね、ミリア。-


ミハルは目配せする。


ーはいミハル先輩。私も確信出来ました。-


ミリアもミハルに頷き返した。

チアキに視線を戻したミハルが表情に出さず決断する。


ーマモル、ミリア。

 あなた達の言った通り、この娘達は闘っていけるでしょう。

 私達の力が無くても。

 喩えこの先に壁が立ち塞がろうとも、きっと乗り越えていけるでしょう。-


王女と砲手に、自分を重ねるように微笑んだミハルは想った。


ーならば、私達は私達の宿命さだめに向き合うべきだと思う。

 あの娘と闘い解き放つ本来の任務に就くべきなのだと。-


ミハルは決断した。

シャル王女を守る事をチアキに託そうと。

自分達はオスマンへ来た本当の目的を果すべく行動しようと。


「ロール少佐。チアキを護ってあげて下さい。」


一言、彼女の父に願いを告げてから、

街の後方に居る部隊に視線を向けた。



____________



「うん、作戦通り。分隊長が戻ってくるぞ。」


整備兵達がMHT-7に気付き、用意に掛かる。


「マモル准尉から連絡です!<予定通り、準備セヨ>です。」


アルムがハッチから顔を出して叫んだ。


「どうやら、あの砲手は本物らしいな。」


砲塔に腰を掛けているルーンが横の車体を見て言った。

そのパンテルには、真新しく紋章が描かれてある。


「おいっニコ兵長っ。どうだ新式装備には馴れたのか?」


パンテルの操縦席に声をかけるルーンに、


「ええまあ・・・車体の大きさだけが問題なだけですよ。」


歴戦の砲手に訊かれて、苦笑いで返したニコが再びハッチへ戻り、


「おい、そっちはどうなんだ、ダニー?」


無線手に調子を訊いた。


「はあ、まあ。ボチボチですね。通信範囲が拡がっただけのようなので。」


あまり変わりが無いとだけ答えたダニーが、


「いきなり乗れって言われるなんて思いもしませんでしたからね、先任。」


戸惑い、苦笑いを浮かべた。

ダニーに頷き、


「一番大変なのは、ジラだものな。どうだ?」


装填手のジラに訊くと、


「はあ。37ミリからイキナリ88ミリですから。嬉しいような困ったような。」


重い砲弾を確かめるように、手に取り笑い掛けた。


「分隊長の命令だもんな。仕方ないさ。

 この魔鋼騎でないとチアキの魔法力が発揮出来ないと考えられたのだから。」


ニコが車内を見回して実感する。


「凄いなパンテルⅡ型は。3号の倍近い感じがするな。」


「ですね。砲尾も37ミリの倍以上大きいですから。」


ニコとジラが目を輝かせていると、


「先任!そろそろ戻って来られるみたいですよ、小隊長が。」


ダニーがヘッドフォンを耳に当てたまま振り向いて教えた。


「そうか、よしっ!」


ニコがハッチから半身を出して街の方を見て、


「見えたぞ。2小隊長車が戻って来た。」


砂煙を挙げて全速力で走り還って来る重戦車を確認した。


「あの様子だと、即時乗り換えになるだろう。

 この車体で闘う事になるだろう、チアキと共に。」


ニコが二人に予告する。


「それが分隊長の求められていた事ですから。

 士官3人から告げられた作戦なのですからね。」


ダニーに頷いたニコとジラが、


「中隊の命運を預かるのが我々なのだと告げられたミハル中尉の予測通り。

 中尉の試験にチアキは合格したって訳だな。」


「我々に自分の車両を委ねられた分隊長が認めたって事ですよね、チアキの魔鋼力を。」


二人が3号E型でVK20中戦車に変えたチアキの魔法力に自信を持って話し合った。


「でも、まだ解りませんよ先任。

 分隊長がこの車両に乗るって話されるかも知れませんから。」


ダニーが二人の勇み足に注意を促したが、


「いいやダニー。

 私には解る。きっと分隊長はチアキに砲手を任せられるさ。

 我々にこの車体で闘えと命じられると信じるよ。」


ニコが首を振ってダニーの忠告を否定した。


「まあ・・・その答えも直ぐに解りますよ。」


肩を竦めて、ダニーが操縦席のニコに応えた。



      <ギギイィッ>


ブレーキ音と共に、車体からチアキとシャルが飛び降りた。

重戦車MHT-7のキューポラからミハルが大きな声で訊いた。


「オスマン側は後退して来ましたか?」


その声にルーンが答える。


「はいっ、全員退避しております!」


挿絵(By みてみん)



車体から飛び降りたチアキがシャルの手を取って、オスマン守備隊へと向った。


「王女っ!ご無事でございましたか。」


二人の前に街から後退してきていた参謀が、シャルを迎えた。


「ボクは無事だよ。それより命令は未だ届いていないの?」


シャルの問い掛けに参謀がうな垂れて、


「はい。・・・まだ。」


一言だけ答えた。


「そう・・・。」


シャルも只頷くより他はなかった。


「シャル・・・きっと何か訳があるんだよ。

 命令を下す事が出来ない理由が・・・。」


悲しそうに俯くシャルを元気付かせようとチアキがその手を握って言った。


「チアキ・・・この闘いが終ったら。

 王都へ帰ろうと思うんだ。

 命令が下されなくとも。

 どうして撤退を認めてくれなかったのかを、知りたいんだボクは。」


シャルがチアキに決心を告げた。

そして・・・。


「お願いチアキ。

 一緒に王都へ来てくれないかな。」


チアキの瞳を見て、シャルが望んだ。

私はシャルの願いに答えることが出来ません。


だって。


いくらシャルの願いだからといって部隊から離れる事なんて出来ないから。


そんな私に、分隊長が近寄ってきたのです。


次回 輝く希望  Part5


君は友の願いを聴き遂げる事が出来るだろうか?

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