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第1章 New Hope(新たなる希望)Act7慟哭 Part2

挿絵(By みてみん)



ミハルは誰にも告げずに外に出ていく。


その先に待つ者の居る丘へ・・・。

「美味しいですよね、マモル准尉。」


久方ぶりのお国料理に舌包みを打ち、皆が冗舌になる。


「そっかぁ?まあ普通だろ、これなら。」


あまり気にせず、マモルが答える。


「え!?普通って・・・マモル准尉はこの味付けが標準なのですか?」


周りに居る搭乗員の女子から聞き直されたマモルは、いとも簡単に。


「ミハル姉の味って・・・普通じゃないのか?」


逆に女子達に訊き返した。


「うっ!?」


ミハルの料理に慣れているマモルの舌に、女子達が思いっきりたじろいだ。


「そりゃあ、小さい時からずっとミハル先輩の料理を食べ慣れて育った、

 マモル君に聞くのはヤボってもんだ。」


ニヤリと笑うミリアが駄目だしすると、


「マモル准尉の彼女って、コックさんですか?」


ダニーが諦めたように訊く。


「彼女?いや、幼馴染なだけだよ。

 それにリマもミハル姉の味に慣れてるからな。

 今頃王宮の中で何をしている事やら・・・。」


ちょっと遠い目をしたマモルが、幼馴染で元無線手の事を気にして名を告げた。


    <じとっ>


全く無頓着な弟に、女子の目が突き刺さっているのに、

苦笑いを浮かべるミハルが、思い出したように。


「そうそう。

 内地からの補給品にお便りが入っていたの。

 食事の後で受け取ってね。」


皆に話して立ち上がった。


「ミリア、マモル。手紙を配ってあげて・・・お願いね。」


席を外し、立ち去る後姿を見送った者は、

ミハルがきっとあの人からの手紙を一人で読むのだと思って何も言わなかった。

唯一人、マモルを除いて。


「ミハル姉。」


姉の後姿に何かを感じたのか、マモルが呟く様に姉の名を呼んだ。



_______________



ミハルは静まり返った砂漠へと歩を進める。


月の光が照らすその顔は、何処と無く陰が漂って見える。


街から離れた丘まで来たミハルが、周りの気配を探って一言呟いた。


「約束通り、一人で来たわよ。闇騎士・・・。」


碧き瞳で夜闇よやみの一点を見たミハルが呼んだ。


「・・・・リン。」


    <ファサッ>


ハーフマントを翻す音が、砂漠に流れる。

闇の中から現れたかの様に、その者は姿を見せた。


黙って丘の上からミハルを見下ろすその瞳の片方が赤黒く、

前髪に隠れたもう片方は、金色に光っていた。


「リン・・・もう、私達の元へ帰れないのね。

 マジカさんの元へ還れないのね。」


その姿を見上げてミハルが言った。


挿絵(By みてみん)



「闇に貶められたあなたを救えないのなら。

 滅ぼすしか道はないの。・・・この私には・・・。」


手を握り締め、辛そうに告げるミハルが身構える。


「そして・・・真総統を倒して・・・

 お父さんお母さんを救い出してみせる!」


右手に着けたブレスレットが金色に輝きを放つと、

顔の前に翳したミハルが詠唱する。


 「光を抱け! 

    <シャイン トゥ エンバランス> ! 」


金色の粒がミハルを包み込み、その姿を真聖巫女へと替えさせた。


「リン!あなたの闇を討ち祓ってあげる!」


丘の上に佇む闇騎士リンに、吼えるミハル。


「・・・無駄だ、巫女。お前に私は倒せない。」


見下ろしたリンが一言告げる。

邪な瞳を光らせて。


「判っている筈だミハルよ。

 前に・・・この国へお前が来た時に知っただろう。

 最早、私はちからを手に入れた事を。

 お前を凌ぐ力を持ったという事を。」


腰に下げた銃に手を伸ばし、闇騎士が言い放つ。


「くっ・・・でも。私はあなたを・・・闇を倒す。」


巫女姿のミハルが、身構えて応える。


「戦車戦では、まだ歯が立たないが。

 身体を使う魔法戦でなら、私の方が勝っているって・・・知ったでしょ。

 この前闘った時に・・・ね。」


薄く笑う闇騎士は、ホルスターから銃を抜き放ちミハルへ向ける。


「この魔鋼銃がある限りは。

 あなたは近寄る事も出来はしない。

 神の矢では私に抗う事すら出来ないって事を、知った筈よ。」


銃口をミハルに突きつけて、トリガーへ指を掛ける。


「さて、お喋りはもう善い。

 あなたをあるじの元へ連れて行かなければいけない。

 大人しく私と共に来るが良い。さもなければ・・・。」


狙いをミハルに着けて、闇騎士が脅す。


「あなたを身動き出来ない程、痛めつけて。連れ去るまで!」


薄く笑う顔が月明かりに照らされる。

その邪な瞳に映るミハルの顔が強張る。


「出来る物ならやってみなさい。

 私は邪な者なんかに負けはしない!」


神の矢を弓に番えて、ミハルが抗う。



ミハル中尉は皆さんに手紙を配るよう、

 言いつけてから出掛けられたみたいです。


そんな分隊長に私達は何も気に掛けなかったのですが。


唯一人、マモル准尉だけが何かを感じていたみたいです。


次回 慟哭 Part3

君は闘う術を持てなかった。力の差を身を持って感じながら。

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