第1章 New Hope(新たなる希望)ACt7慟哭 Part3
ミハルの前に現れた<闇騎士>リン。
今、新たな宿命を背負いし者同志が闘う。
「じゃあ、解らせてあげる。その身体に・・・ね。」
<ザアッ>
風も吹かないのに砂が舞い散った。
二人の魔法力が極限まで跳ね上がり、砂を吹飛ばしたからだった。
「喰らえっ、ミハル!」
闇騎士が、トリガーを引き絞る。
<バシュッ>
銃口から魔鋼弾が光の弾となり、ミハルを襲う。
弓を構えたミハルが身体を逸らして避ける。
<ビシッ>
完全に避けれた筈の光の弾が、ミハルの袖を切裂いた。
「くっ!」
苦悶するミハルは、裂けた袖を見てから闇騎士に向け歯を噛み締める。
「ふふふっ、交せたと思ったか巫女よ。
甘いな。この弾は避けれはしない。
解っているだろうに。」
闇騎士が嘲り笑う。
「諦めろミハル。
この銃が私の元にある限り、お前は抗う事すら出来ないのだからな。」
再度狙いをつけた闇騎士が、
「抵抗しても無駄だと言っただろうが!」
<バシュッ>
嘲り、銃を放つ。
「シールド!」
矢から手を離し、ブレスレットを翳して魔法障壁を造り、
光の弾を受け止めようとするミハル。
<ビシッ>
「くっ!」
光の弾は、ミハルの魔法障壁に食い止められたが、
その魔法陣は、光の弾で罅割れてしまった。
「うっ、くっ。」
ミハルの魔法力を持ってしても、魔鋼弾の威力には歯が立たない。
「どうした巫女よ。
たった一発で魔法陣も破れてしまったぞ。
まだまだ弾は残っているっていうのになぁ。」
嘲る闇騎士が尚も狙いをつけてくる。
ー何とか・・・近寄らなければ。
この一本の矢で闇騎士を討たなければ・・・。-
ミハルは焦りを覚える。
だが、銃と弓では勝負にもなりはしなかった。
<バシュッ>
闇騎士の銃から光の弾が放たれ、
「シールド!」
再び魔法障壁で受け止めたが。
<バシュッ バシュッ>
連射された弾が、シールドに穴を穿つ。
<ビシッ>
「うっ! あっ!」
壊された魔法陣を突き破り、魔鋼弾がミハルを襲った。
光の弾が当たった処の服が裂け、そこから魔法力が流れ出ていく。
胸部と腹部に弾を受けたミハルは、力尽きる様に両膝を地に着け崩れ折れる。
「う・・・あ・・・。」
どんどん魔法力を失い、
巫女姿を維持できなくなっていくミハルの左手から弓が消え去り、矢も光の粒と化してしまう。
「ふふふっ、いいザマだな巫女。
いや、最早単なる魔法使いでしかないか。」
嘲る闇騎士が、崩折れたミハルへ銃を向け、
「さあ、これで解ったろう。
大人しく私と共に来るのだ、ミハル。」
嘲るのを止めて命じた。
「だ・・・れが。邪な者と一緒に行くもんか。まだ・・・闘える。」
肩で息を吐くミハルが、その命に抗った。
金色の瞳を向けて。
「馬鹿な娘だ。
良かろう抗う事が出来なくなる位、痛めつけてやる。」
闇騎士は口を歪めて罵り、
「たっぷり味わうが良い、苦痛と絶望をな!」
トリガーに指を掛けた。
ーリン・・・どうして?
あなたは本当に邪な魂に堕ちてしまったの?-
抗う瞳の中に、悲しみを浮ばせたミハルが想った。
友はもう還っては来ないと。
闇騎士の銃口を見てミハルは悲しんだ。
<ババババッ>
連射音が闇夜に轟いた。
_____________
瞼を閉じ、弾が身体を射抜くのを覚悟したミハルが気付いたのは。
「ミハル姉から離れろ邪な者!」
マモルの声が聴こえたからだった。
「マ・・・マモル!?」
声の聴こえた方を振り向いたミハルの瞳に映ったのは、
機関銃を構えたマモルの姿。
「チッ!魔法使いの男子か。邪魔をしやがって!」
悪態を吐いた闇騎士が、そちらへ銃を向ける。
「駄目っマモル、あの弾は避けれないの!」
弟の姿に驚くと共に、危険を知らせようと叫んだ。
「マモル!逃げてっ、早くっ!」
姉の叫びを無視したマモルが銃口を向けて、
「ミハル姉から離れろっ!さもないとナマリ弾を喰らわせるぞリン!」
闇騎士の名を叫んだ。
名を呼ばれた闇騎士が一瞬銃を怯ませて、
「ほざくな!
お前なんかに私が撃てるとでも・・・。」
そう叫び返した闇騎士が気付く。
<スチャッ>
マモルの後からもう一人、機銃を構えた者が居る事に。
「ミハル先輩に危害を加えた者は、この私が許しません。
喩えそれが元、友人だったとしても。」
ミリアが腰だめに軽機関銃を構えて言い放った。
「くっ・・・そぉっ。」
流石に二人の機関銃に気後れしたのか、闇騎士も怯んだ。
「覚えておくがいい。
必ず真聖巫女は貰い受けてやる。必ず・・・なっ!」
闇騎士リンはハーフマントを翻し、夜闇の中に姿を眩ました。
「うっ・・・くっ、リン・・・リン!」
ミハルは消えた姿に手を差し伸ばし、
友だった者の名を呼んだが、魔法力と気力を失い力尽きる。
<バタッ>
マモルとミリアの前でミハルは気を失うように砂上に倒れ込んだ。
「ミハル姉!」
「ミハル先輩っ!」
二人の呼ぶ声を耳にしながら、ミハルの意識は薄れていく。
友だった者の名を呟きながら、
届かぬ想いに、心の中で泣いていた。
あー、美味しいなー。
ミハル分隊長の手料理は。
あれ・・・いつの間にか、士官が居ないや。
どこに行かれたんだろ?
ま、いっか・・・。
次回 慟哭 Part4
君は運命の悪戯を嘆く。あの晩に起きた出来事を思い出しながら・・・




