第2章 熱砂の要塞 Act10 熱砂の要塞 Part2
「みんな!力を貸して!」
振り向いたミハルが頼んでくる。
「これから邪な者を倒そうと思うの。
それには皆の力を貸して欲しいんだ!」
6人全員に向かってミハルが話す。
「我々2両でこの要塞を破壊しよう。
それには中心部に入り込んで要所を壊すのが良いと想うんだ」
頷く6人に続けて話すミハルが、
「アンネさん、詳しい情報は解らない?」
先ずアンネに尋ねると、
「残念ですが・・・」
首を振って断る。
「じゃあ、リン。あなたは知らないかな?」
邪な魔王に乗っ取られていたリンに尋ねる。
「はい・・・詳しくは。
でも、確かに中心部という物があって、
そこから凄い魔力が溢れ出ていたと覚えています。多分それが・・・」
「中心部・・・って奴だよね」
話に頷いたミハルが決める。
「では、2両でその中心部とやらに向かいます。
どんな仕掛けがあるか解らないけど」
6人へ命じるミハルに、マモルが訊く。
「ミハル姉、ここに真総統が居るのなら・・・父さん母さんは?」
未だ何の手懸りさえも掴めていない両親を想って弟が訊いた。
「判らない・・・けど。
真総統が居るのなら、ここにお父さんお母さんが閉じ込められているかもしれない。
それもクワイガンを捕らえられれば解るでしょう」
叶えたい思いを心に秘めて、マモルに告げる。
「そうだよ、クワイガンさえ捕らえられれば、全てが終えられる・・・よね」
ミハルに力強く頷いたマモルが促した。
「じゃあ、真総統をやっつけに行こう!」
ミハルがみんなを見渡して気合を込めた。
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「な・・・んだと!?
イブリスが倒されてしまっただと?」
真総統が悪魔からの報告を受けてたじろいだ。
「あ・・・あの小娘が?魔王を倒したというのか?」
動揺するクワイガンが悪魔達に命じる。
「あの小娘を始末しろ!
もう生かして捕らえずとも善い。
我が要塞をもってオスマン帝都を壊滅させ、無数の魂を手にするまでだ。
この熱砂の要塞で、な」
クワイガンの命に従う下級悪魔達が、すぐさまミハル達へと向かった。
「うむむ。ここまで手強くなるとは・・・万が一に備えて帝都へ撃ち込まねば」
焦りを覚えたクワイガンが巨砲に眼を向ける。
仰角を執る事が叶わなくなった巨砲に眼を向け、
「この角度で必中させるには、今少し進まねばならぬ。
射程に入るまで前進させねば届かぬ」
仰角をそれ以上上げれない巨砲に苛立ちの声をあげた。
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「友よ、どうやらお客さんのようだぞ」
紅き毛玉が注意を促してきた。
「お客さんって・・・ああ、邪な者達が襲ってくるんだね」
ルシファーの瞳が警戒色を濃くして話すのを直ぐに理解したミハルは、
「相手がそう来るなら・・・ルシちゃん、2人でみんなを護ろう!」
キューポラのハッチから身を躍らせた。
「ミハル先輩!」
ミリアが装填手ハッチから呼び止める。
「ミリア!あなたが指揮を執って。
私居は邪な者と闘わねばならないから・・・お願い!」
毛玉と共に飛び出したミハルが振り返って頼んだ。
「ですが、ミハル先輩一人を残して・・・」
心配するミリアが、キューポラに出て来たマモルの声で口を噤む。
「ミハル姉!後で絶対合流してよ!」
ミリアはマモルの顔に心配する表情が浮んでいない事に気付き、視線の先に居るミハルを観た。
「ああ・・・センパイが。・・・微笑んでいる・・・」
マモルに頷き、微笑むミハルは蒼き瞳を輝かせていた。
「頼んだわよミリア、マモル。
リンと伴に目標を破壊して!」
邪な者に向かって歩むミハルにミリアが了解する。
「はいセンパイ!任せて下さい。
誓ってやり遂げてみせますから。
この要塞の動力源を破壊してみせますからっ!」
ミリアは指を立てて合図を送る。
「アルムっ、リン車に報告。これよりミリアが指揮を執りますって!」
マイクロフォンを押し、無線手に命じると、
「出発!急いで中心部へと向え!」
続いて前進を下した。
MHT-7がIs-3に続行して前進を始めた時、
ミリアはキューポラでじっと後方に離れて行く穴を見詰めているマモルの横顔を見た。
それは先程とは全く違う。
姉を想い、心配する男の子がみせた・・・素顔だった。
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「チアキ・・・」
ラミルが呟く。
去り往くMMT-9を見詰めて。
巨大な鋼の城にたった一両で挑むチアキに対して、その名を呼ぶ事しか出来ない自分が歯痒かった。
「死ぬなよ・・・チアキ」
砂煙を上げて、決死の突撃を敢行するMMT-9に4人が敬礼を贈る。
砂嵐に煙る巨大な鋼の城は、巨砲の射撃可能距離まで進み続ける。
その距離・・・僅か後1キロメートル・・・・
突き進む鋼の要塞。
立ちはだかるはMMT-9一両のみ・・・
チアキはたった一人の戦場で巨大な城に挑もうとしていた。
その要塞の中では、神の魔法衣を纏った一人の少女が闇と対峙していた・・・
次回 熱砂の要塞 Part3
君は光を纏う蒼の騎士。君は神の力を宿す光の騎士!