表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/141

第2章 熱砂の要塞 Act11 取り戻した人々 Part6

<蒼き騎士>たるミハルが放つのは・・・


囚われし魂の解放。


遂に永き旅路の果て・・・宿願が果されようとしていた・・・

  (( ボウッ ))


翳された右手から紅き光が放たれる。


「それは?・・・その力が?神の力だというのか?」


シマダ教授の前で、ミハルが首を振った。


「違うよ父さん。

 この力は・・・力有る魔王だけが放つ事を許される・・・闇の力なんだ」


マモルがミハルを代弁して、父に教えた。


「魔王!?それではミハルは!?」


闇の化身たる魔王と聴いて、教授がミハルを見詰めた。


「私が魔王であった時に授けた力なのだシマダ教授。

 魂を呼び出し、肉体へと戻す・・・魔王ルシファーの能力ちから

 ミハルは闇の力をも己の能力ちからとしているのだ。

 クワイガンを地獄へ堕としたように・・・な」


ミハルの陰から現れた毛玉が教授に教えるのは、神と悪魔の両方の力を授かった娘の事。


「ミハルが?

 ミハルにそんな力が授けられていたとは・・・」


絶句するシマダ教授の前で、ミハルが術式スペルを詠唱し終わった。


魂回帰リ・スピリット


紅き光が2つのケースに注がれる。


  (( ブシュウッ ))


リーン皇女のケースが勝手に開き、中から緑の液体が溢れ出す。


「はぁっはぁっ、先ずはお母さんを気付かせて・・・」


リーン皇女に宿る魂を呼び起こしたミハルに、突如懐かしい人の声が呼びかけた。


「ミハル・・・ミハルなのね!?」


その声色こわいろは、確かにリーンのものだったが。

ミハルは直ぐに誰の意識が呼んだかが判り、


「お母さんっ!」


目の前に居るリーンに縋りついた。


挿絵(By みてみん)



「どうしたのミハル。そんな姿になって・・・まるで戦巫女いくさみこか、

 魔闘衣まとうい姿みたいね・・・」


日の本で、巫女を務めていたミユキの意識がリーンの口を使って尋ねた。


「お母さん?自分がどんな状況なのか解っていないでしょ?」


抱き合う2人の横からマモルが口を挟む。


「あら・・・マモルも。

 どうしたの兵隊さんみたいな姿をして。2人共学校はどうしたの?」


全く状況を理解していないミユキが、マモルの指す方に瞳を向けて小さく叫んだ。


「あ・・・鏡じゃないわよね。私がもう一人居る・・・んじゃあないわね。どういう事なの?」


ようやく自分の身体が別にある事を知ったミユキが周りを見回すと。


「あっ、あなたっ。実験はどうなったの?

 私の身体と魔法力を使った実験は?」


尋ねるリーンの姿をしたミユキに教授は、


「すまんミユキ、君の身体にリーン姫の魂が宿る筈だったのだが。

 闇の中から姫の魂が抜け出てくれなかったんだ」


実験の失敗を告げて頭を下げる教授へ、眼を見開いたミユキが続けて訊く。


「私の身体の中には誰の魂も宿って居ないというの?

 だったら・・・私を元へ戻してくれない?」


ミユキがリーンの姿から元へ戻らせてくれるように頼んだが、教授は首を振って断った。


「駄目だミユキ。

 今元へ戻ったら、病を完治していない君へと戻るだけなのだ。

 一度他の誰かが君に宿らなければ病は治らないのだよ。

 君の病は不治の病・・・闇に冒されし魂によって齎されたモノなのだから・・・」


ミユキの病気とリーンの魂を身体へと戻す事こそが、

2人を生き返らせる唯一の方法なのだと教授が教えた。


「そうなのお父さん?

 お母さんの病は闇の力で発症したって事なの?

 だとしたら私の能力ちからで治せるかもしれないよ」


2人の間に割って入ったミハルが、毛玉に振り向き尋ねる。


「そうだよね、ルシちゃん?」


ミハルの問い掛けに、頷いた毛玉が。


「それもあるが・・・先ず最初にその娘の魂は闇に囚われているのか?

 そもそもリーン皇女と言っていたが、どうして闇に魂を奪われたと言うのだ?

 それはいつの事なのだ?」


最初からずっとリーンの姿をしたミユキを観ていたルシファーが訳を尋ねる。


「私達がフェアリアへ招かれた本当の理由は・・・

 リーン皇女を救う為だった。

 もう10年も永きに渉って眠り続ける皇女を救って欲しいと、

 ヤポンに依頼してこられたのだよ・・・フェアリア皇王が。

 魂が奪われたのは10年前・・・替え玉となって・・・いや。

 人違いによるものだと聞かされたのだが。

 もう一人のリーンに似た娘と誤解されて魂を奪われたと教えられたのだよ」


教授がミハル達に教える。


「人違い?

 では本当の狙いは・・・似た人の方だったと?」


聴いていたミハルが口を挟む。


「ああ。リーン皇女を狙っていた訳ではないらしい。

 だからリーン皇女は今も生きている、只魂を抜き取られた状態で。

 その魂は今もどこかで存在している証なのだよ」


教授が本当のミユキが入っているケースを見詰めて答えた。


「ふむ。

 と、なると・・・どうやら呼び戻せるかも知れんなミハル。

 だが、お前の父が言う様に、リーンの魂を母親へ先ず一度宿らせてから。

 再び元へ戻すという面倒くさい方法を執らねばならんらしいが・・・」


神たるルシファーがミハルを促す。

黙って頷くミハルが右手をミユキの身体が入っているガラスケースへと向け。


「そうだねルシちゃん。

 このリーンと呼ばれる人の魂は闇の中にも居ない・・・そして天界へも行ってはいないもの。

 ね・・・そうでしょ、其処の!」


ガラスケースに言い放ったミハルの手先から、紅き光が放たれる・・・

一難さってまた一難。

ミハルの苦労は報われるのか?


目覚めた母と・・・リーンと呼ばれる娘。


呼び戻された魂は喜ぶ姉弟に何を告げるのか?


次回 取り戻した人々 Part7


君は願いを果した・・・永き旅路の果てに。だが、新たな問題が沸き起ころうとしていた・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ