第1章 New Hope(新たなる希望)Act5希望の輝き Part3
オスマン戦車隊を救うべく戦闘に介入する第3小隊。
今、チアキはシャルを助ける為に闘うのだった。
3両の軽戦車が突入する・・・戦場へと。
「ワイバッハは右に、デラは左へ。私は真っ直ぐ突っ込む。
各車、APCR使用!戦闘始めっ!」
ミリアが隊内無線で命じる。
「ニコ!スピードを落とすな!
このスピードだけが頼りなんだからな。」
操縦手に全速を命じ、
「奴等の注意を此方に向けさせろっ!
射撃始めっ、撃ちぃー方、始めぇっ!」
射撃命令を下した。
「徹甲弾装填よしっ、射撃準備宜し!」
ジラが復唱する。
「目標っ、前方の友軍戦車隊を攻撃中の敵重戦車っ。
距離2500、敵速20。
動標的につき、15シュトリッヒ前方を狙え、撃てっ!」
ミリアの命令で、各個射撃が始まる。
2号車、3号車は左右に展開し、敵を撹乱させんと図る。
「目標捕捉!撃ちますっ!」
チアキは37ミリ砲を敵に向け、射撃を開始した。
十字線を15シュトリッヒ前方にずらし・・・
「撃っ!」
トリガーを引く。
<バシッ>
軽い射撃音と共に、徹甲弾<APCR>が、重戦車へと飛ぶ。
<ガンッ>
命中した弾は疵を残し、弾かれてしまう。
「よしっ、いいぞチアキ、命中した。
奴等が此方へ注意を逸らしてくれさえすればそれで良い。
<オスマン>戦車隊を逃すのが命令なのだから。」
ミリアがチアキに命じる。
「何としても奴等を妨害するんだ。
何が何でも<オスマン>戦車隊を護りきるんだ。」
チアキはミリアの命令に頷く。
「チアキ!どんどん撃てっ、弾は込めてやる。」
ジラが大声で呼びかける。
「撃ちますっ!撃っ!」
狙った重戦車へ徹甲弾を放つ。
車体下部に命中した弾が、転輪を吹き飛ばした。
「うん。一両斯座。上出来だぞチアキ!」
ダニーが観測報告を入れて、チアキを褒めた。
「駄目だっ、奴等は此方よりもあのオスマン魔鋼騎を狙い続けている。
何とかしなければ・・・。」
ミリアが叫ぶ。
ー<魔女兵団>の狙いは魔法使い。その魂が奴等の望み。
その魂を奪う為に闘っている・・・。-
誰かの言葉が甦る。
チアキとミリアは顔を見交わす。
その答えは同じ。
その答えは一つ。
「チアキ。やるぞ!」
「車長っ、シャルを救いましょう!」
2人は頷き合う。
「ダニーっ、分隊長を呼べっ、早く!」
ミリアは無線手に命じる。
ヘッドフォンを押えて、マイクロフォンを押すミリアが、
「ミハル中尉。
友軍を守る為に、魔鋼騎へとチェンジする事を許可して下さい。
事態は切迫しています。どうか許可を下さい!」
ミリアのヘッドフォンに分隊長の声が力強く返ってきた。
「ミリア。
あなたの判断を認めます。
チアキにあの娘を護らせてあげて。
あの娘に、希望を与えてあげて。」
ミハルの返事に頷き、ミリアは応える。
「はいっ先輩。必ず護ってみせます。」
そしてヘッドフォンから命令が聴こえる。
「3小隊長車、魔鋼騎へチェンジせよ。
敵から友軍を護れ。かかれっ!」
ミハルの命令がミリアを動かす。
「ジラッ!魔鋼機械発動っ!
総員耐ショックに備え。魔鋼騎戦に突入する!」
ミリアの命令で赤いボタンをジラが叩く。
<ブオンッ>
魔鋼機械の発動と共に、車内が揺れた。
「チアキ!魔鋼力を放て!あの車両を守る為に!」
ミリアの声にチアキはペンダントを胸元から出し、右手で掲げる。
「力よ!私にあの娘を護るための力を授けて下さい。
私の友達を救う力を、お貸し下さい!」
ペンダントが求めに応じるかのように輝く。
<ファサッ>
チアキの髪が碧く染まり、風も無いのに靡く。
見開かれた瞳が、碧く輝く。
<バシュッ>
魔鋼機械内のクリスタルが高速回転を続け、そして爆発する様に輝いた。
それは、力の奔流。
溢れる魔法力を車体内外へと伝える。
「こ・・・こいつは・・・。」
ニコが驚く。
「な・・・に?」
ダニーが眼を剥く。
「こんな・・・砲弾が・・・。」
ジラが砲弾ラックを指差す。
「こいつが・・・新たな力。新たなる希望ってやつか。」
ミリアがキューポラから車体前方を見て、唸った。
「これが・・・私の力?新しい車体?」
チアキの前に現れたのは、射撃照準器。
今迄の望遠式ではなく、両目で見るステレオ式の照準器の姿。
ふと、ペンダントに眼を向けると。
「あ・・・これは?この紋章は?」
それは今迄の<剣>を顕す紋章と共に盾が顕された新たな紋章。
ーシャルの指輪から力が・・・紋章が移ったから?これが私の力に?-
チアキは友から授かった力を感じる。
「シャル・・・絶対救ってみせるから。」
碧き瞳を見開いて、チアキは誓う。
「チアキ。これがお前の持つべき力だったという訳か。
これが先輩の求められておられた真の力という訳なんだな。」
ミリアが車体前方を見たまま教える。
その瞳に映る砲身を見詰めて。
「え?」
チアキは聞き直そうとしたが、ジラの声に停められる。
「魔鋼弾装填っ!これならマトモに闘えますよ。車長っ、チアキ!」
振り返ったチアキが、ジラの持つ砲弾に目を丸くした。
「57ミリ砲弾装填完了っ!」
左手の拳骨で、ジラが砲尾に叩き込んで叫ぶ。
「え?ええっ?」
チアキは驚き戸惑う。
ミリアはふっと息を吐き、車体を眺めてこう叫んだ。
「これより敵魔鋼騎に<フェアリア>の戦車がどれだけ強いかを教育してやろう。
このVK20・・・Ⅲ・Ⅳ号が重戦車に決して劣ってはいないと言う事を。」
ミリアが見た車体は、最早3号戦車では無かった。
軽く傾斜した前面装甲。
長く突き出た砲身。
ミリアはミハルと共に闘った”マチハ”を思い出し、力強く命じる。
「魔鋼騎戦、始めっ。
目標敵重戦車!戦車前へ!」
遂に魔鋼騎となった3号戦車。
私の力がこんなに?
戸惑いさえ覚えてしまいます。
けど。私は約束を守りたい。シャルを護りたいんです!
どんな苦しくても、辛くても。
次回 希望の輝き Part4
君は護るべき者を救い出す為に闘う。真実の輝きを放つ瞳で!




