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第2章 熱砂の要塞 Act11 取り戻した人々 Part5

ぐわぁっ!?梅雨明けかよ!?


挿絵(By みてみん)


轟音が響き渡る。


ミハル達の居るラボの中に2両の戦車が突入して来たのだ。


  (( ガラ ガラ ガラ ))


室内に飛び込んで来たMHT-7から、マモルとミリアが降り立つ。


「マモル、ミリア!」


振り返ったミハルに2人が駆け寄ると、


「ミハル姉、遅れてごめん!」

「センパイっ、ご無事でしたか!?」


2人の声に頷いたミハルが、


「2人共御苦労様。動力源を停めてくれてありがとう」


2人を労う。


「クワイガン・・・真総統は?」


マモルの問いにミハルが右手のブレスレットを見せて、


「地獄に堕ちたわ。邪な者達の末路と同じく・・・ね」


自分が倒した事を教えた。


「そっか・・・僕も一緒に居たかったけど。ミハル姉こそ御苦労様だったね」


苦笑いを浮かべてミハルを観たマモルの顔が強張る。

その視線の先に居る者に気付いて。


「父さん・・・」


搾り出された声に、想いが宿る。


「マモルか・・・一年も経つとこうも見違える程逞しくなるものなのだな」


シマダ教授が懐かしげに口を開くと、


「何を言っているんだ父さん。

 僕とはロッソアで会っているじゃないか!

 僕をマリーベルの戦車に乗せる為に洗脳したじゃないか!」


怒りに駆られて叫ぶマモル。


「マモルとロッソアで?マリーベル?

 誰の事を言っているんだマモル。

 確かマリーベルとか言う軽戦車が存在していた事は覚えているが・・・」


教授が見に覚えがないと断るとマモルの怒りが爆発する。


「だって僕は覚えているんだ。

 父さんが僕をマリーベルの砲手にした事を。

 僕を殺戮者として乗り込ませたのをね!」


叫ぶマモルに、暫く考えていた教授が訊く。


「マモル・・・軽戦車に連れ込まれた者がおまえだったのか?

 私は闇の力を持つ将軍の元で研究させられていたのが、魂と戦車の一体化なのだ。

 試作した軽戦車に一人の補助搭乗員を乗せる案を出していたのだが、

 それにお前が乗せられただと?

 それに私はマモルとは会ってはいないのだが・・・あの顔を隠されていた者がマモルだったのか?」


マモルに訊くシマダ教授が思い出したかのように頭を押える。


「そうだよ父さん。

 その時に会っているんだよ僕達は・・・って。

 知らなかったの・・・僕だった事を?」


頷いたシマダ教授の顔は青ざめていた。


「だとしても・・・僕ではなかったとしても。

 父さんは闇の者に力を貸していた事には変わらない・・・そうなんだね?」


悲しげに訊くマモルが、宝珠を着けた右手を翳す。


「待ってマモル!

 その訳はこのガラスケースの中に居る人達にあるの。観てみなさい」


父子の対峙に口を挟んだミハルの声に、傍にあったケースを観たマモルが口を噤んだ。


「此処に居るのはお母さん。そして・・・」


ミハルの見詰めるケースを見たマモルが叫ぶ。


「リ・・・リーン皇女?

 リーン様が何故此処に?」


マモルも知る皇女リーンの姿に驚きの声をあげた。


「マモル?マモルもこの娘がリーン皇女だと知っているのか・・・なぜだ?」


シマダ教授が姉弟に訳を尋ねる。


「リーン皇女様と僕達は同じ部隊に属してロッソアと戦った仲なんだ」


ケースを観たまま父に答えるマモルに、


「そんな事は有り得ない。

 この娘はずっと眠っているのだから。

 もう10年もの間、魂を何所かに置いて来てしまっているのだから。

 そして今はミユキがこの娘の中に宿っているのだ」

シマダ教授が、もう一つのケースを指して、


「ミユキは魂が抜け出した状態であそこに居る。一年前のあの日からずっと・・・」


ミハルとマモルが教えられたガラスケースの中を覗き込むと。


「お母さん!」


2人は同時に呼びかける。


「ミハル、マモル。お母さんはこの娘を救う為に魔力を使ってくれていた。

 何としても闇から救い出して元の肉体へ戻そうとして。

 だが、巫女の力を持ってしても闇の中からリーン皇女の魂を救い出す事は出来なかった。

 ・・・ある日、聖教会教祖を名乗るクワイガンが現れた。

 その男が持って来た本によると、魂の変換には闇の力が必要だと記してあったのだ。

 私は望みを賭けて実験したのだが、結果は御覧の通り。

 失敗に終った・・・ミユキの魂までもが喪われる事となったのだ。

 今にして想えば、罠であったのかもしれない」


シマダ教授がケースを撫でて後悔していた。


「ミユキの肉体は闇に冒され、病と闘っていた。

 ミハルも覚えているだろう?

 ミユキが日に日にやつれていっていた事を。

 ミユキはそれでも諦めず、この娘を救おうと努力してくれた。

 私の技術を信じて・・・だから私はミユキをこの手で救わねばならない。

 どんな事をしてでも・・・」


シマダ教授がミハルに向き尋ねる。


「ミハル・・・イブリスとか言う魔王から聴いたのだが。

 お前は神の力を授かったのだそうだな。

 その力を貸してはくれないか?

 ミユキとリーン皇女を救ってはくれないだろうか?」


父に願われたミハルは、力強く頷く。


「勿論そのつもりだよお父さん。 

 でも神の力をもってしても魂の変換は出来ないの。

 神の力では魂を闇から救えないんだよ」


ミハルの横でマモルも頷く。


「でも・・・ね。

 私には出来るんだ・・・お母さんとリーンを救う事が。

 <蒼き騎士>を名乗る私には・・・魂を戻す力があるの」


頷くマモルに目配せしたミハルの右手がケースに向けられた。

ミハルの手から紅き光が放たれる。


闇の力をも授けられし<蒼き騎士>ミハルの術で解き放たれるのは?


その姿で話しかけられると・・・ちょっと・・・違和感が。


次回 取り戻した人々 Part6

君は遂に話し掛ける時を迎えるのだった・・・のだが。

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