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第1章 New Hope(新たなる希望)Act6震える心 Part3

二人の前にミハルが近寄る。


二人を確かめる為に。

二人の心を知る為に。

「チマキ、シャルレット王女。少しいいかしら。」


ミハルが二人に口を開く。


姿勢を正したチアキと、傍で眼を逸らしたシャルがミハルに頷く。


「先ずチマキ。

 あなたは友を救う為に闘った。

 でも、一人で守り抜く事が出来たと思う?」


鋭い視線を向けられたチアキは、黙って首を振った。


「次にシャルレット王女。

 あなたは自分の行為がどれ程愚かだったか、解っていますか?」


目を合わせ様としないシャルは、黙って頷く。

二人の様子を見て、ミハルはため息を吐く。


「はあ、2人共。黙っていては解らないわ。はっきり言いなさい。」


促されたチアキが、


「はい。私一人では護れなかったです。

 あのままだったら、きっと私もシャルも敵にやられてしまっていたと思います。」


うな垂れてミハルに答えた。


「ふむ、チマキの力が王女殿下を護るには足らなかったと。そう想う訳ね。」


ミハルに正されたチアキが頷く。


「では、シャルレット王女は?どう思われているのです?」


ミハルに向こうとしないシャルは、黙っていた。

シャルの視線の先には、毛布に包まれた12本の遺体が置かれてある。


「彼等はなぜ闘いに殉じたと思われていますか?

 何の為に死んでいったと考えておられるのです?」


やや強い口調になったミハルが問い質す。


「・・・こんな事になるなんて思ってもみなかった。

 ボクの想像していた事と全く違っていたんだ。

 ボクは戦闘という物を知らな過ぎた。闘えばきっと勝つと思い込んでいた。

 ボクの国が・・・ボクの戦士達が・・・。」


毛布を見詰めたまま、シャルが呆然と答える。


「シャルレット王女。

 これが現実なのです。

 戦争という物は敵も味方にも必ず犠牲者が出てしまうものです。

 そして死んだ者に想いを寄せている人に、絶望と悲しみを与えてしまうのです。」


呆然と毛布を見詰め続けるシャルに、ミハルが近付き、


「シャルレット王女。

 あの人達は命令に従い戦闘に身を晒し、散っていかれました。

 死んだ者は2度と還って来ません。

 あなたの不注意な命令によって・・・。

 この事はあなたの重い罪として背負って行かなくてはいけないのです。

 そして2度と軽はずみな考えで命じてはならないのです。

 それが死んでいった人達に対する王女殿下の贖罪になるのですから。」


こんこんと説くミハルは、シャルの涙を見る。

ポロポロと涙を零し、ミハルより12本の毛布に向って謝った。


「ごめんなさいっごめんなさいっごめんなさいっ。

 ボクの所為で・・・みんな、ごめんなさい。」


心の底から謝るシャル。


「そう・・・これからの王女は、この人達の魂に賭けて誓うのです。

 立派な人になる事を。

 命の大切さを身を持って知った王女としての務めを果たして下さい。」


ポンとシャルの頭をコツいて、ミハルは微笑んだ。


挿絵(By みてみん)



流石さすが・・・中尉・・・いいえ、<光と闇を抱く者>。

 何もかも知っておられたのかな。

 シャルの悪巧みも、私が危ない処だったのも・・・。-


チアキはミハルに対して、益々羨望にも似た輝きを感じ、

その優しさを湛えた瞳に見入った。


シャルは微笑むミハルの顔に、心を震わせる。

この人なら頼めると。

この人なら、国を助けて貰えると。



___________


フェアリア皇国派遣隊はオスマン隊員の救助を終え、基地へと戻った。

それは砂漠に燃える夕焼けが沈もうとしている時の事だった。


「ミハル隊長さん、チアキ。

 事の次第を参謀達に聞かせてやってくれない?」


「ええ、解りました。私もその参謀とやらに一言告げておきたいと思っていましたので。」


了承したミハルに頷き、


「チアキも。

 ボクを護ってくれた恩人なのだから一緒に来て。

 改めて参謀達に紹介するから。」


シャルの求めにチアキはミハルを伺う。


「そう言うことなら。チアキも来なさい。」


ミハルに促されたチアキが、


「はい。解りました中尉。」


同道する事に決めた。

3人はオスマン軍が駐屯する建物へと向う。


「ねぇミハル隊長さん。

 チアキを魔鋼騎乗りと認めてくれたの?」


シャルがミハルに尋ねる。


「さぁーて。それはこれからのチアキ次第ってとこかしらね。

 チアキは経験が浅いから。

 危なっかしい魔法使いだから・・・

 私が居る時だけは認めてあげれる状態ですからね。」


ミハルはチアキに釘を差す様に答える。


「なるほど・・・チアキは保護者同伴の魔鋼騎乗りなんだ。」


悪戯っぽくシャルが笑う。


「う・・・。確かに・・・そうです。」


笑われたチアキも認めざるを得なかった。


「でもねチアキ。

 あなたは知った筈よ。諦めない心を・・・諦めないちからを。

 その強さを知ったあなたなら、必ず強くなれると私は信じているから。」


諭す様に教えるミハルに。


「は・・・はい。頑張ります!」


喜ぶ様に、顔をあげチアキが答える。

最強の魔鋼騎士マギカナイトは、騎士に憧れる娘へ微笑みを向けて頷いた。

ミハル分隊長と共にオスマン軍の宿舎まで来たのです。


シャルの参謀さん達は素直に謝って下さいました。


そして、シャルの口からお願いされたのは・・・。


次回 震える心 Part4


君は王女の頼みを聴き遂げる事が出来るのか?その純真な瞳の色を観ながら。

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