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第2章 熱砂の要塞 Act11 取り戻した人々 Part8

「ペットになれっ!ミハルぅ!」


目の前に居るリーンがそう言った・・・

「ペットになれっ、ミハルぅ!」


聞きなれた声、懐かしく想える台詞セリフ


 (( しーん ))


周りは情勢を伺うかの様に静まり返る。

思わず髪を押さえてしゃがみ込んでいたミハルの叫びが静寂を破った。


手をパタパタさせて皆に振り返り、子供のように大きな声で・・・


「ほらっ、見てみて!獣耳娘になってないよ私っ。

 やっぱりあのリーンはリーンと違う、別人だよっ!」


挿絵(By みてみん)


喜んでいるのか何なのか、判らないミハルに皆が呆れた。


「はいはい。これでこの人がリーン様と似ているけど別人だって事が証明されました。

 ・・・で、いい訳ですよね、センパイ」


ミリアが納得顔で言った時。


「いいや、そんな訳は無い筈だ」


シマダ教授が口を挟む。


「そうよ、私達はこの娘が皇女リーンであるとフェアリア王から直接告げられたのだから。

 この娘を救う為にヤポンから招かれたのだから」


教授に助け舟を出す母ミユキに対し、


「でもお父さんお母さん。ミリアさんの言った通り、

 リーン様だったら、あの言葉でミハル姉さんは獣耳娘になっていた筈なんだよ。

 この人がリーン様の訳がないんだよ」


ミリアの言葉が正しいと、マモルが応じた。


「ちょっと待て。

 さっきからおかしいと思っていたのだが。

 お前達の知っているリーン皇女とは誰の事なのだ?

 フェアリア皇女にリーン姫が2人居るとでも言うのか?」


教授が話を制して問いかけてくる。


「そんな話・・・聞いた事も無いよ。

 リーンはずっと私達の隊長で戦争の終わった今は、

 フェアリアでユーリ様の宰相として国に居る筈なんだから」


ミハルの言葉に、マモル達が相槌を打つ。


「あの・・・ミハル。

 それはもしかしてリーン皇女が双子だったとかいうオチではないのよね?」


ミユキが額を押さえて聞き返してくる。


「そんなのある訳無いよ。

 リーンにそっくりな姉妹が居るなんて話、聞いた事ないもの」


断言するミハルに周りの仲間達も頷いた。


「だとしたら・・・どういう訳なのかしら?」


皆が一様に小首を捻った時。


「ねぇねぇ、あたしとそっくりな娘の事を話しているのよね。

 だったらそのはきっとあのだよ。

 あたしとそっくりであたしの影みたいな

 ・・・神様のだよ!」


リーンの姿をした娘が教える。


「え?神様の娘って・・・どういう事なの?」


ミハルが毛玉に目配せしてから訳を訊く。


「うーんとね。

 あたしが<神の祠>に入ったら、神様が言われたんだ。

 <<そなたを目安にする>>って。

 あたしと同じ姿をした娘を造って、こう言ったんだ。

  <<そなたは選ばれし者。この娘に同じ生活を過ごさせ、

    学ばせるば良い・・・人の世とは如何なるモノであるかを>>・・・だって」


子供じみた話し方をするリーンが教えた事を、にわかには誰も信じる事が出来難かった。

だが、紅き毛玉、神たるルシファーの瞳がその娘を見詰め、輝きを放っていた。


「じゃあ、あなたこそが本当のリーン姫だと言い張るのね。

 私の大切なリーンが偽者だと言うのね・・・」


聴き咎めたミハルの言葉に首を振るリーン皇女が、


「いいえ。

 あのもあたしと同じリーン皇女。

 唯違うのは、あの娘には記憶が無いの。

 あたしと出会う前の記憶が・・・お母様と過ごせたあたしの幼き日の事が。

 何も覚えてはいないの・・・何も記憶されてはいないと云う事なの」


このリーン皇女が語った事に、ミハルが自分の記憶の扉を開く。


<そうだ・・・リーンは自分の母親の話を少ししかしてくれなかった。

 決して自分の事を話そうとはしてくれなかった・・・話したくても記憶が無かったからなの?>


思い当たる節は、いくらでもあった。


「そうだとしたら・・・リーンは。

 いいえ、私達の知るリーンはどうして今、フェアリア姫として王宮に居るの?

 ユーリ姫や皇王様は何故偽者のリーンをあなたと同じ名で呼び、

 あなたの代わりを務めさせているの?」


ミハルの質問にリーン皇女は少し考えてから・・・こう言った。


「それは、あの娘が神の娘だから。

 あたしが初めて連れて還った時、

 神の言葉が発せられたのよお父様に、ユーリ姉姫様に。


 <<この娘が目覚めし時、人の世は喪われる事になるやもしれん。

   そなた達の口からこの娘に真実を伝えてはならない。

   この娘自身が自らの事を知り、真実を探り当てねばならない。

   もし他人が教えて目覚めさせてしまえば・・・

   即刻、神の粛清が行われる事だろう。

   人の世は絶たれる事となるだろう・・・この娘によって>>


 ・・・そう教えられたの二人に・・・ね」


リーン皇女がはっきりと神の言葉を思い出して告げた。


「じゃあ・・・私達のリーンは・・・神の使いだと云うのね。

 私の様に・・・ルシちゃんみたいな神だというんだね?」


ミハルはリーン皇女の云う<神の娘>というフレーズに自らを重ね併せて訪ねたのだが、

リーン皇女は再び首を振り。


「あなたが神の使いですって?

 違うわよあの娘は・・・あなたとは全然違うのよ。

 あの娘は造られし者であり、機械の一部。

 この世界を創りし神たるモノの一部品に過ぎない。

 人の世を観察し、判断を下す裁判官・・・

 人が生き続けても良いかを判別する裁きの神たる部品・・・裁判神バリフィス。

 古来から伝わる人を滅ぼす神バリフィスが、

 あたしの姿を借りて現れたのよ。

 それが・・・あのリーンなの」


皆の前で、記憶に残る出来事を曝け出した。

もう一人のリーン皇女が教えた話は事実なのか?


紅き毛玉の蒼い瞳が鋭く見詰める。

皇女の言葉に何かを感じて・・・


一方その頃・・・

もう一人の魔法少女が帰還する。

傷付いた体を友に預けて・・・


次回 取り戻した人々 Part9

君は果した約束を喜ぶのか・・・それとも?決断の時が近付く。

故郷へ還る道を選び、友と別れる道を選ぶのかを・・・

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