第2章 熱砂の要塞 Act8 砂漠の要塞 Part8
その光は誰のもの?
紅き毛玉・・・再び!
それは轟音と同時だった・・・
何か重々しい射撃音が鳴り響いた時。
ミハルに伸ばされた闇の魔王ルシファーの手が、魂を奪おうとした瞬間。
((ビシッ))
何かが・・・魔王の手を弾いたのだった。
「ぐおっ!?」
魔王の驚きが叫びとなる。
弾かれた魔王の手が、消し飛んでいた。
魔王の手を弾き飛ばした何かとは・・・
「誰だ!余を<闇のルシファー>と知っての事か!」
ルシファーが消し去られた手を元に復元し、邪魔を企てた者に怒りを向ける。
「・・・そうか。
お前が<闇のルシファー>と名乗る馬鹿者か。
私の大切な者に危害を加える大馬鹿者なのだな・・・」
全く同じ声色が、ルシファーに向けられる。
「えっ!?」
ルシファーとミハルは耳を疑った。
ルシファーは馬鹿者扱いされた事に。
ミハルはその声に聞覚えがあったから。
「まさか!?」
2人は同時に叫んだ。
「よう・・・偽者。
よくも私の姿を盗んだな・・・よくも私のミハエルを喰らったな!」
闇の中に浮ぶ紅き毛玉。
フワフワと浮ぶその姿は・・・
「ル・・・ルシファー!?」
「ル・・・ルシちゃんっ!?」
ルシファーが自らの名を呼ぶ。
それは自分が<ルシファー>ではない証。
「どこの魔王かは知らないが。
我が名を騙るなんぞ・・・百万年早い!」
紅き毛玉は怒りの表情で偽者を睨んだ。
「ル・・・ルシちゃん・・・ルシちゃんルシちゃん」
こみ上げて来る涙をそのままに、ミハルは懐かしい友の名を呼び続ける。
「こらっミハル。私を毛玉毛玉と呼ぶなよ。
折角再登場したのに、また毛玉になってしまったじゃないか」
怒りの表情を和らげた毛玉が優しく笑った。
「ああ・・・やっぱり私のルシちゃんだ。私の・・・」
両手を拡げて毛玉を求めるミハルに、毛玉がその胸に飛び込み。
「言うなミハル。今は言ってくれるな・・・頼むから」
<愛>の言葉を停めた。
「うん・・・」
少し寂しそうな顔をしたミハルが毛玉の変化に気付いた。
「あれ?何この金色の輪っか?」
毛玉の頭上にある金色に光る輪を観て尋ねると。
「ああ。私も今は<神>に戻ったのでな、一応」
「・・・」
ルシファーの言葉に声を失うミハル。
「・・・そういう事だ」
「・・・はい?」
全然解っていない・・・ミハル。
「むぅ・・・説明は後だ。先にミハエルを奪い返すぞ!」
「・・・はいっ!」
今度は解ったみたいな・・・ミハル。
<天のルシファー>が、ミハルと共に<闇のルシファー>に向かって構える。
「よっくも我が名を騙り、ミハエルを騙したな。
それにミハルに危害を加えんとした事。なさに万死に値するっ!」
毛玉が<碧き瞳>で睨みつける。
「き・・・貴様。
どうやって戻れたのだ?ベルゼブブと共に消えた筈ではなかったのか!?」
目の前に居る偽魔王ルシファーが怯える。
「人の姿を借る程度の魔王如きに教える必要は無い。
さっさとミハエルの魂を解放して消えてしまえ!」
<天の輪っか>を冠した、毛玉の周りに金色の粒が舞う。
「ま・・・まさか!?その力は!」
怯えるルシファーの偽者が眼を剝く。
「言った筈だ。私は<神>に戻ったと。お前程度の魔王では役不足だ!」
荒れ狂う金色の粒が一点に集約され、
「ミハエルを還して貰うぞ、ニセ者!」
毛玉が力を放つ。
((ビシャッ))
有無を言わさぬ極大魔力が偽者を跡形も無く消し去った。
余りにも強大な力に、ミハルは何も出来ず固唾を呑むばかりだった。
「しゅっ・・・ごっおーいぃ!」
やっと出た声は裏返っていたのだが。
偽ルシファーが消え去った跡に、光の粒が残されていた。
紅き毛玉はその粒に近寄ると。
「待たせてごめんよミハエル。助けに来たよ」
優しく声をかける。
光の粒が震える様に答えを返す。
「ああ・・・ルシファー。私の方こそごめんなさい。
あんな偽者に騙されてしまうなんて・・・赦して・・・許して」
震える金色の粒から涙の雫が零れ落ちる。
「ああ・・・許す、赦すから。私の元に還っておくれ」
毛玉が粒と一つになる。
「ああ・・・温かい。
ルシファー・・・あなたは<神>になれたのね・・・私の御主人様に。
天の使徒たる私の主と、なれたのね」
歓喜の声がミハエルから洩れる。
「ミハエル・・・天界へ戻り、体を休めるのだ。
力が戻ったら、いつでも私の元へおいで。・・・いいかい?」
毛玉がミハエルの魂を天へと送る。
「うん・・・ルシファーの元へ来るから。
ちょっとだけ待っててね、直ぐにあなたの元へ来るから・・・ね」
天へと昇るミハエルが喜びの声を贈って来たのを、
「大丈夫。私は地上界でやらねばならない事があるから。
ミハルと共に待っているよ」
救い出されたミハエルの魂は、天界へと昇る。
が。
最後の瞬間、ミハルに叫んだ。
「ルシファーに手を出したら・・・オシオキしちゃるからなぁ、ミハルぅ!」
声が聴こえたルシファーとミハルが押し黙った・・・・
再びミハルの前に現れた毛玉。
神となったルシファーがミハルと再開を遂げる。
砂漠の要塞戦は新たな展開を迎える!
次回 Act9 真の姿 Part1
君はたった一瞬のチャンスを逃がさない!
目標要塞砲っ撃てぇ!頑張れよ、隠れた主人公チアキ・・・