表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/141

第1章 New Hope (新たなる希望)Act1少女が見たモノとはPart2

挿絵(By みてみん)


ある日の第3小隊1号車搭乗員達。



砂漠での防衛線は、新たな局面を迎えた。

「後退、後退しろっ!

 急いで建物の陰に逃げ込むんだっ!」


ミリアの叫びが、ニコの耳を打つ。


「はっ、はいっ!」


アクセルを踏み込み、復唱する操縦手のニコ兵長の目にも前方から迫る敵中戦車が、

次々と紫色の紋章を浮かばせていくのが写る。


「くそっ!只でさえやっかいな車体だというのに。

 これでは側面さえ、撃ち抜く事が出来ないかも知れんな」


悪態を吐いたミリア准尉が、砲手のチアキを観た。


ー まだ・・・早いのだが。

  中尉には止められていたけど。

  もう・・・やるしか道は残されていないのかもしれない 


銀髪を後で結ったチアキを見て考える。


ー チアキの能力ちからがどれ程のものか。

  中尉だけが解られておられる・・・私にはそれが解らない・・・知らされていない


チアキの後姿を見詰めて、考えを纏める。


ー だけど、今。

  私は決断しなければいけない。

  この街を護り仲間を護る為に。

  敵が私達を殺そうとするのならば・・・やるしか道は残されていない!


「すみません・・・分隊長。約束は守れません」


胸に手を当てて一言謝ったミリア准尉が、ジラに命じた。


「魔鋼機械を発動する。

 各員ショックに備えよ。総員、魔鋼騎戦用意!」


決然と命じたミリアに、


「魔鋼騎戦?

 車長っ!?本車はまだ一度も魔鋼機械を発動させた事がありませんが?」


驚いたジラが聴き返す。


「復唱はどうしたっ、ジラっ!

 魔鋼機械を発動させろっ!敵にみすみす殺られたいのか!」


ミリアの一喝が墜ちる。


「はっ、はいっ!魔鋼機械を発動させますっ!」


驚いたジラが砲尾に着いている赤いボタンを想いっきり押し込んだ。



     ブオンッ



低い作動音を響かせて、機械の中にある碧いクリスタルが高速回転を始める。


ー いよいよだな・・・チアキ


ミリアの瞳にチアキの姿が映る。


「チアキっ、掲げて求めろっ魔法のちからを。

     魔鋼の能力ちからを! 」


ミリアに命じられたチアキの身体がビクンと跳ね上がる。


「ミリア准尉・・・私に出来るでしょうか?」


照準器を見詰めたまま、チアキが訊く。


「チアキ。

 お前はこの為に志願したのではないのか?

 あの人に憧れ、目指してきたのではなかったのか?

 今、敵が迫る前でこそ、その能力を使うべきだろう?

 仲間を護る為にこそ、魔鋼のちからを放つべきだろう!?」


ゆっくりと諭す様に、ミリアが話す。


「その時が、今だと言う事だ、魔法使いチアキ」


ミリアが求めるのは魔鋼の力。

魔法力によって車体を進化させる魔法使いの能力ちから


「やります車長。私のちからで護る事が出来るのなら。

 この魔法石に願いを込めて!」


ミリアの求めに、チアキは応じる。


胸元から碧く輝くペンダントを出して。


ー お母さん・・・私・・・やってみる。

  ううん・・・護ってみせるから。

  大切な人達を。

  大切な友を・・・護ってみせるね!


挿絵(By みてみん)


ペンダントに誓いを込めて握り締めた。



その瞬間!


車体内砲弾ラック下に備えられてある魔鋼システムが唸りを挙げた。

機械内にあるクリスタルが碧き光を放ち、高速回転を始める。


  <汝の力は剣。そのちからてきを討つちからなり>


チアキの魔法石が輝きを増した。


  ファサッ


魔法使いが、自らの力を放つ時、聖なる力を放つ時。

その変化が現れる・・・そう。


ー 成ったか・・・力ある者に。高位の魔法使いへと・・・


ミリアの前に居るチアキが変わった。

碧き髪の魔法使いへと。


挿絵(By みてみん)


魔鋼システムに魔法使いが力を放つ為には、

自らの属性を秘めた魔法石が必要となる。


そして、魔法力が強力となれば、車体だけではなく自分の姿をも変える。


ミリアの瞳に映るチアキの姿はまさしく。


「碧き髪・・・そして」


照準器を睨むチアキの瞳は碧く輝いていた。


「車長っ!これがチアキのちから・・・魔鋼の力って事ですか?」


装填手のジラが叫ぶ。

自分の前にある砲尾が換わったのを見て。


「ああ・・・そうだ、ジラ。

 これが・・・魔鋼の力だ。

 碧き瞳の砲手が放つ、魔法の力なんだ」


ミリアが教える。

自分達が知る魔鋼の姿を。

魔法の戦車が持つ、真の姿を。


「皆、これより本車は魔鋼騎戦を行う。

 ダニーっ、2号車3号車を街の外まで後退させろ。

 本車のみで闘うと命じるんだ!、急げ!」


ミリアが無線手に命じ、


「ジラっ、弾種変換。魔鋼弾装填っ!」


装填手に次弾の変更を命じる。


「そして、チアキ。お前の力を試すぞ。

 この長くなった砲身が、どれ程の威力を秘めているかを」


碧き髪の魔法使いに命じた。


「はい。やります車長!」


照準器を睨んだままの砲手チアキが答える。


「魔鋼弾の装填完了っ!」


ジラが換気ファンのスイッチを押し、装填手安全スイッチを入れながら復唱した。


「魔鋼騎戦、用意宜し」


頷いたミリアが叫んだ。


「戦闘!対魔鋼騎戦っ!撃ち方始めっ!」


ミリアの碧き瞳は、敵魔鋼騎の正面装甲を捉えていた。






「後・・・どれ位掛かりそう、タルト?」


キューポラからの声が、ヘッドフォンを通して届く。


「そうですね、このままのスピードだと30分。いや、1時間位ですかね?」


操縦手のタルトが返事をする。


「そう・・・では、急ぐ事にしましょう。

 私達と2小隊1号車だけで。

 アルム・・・連絡をとってください」


無線手のアルムが、その命令に服し、


「了解。

 2小隊、小隊長車に連絡します」


無線機のスイッチを入れた。


6両の中戦車が砂煙を上げて目的地へと急ぐ中、

2両の指揮戦車がスピードを上げて、突出して行く。


その車体側面に描かれた紋章を碧く輝かせて。

魔鋼の力を使い、戦いを挑む第3小隊1号車。


今、少女は魔法使いとなり力を使う。

その力で仲間を守り、友を護れるのだと信じて。


次回 少女の見たモノとは Part3


君は砂漠の闘いに生き残れるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ