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第1章 New Hope(新たなる希望)Act9輝く希望 Part2

砲撃戦を展開すべく、双方の重戦車が近付く。


一瞬の内に決着が着く砲力を秘めた魔鋼騎が、必殺の一撃を放つ為。


だが・・・・。

   <ギュラララッ>


キャタピラが砂を噛む。

2両の重戦車がその距離を縮めて行った。


「ふむ。奴もなかなかの使い手のようね。

 走行射で、これだけ狙いが絞れるなんて。」


敵ISⅡの射撃術が相当なものと判断したミハルが、


「距離2000で停車。 一撃で決めて貰うわよ。」


こちらの砲力が勝っている事を確信して、それ以上の接近を止めた。


「了ー解!」


タルトが復唱し、


「只今、距離2500、後一分と掛かりませんよ。」


射撃準備を促した。


「はっ、はいっ!測的開始します。魔鋼弾装填!」


照準器に敵を捉えて、射撃諸元を併せるチアキに、


「装填よしっ、射撃準備よし。」


瞬時にミリアの声が返ってきた。


ーはっ、早い。さすが准尉・・・凄いな。-


重い10センチ砲弾を、まるで空薬莢の様な素早さで込めたミリアに舌を巻いた。


「距離2000、停車っ!」


タルトがブレーキを掛け、車体を敵に対して少し傾けて停める。


「砲撃開始っ、撃ち方始めっ!」


停車と同時にチアキに発砲命令が下された。


「射撃開始、撃ち方始め。

 目標前方の重戦車。魔鋼弾、距離2000。

 動標的、直進してくる目標に付き、直接照準。

  撃ちます!」


チアキの復唱に、ミハルが命じた。


「よしっ。 撃て!」


チアキの瞳には、十字線の中心に捉え続けているISⅡの正面装甲が映っていた。


っ!」


短く叫んで、トリガーを引き絞った。


    <グワオオムッ>


重い発射音と共に、砲弾が飛び出る。

赤い曳光弾が、吸い込まれる様にISⅡの前盾ぜんじゅんに向う。


    <ボッ>


高い貫通力を誇る10センチ弾は、ISⅡの装甲をいとも容易く貫いた。


ー!-

ー何っ!そんな?-


ミハルもタルトもマモルも。

命中し、貫通させた敵に驚く。


「命中っ!」


照準器を睨んでいたチアキが、ほっとしたように言ったが、

ミハル達はその事に驚いた訳ではなかった。


「奴は・・・<魔女兵団>の戦車ではなかったのか?」


ISⅡの紫色の紋章を観て、

てっきり<魔女兵団>の重戦車だとはかり思い込んでいたミハルが、

目測を誤ったとばかり呟いた。


その訳は・・・。


「え!?あっ・・・あれは?」


照準器を睨んでいたチアキが、悲鳴に似た叫びを挙げた。


ーそう・・・私もてっきり奴は人が・・・生身の人が乗っているとは思っていなかった。-


ほぞを噛む様に、ミハルも想った。


「敵の重戦車から乗員が脱出します。・・・撃破。」


たんたんとした口調で、タルトが告げた。

車内からの煙と炎に追われる様に、各ハッチから生存者が脱出する。


操縦手が、無線手が。

車長らしき人物がキューポラから身体を出し、

炎に焼かれる砲手らしき少女を助けようと、

そのハッチを覗き込み、手を差し伸べる。


「あ・・・・あ・・・・。」


震える手でチアキは照準器を掴み、


「は・・・早くっ、早くっ脱出してっ!」


自らが放った弾で、人が焼かれる姿に耐えられずに叫んでしまう。


「お願いっ、早く脱出を・・・。」


チアキの願いは炎と共に潰えた。


  <バッガアァーンッ>


砲弾に火が廻ったのか、ISⅡは砲塔を噴き飛ばされて・・・破壊された。


「うっ、うわあああぁっ!」


目の前で起きた惨劇に、チアキは絶叫した。


ーなんて事だ・・・私の判断は間違っていた。

 チアキに罪を犯させてしまった・・・。-


ミハルはチアキの絶叫を耳にして顔を背けてうな垂れる。


「チアキ・・・。」


シャルがガクガク震え続けるチアキに声を掛けようと手を伸ばしたが、

触れることも出来ずに口篭もった。


挿絵(By みてみん)



「これが・・・本当の戦争。

 本当の戦車戦って奴なのですね・・・・中尉。」


ポツリと呟くチアキは、震える手を見詰めたまま訊いてくる。


「私が撃たなければ、シャルが。

 大切な人達が同じ目に遭う事になるのですものね。

 私が敵を倒さなければ・・・。」


魔法少女は張り裂けそうな心を震わせてそう言い切る。


「そう・・・それが闘いというモノだ。

 それが砲手の務め。

 解ったかいチアキ・・・これが戦争というモノなんだ。」


無線手席から振り返ってマモルが教えた。


「はい・・・はっきりと解りました。

 私の務めがどんなに重いものなのかを。

 この手に与えられたちからと共に。」


チアキは震える手を握り締めて、


「護るべき者を守る為、私は撃ち続けます。

 喩えこの身が地獄に堕ちるとも。

 必ず護り抜いてみせますから、シャルを。」


そう言ったチアキがシャルに振り返り、その碧き瞳を見開いてみせた。


ーロール少佐。

 あなたの娘はこんなにも力強い事を言ってのけましたよ。

 私なんかよりも、ずっと心が強いみたいですね。-


ミハルはチアキの姿に微笑み掛ける。


魔法少女が手にする石が、

碧く輝きを放ち続けているのを眼にして・・・。

私は死に逝く者をこの眼で観ました。


私の放った砲弾で、焼かれて・・・噴き跳んだ車体と共に。


だからと言って、私は諦める事なんて出来ないのです。


約束したから。


必ずシャルを護り抜くと誓ったのだから・・・。


次回 輝く希望 Part3

君は後から続く敵に後ろを見せるのか?その訳は一体?

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