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第1章 New Hope(新たなる希望)Act6震える心 Part2

シャルの元へ駆け寄るチアキ。


その瞳に写ったのは・・・・。

「シャルっ! シャルぅっ!」


砲手ハッチから身体を出して呼びかける。


「停車っ!総員救助にあたれっ!」


キューポラから小隊全車に向けて、ミリアが命じた。


オスマン戦車隊は、一両残らず撃破されていた。

燻り、煙を吐く車両の傍に脱出出来た搭乗員が座り込んでいる。


3両から飛び出したフェアリア戦車兵が駆け寄り、救助の手を差し伸べる。


「シャルっ!シャルっ無事なのっ?」


チアキはその中で紋章が描かれた一両に駆け上り、ハッチから声をかけた。


薄く煙を吐くハッチから覗き込んだチアキは眼を疑った。


「そんな・・・まさか・・・。」


煙の中、車内には。


「シャル?シャル?」


チアキが観た車内に居るのは、折り重なって倒れている搭乗員の姿。


倒れて身動きしないモノの一番奥に、シャルの姿もあった。


「そんな・・・嘘。」



挿絵(By みてみん)



眼を見開き動けなくなったチアキは、じっとシャルの姿を見ているだけだった。


「おいチアキ!

 早く中に居る者を外へ連れ出せ!」


砲塔上部からミリア准尉が命じた声に気付き、

弾かれる様に車内へ潜り込む。

その中は煙がたちこめ薄暗い。


「シャルっ!今、外へ出してあげる。」


必死の想いでシャルを担ぎ、側面ハッチから車外へ連れ出すと地面へ横たえる。


「うっうっ・・・シャルっ、シャル。」


王女に呼びかけ、溢れる涙で眼を潤ませるチアキに、


「他の搭乗員も車外へ脱出させるんだ、急げ。」


搭乗員を引きずり出すジラの大声が耳に入り、

チアキは再び車内へ駆け戻り、倒れている砲手に手を触れる。


「う・・・。」


その砲手は、まだ息をしていた。

苦しげな声を聞いたチアキが、


「しっかりして下さい。脱出しましょう。」


肩を貸して気付かせようとしながら、ハッチに導く。

ハッチの外に居るジラが砲手を受け取り車外に出す。


チアキとジラが搭乗員達を脱出させ終わった時は、

その車体が力尽き炎上を始める寸前の事だった。


「シャル・・・。」


ジラ達が他の搭乗員達に手当てを始めた時、チアキはシャルの横に立ち尽くしていた。


「ごめん・・・ごめんねシャル。護ってあげられなくて・・・。」


ポロポロ涙を零すチアキが屑折れる様に膝を着いてシャルに謝った。

その姿を見ているミリアがため息をついて、


「チアキ・・・想い込むのはいいが。脈は採ったのか?」


歴戦の准尉が、一目見ただけで生死を判別して言った。


「え!?」


車長の声に弾かれる様にシャルの脈を採り、


「あ!?」


続いて耳を胸に着けて確認する。


    <トクン トクン>


ー生きてる・・・シャルは生きてる。-


パッと顔を明るくしたチアキが、シャルの身体を抱き呼びかけた。


「シャル!シャル!しっかりしてっ。眼を開けて!」


何度か呼びかけ、気付かせようと身体を揺さ振ると、やがて。


「う・・・うーん。あれ?ここは?」


開いた眼はぼんやりとその人を見た。


「あれ?チアキが居る・・・。」


まだ焦点が定まらない瞳で周りを見回したシャルに、


「良かったシャル!気が付いたんだね。」


ギュッと抱締めた手に力を入れて、チアキが喜んだ。


「あ・・・チアキ!チアキなんだよね。夢じゃないんだね。」


挿絵(By みてみん)



漸く我に返ったシャルもチアキに抱き付いて涙を溢れさせる。

2人は暫し、抱き合って再会を喜び合った。


二人の喜ぶ姿を見ていたミリアが他の搭乗員達を見て、

その誰もが無事である事を知り、頷いた。


ーなるほど、オスマン魔鋼騎も大したものだな。

 撃破されても仲間は守ったと言う事か。-


頷くミリアが他の車両を見渡し、

部下達が脱出者を車体に載せて走り回っているのを確認する。


ーだが、このオスマン隊にどれ程の犠牲者が出たのかは解らない。

 何人の兵士がこの戦いに倒れたのかは・・・。-


戦場を見渡して、ミリアは思った。

闘いに散った者の事を。



____________


   <ギギィィ>


キャタピラが停止する。


見上げたミリアが敬礼し、


「中尉!脱出者は全員救助し終えました。総員37名です。」


キューポラに向って申告した。


「そう・・・御苦労様でした。で、戦死者は・・・?」


辛そうな声が返って来る。

その問いに、ミリアも辛く重い口調で応える。


「12名です。残念ですが・・・遺体は毛布にくるんであそこに。」


ミリアが指差す一箇所に、毛布に包まれたモノが12体あった。

キューポラから無言で車外へ降りたミハル中尉が、毛布へ近寄り右手を翳す。


「闘いに散りし、魂よ。

 どうか天界へ向かわれん事を。どうか平安を求められん事を。」


金色こんじきの光が、ミハル中尉から注がれる。

祈りを捧げたミハルが、空を見上げて魂を送った。

ミリアはその12体に対し、黙祷を捧げる。


魂を見送ったミハルが振り返り、


「ミリア。それであの達は?」

「はいセンパイ。あそこに居ます。」


ミリアが撃破された一両を差して教える。


「そう。では、一言告げておかないと・・・ね。」


厳しい瞳で二人の方を見たミハルが、ミリアを促して歩み寄った。

シャルの無事を喜んでいると、分隊長が歩み寄って来られたんです。


私とシャルに話された事とは。


次回 震える心 Part3


君は事実を受け止めなければならない。尊い犠牲を払ったのだから。

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