第1章 New Hope(新たなる希望)Act5希望の輝き Part4
シャルの前に現れたのは紋章を掲げた戦車。
碧き光に包まれたその車両はひたすらに突き進んでくる。
まるで古の騎士の様に。
人はその戦車を<魔鋼騎>と、呼ぶ・・・。
「そっか・・・光を与えられていたのか。」
ミハルは呟く。
「分隊長。ミリア准尉の車両が突入した模様!」
アルムがミハルに教える。
「よーし、急がないと。
アルム、マモルに言って。全力で応援に駆けつけるって。
全車全速力で友軍の援護に向う!」
ミハルは命令を下し、右手のブレスレットに眼を向けた。
その魔法石である宝玉は碧く輝き、力を放っていた。
「チアキ!目標、友軍を狙う先頭の車両!
距離2000、敵速20動標的!
この砲で射撃を行った事が無い為、カンで撃て!」
チアキに命じ、
「ニコ!敵の側面から、割って入れっ!」
操縦手に両軍の間へ、向うように指示を出す。
「了解!」
二人が同時に復唱し、
「射撃準備よしっ!」
ジラの復唱にチアキが答える。
「目標捕捉!撃ち方用意よしっ!」
キューポラで観測するミリアが叫ぶ。
「敵が此方に向いたら反転する。」
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「あの光が・・・碧き紋章が。チアキなんだ。」
シャルが見守るその車体は急に変わり、
碧く輝く新たな紋章を浮かべて向って来る。
真っ直ぐ此方へと。
「隊長っ、敵が目標を変えたようです。
此方へ向って来る魔鋼騎・・・いえ。
友軍の戦車へと方向を替えて行きます!」
車内から聴こえた叫びにシャルが<魔女兵団>の23両に目を向けると、
全車両が一斉に向きを替えたのが解った。
「チアキ!」
唯一両に23両の重戦車が襲い掛かろうとしていた。
「無理だよ、逃げて!」
シャルは突っ込んで来るチアキに向って届かぬ叫びをあげる。
「チアキっチアキっ!もういいから、ボクなんて放っておいて早く逃げて!」
シャルの見ている前で23両の重戦車が、隊列を解いて包み込むように機動する。
「ああっ、チアキ!」
シャルの瞳に写るのは絶望なのか。
その差し伸ばした手は、希望を握れるというのか。
「来たぞ!奴らはまんまとコッチに向きやがった。全車で・・・。」
ダニーが苦笑いを浮かべる。
「どうやら廻り込む手間が省けたようですね。」
ニコが旋回を停めて直進する。
「ふんっ。こっちが手強いとふんだか。」
ミリアが腕を組んで笑い、
「このままオスマン隊から離れさせるか。」
目測を続けながら命じる。
「ニコっ!射撃される前に、反転180度。
オスマン隊から敵を引き離すぞ!」
ミリアの作戦は成功したかに思えた。
「了解っ、反転します!」
ニコが急旋回させ、敵から離れるように機動する。
「敵っ、射撃始めました!」
ダニーが叫ぶ。
23両の敵が一斉に射撃を始めた。
「被弾回避!」
ミリアがニコに叫ぶ。
<ガン ガン ガン>
23両の弾が遠近処構わず降り注ぐ。
<ギインッ>
その中の一発が跳弾となって車体に当たった。
弾け跳んだ弾があらぬ方へ飛び去る。
「チアキっ、奴等をひきつけろ。撃つんだ!」
ミリアの命令で砲塔を旋回させたチアキが射撃する。
<バアンッ>
魔鋼弾が敵へと飛ぶ。
「チアキっ、弾が速い。今度は5シュトリッヒ手前を狙うんだ!」
チアキに命じたミリアが射撃の続行を命じる。
「了解!」
照準器の目盛をずらし、チアキは再び射撃する。
<バアンッ>
低伸する弾が敵重戦車の前面下部へと吸い込まれ・・・。
<ダダーンッ>
魔鋼弾が装甲を食い破った。
「貫通!いいぞチアキ。
この砲で重戦車の装甲が破れる事が解った。やれるぞ!」
ダニーが手を叩いて喜んだ。
「喜ぶのは早い!まだ22対1なんだぞ!」
ミリアが警戒を発し、
「敵の数が多過ぎる。
オスマン隊はまだ逃げ切れてないのか?」
じれったそうに、狙われていた車両に気を配った。
全車両がミリア達に向いて来てはいたが、
数両は未だにオスマン隊へ射撃を続行している。
「いかんな。
このまま逃げるだけでは奴の狙いがオスマン隊へ戻ってしまうぞ。」
ミリアの教えた通りだった。
<魔女兵団>のスピードは遅い。
ミリア達が乗るVK20が引き離して行くにつれて、
狙いをオスマン隊に戻す車両が現れてきた。
「車長!このまま離れては、シャル達に敵が向ってしまいます!戻りましょう!」
チアキが照準器で観測し、命令を求めてきた。
「うむ、しかし。
奴等の数が多過ぎる。交わし切れんぞ・・・射撃を。」
難しい判断を迫られたミリアが躊躇する。
「でも、このままではオスマン隊がシャルが。逃げ切れません。」
尚も食い下がるチアキの瞳は碧く輝く。
「チアキ・・・そうまでして護りたいのか?王女殿下を。」
ミリアがその瞳に問う。
「ミリア准尉。私が護りたいのは友達です。
王女殿下なんて関係ないのです。
私は大切な友を守りたいだけなのです。」
碧き光を放つ瞳がそう教えた。
真実の輝きを放って。
「ふっ。」
ミリアが眼を閉じ想い出す。
ーミハル先輩も同じ言葉を言っておられたな。
リーン姫に・・・私達に。-
「チアキ・・・お前の力を全て出せ。
魔鋼の力を全て使え。
それでも足りないなら、お前の力を全て使って見せろ。」
ミリアが覚悟を促す。
「はいっ!」
輝く瞳で応えるチアキに、ミリアが命じた。
「これより再突入を図る。
出来るだけ敵から友軍を引き離す!」
全員に対して決意を求めるミリアに、
「了解!」
4人が答えた。
私は決死の思いで闘いました。
魔法力が尽きようとしても。
只、シャルを護りたいが為に。
でも・・・。
次回 希望の輝き Part5
君は力の限り闘った、護るべき人を救う為に。だが・・・




