表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/141

第2章 熱砂の要塞 Act8 砂漠の要塞 Part4

その弾は・・・

リンの乗るIs-3に命中した。


ミハルは<闇騎士リン>を倒そうというのか?

果して、真実の狙いとは・・・

「ありがとう・・・ミハル」


リンは<闇騎士>から解き放たれる。

それは魔王イブリスからも解放された事を意味する。


  ((ガガアアァン))


MHT-7の砲弾が砲口に突き刺さり弾けた。

誘爆した砲尾に填められた砲弾の破壊波が噴き出し、車内に衝撃と熱風を撒き散らす。


イブリスは寄り代としていた<闇騎士リン>から逃げ出す。

クワイガンによって闇へと染められた身体が解放される。


<ああ・・・やっと。自分に戻れた・・・死ぬ間際になって・・・>


挿絵(By みてみん)



リンが身体の戒めを解かれ、喜びの一瞬を迎えられたと想った。


「さよなら・・・マジカ。ごめんなさい、ミハル・・・みんな」


瞳を閉じて意識を失う時、光が告げた。


<リン・・・まだよ。諦めては駄目!>


光はリンに諦めるなと言った。


「諦めるなって?・・・もう無理よ。このまま逝かせて・・・死の国に>


光に答えてリンは目を瞑る。


<あなたは天の力を授かりし巫女ではなかったの?

 これ位の事で死を選ぶなんて事・・・許さないんだからっ!>


その声はランネだったのか、それとも?


「ミハル?私を呼び止めるのは天使ミハルなの?」


光の中から手を差し伸ばして来たのは・・・


「ランネ!」


闇の中で共に苦しめられ続けてきた大切な友が、再び手を差し伸ばしてくる。


<そうだよリン。

 私も解放されたの、闇からね。

 やっと自由を取り戻せた・・・この魂が>


光の中に居るランネの魂が、笑いかけてくる。


「でもランネ。私はもう、ここで死ぬ事になったの・・・ミハルに撃たれて」


苦笑いを返すリンにランネは首を振る。


<リン・・・戦車兵だった頃を思い出しなさい。

 敵の搭乗員を殺さずに倒すにはどうすれば良かったかを。

 ミハルさんが手本を示してくれたでしょ。

 砲を壊してしまえばもう戦えない。

 今、この車両は砲尾を壊された・・・熱波も噴き出して来た。

 リンは気絶する事になるかもしれない・・・けど>


ランネの教えにリンは気付く。


「そうか!換気ファンが廻っている限り、ガスは抜ける。

 床に近い処に臥せていれば酸欠にはならない・・・生き残る事が可能なんだ!」


炎は一瞬だけだった。

頑丈な砲尾が誘爆で壊れ、そこから熱波とガスが噴きだしただけ・・・そう。

これがミハルの狙った本当の理由。

砲手席に座っていると確信したミハルが、唯一の狙いを外す訳は無かった。


砲口で弾けた魔鋼弾が装填された砲弾を砲身内で誘爆させる。

その破壊波は砲を壊し、通常自車両の砲弾の誘爆では破壊されない砲尾を断ち割り、

僅かな熱波と煙を車内に噴き出させた。


砲弾が命中した時、魔王イブリスはリンが吹飛ぶと思い、巻き添えを嫌って逃げ出した。

クワイガンの呪いもまた、闇と共に消え去った。


天使ミハルの弾は、リンを解放する事に成功したのだ。


床に倒れこむ時、リンが呟いた。


「ありがとう・・・ミハル。神の使徒・・・」


気を失う瞬間、光の中からランネの声が聴こえた。


<リン・・・もう<闇騎士>になんてさせられるんじゃないよ>


光の声に頷いたリンの意識が失われた。





「Is-3沈黙!」


タルトの叫びを聴くまでもなく、ミハルは知っていた。


「どうやらやれたようだね、ミハル姉」


キューポラからマモルの声が流れる。


「そうね・・・闇は消えたから。少なくとも第1の目的は果せそうね」


砲手席で照準器を見詰めたままのミハルが厳しい表情で言った。


「リンは・・・あの娘と共に居る。

 マモル、ミリア直ぐにIs-3から彼女を救出して来て。

 私は<奴>と対峙するから」


ミハルの命令にマモルもミリアも驚く。


「リンを救出するのは解ったけど・・・奴って、どいつの事なんだい姉さん?」


ハッチを開けつつミハルに訊くマモルに、


「奴・・・ルシファーの・・・ことだよ」


ミハルの言葉にマモルが声を詰まらせる。

自分達が知るミハルはルシファーの事を、その名で呼んだ事が殆ど無かったから。

その名を怒りの表情で呼んだ事なんてなかったから。


「あの・・・ルシちゃんが?

 どうして姉さんは対峙しなくちゃいけないの?」


ミハエルを闇に貶め、魂を喰らった事を知らないマモルが尋ねる。


「私の知っているルシちゃんはもう居ない・・・居るのは闇の魔王ルシファーだから・・・」


マモルに答えたミハルが自分の魔法衣を握り、


「私はルシファーを・・・闇の魔王ルシファーを滅ぼさなければならない・・・」


自分に言い聞かせる様に呟く。


「ミハル先輩・・・」

「ミハル姉」


ミリアもマモルも、照準器を睨み付けているミハルの表情に戸惑う。

その顔には戸惑いや怒りといったものではなく、

只・・・悲しみに満ちていた。


「リンを頼むわよ、2人共」


何かを決心したかの様に立ち上がったミハルが、2人に続いて車外へ出ると。


「私の身にもし、何かおかしな事が起きたら・・・

 構わずにリンを連れて脱出しなさい・・・解ったわね!」


マモルとミリアの返事も聞かず、ミハルが走り出した。


闇のルシファーに向って・・・

闇から解放されたリン。


オスマン派遣隊先遣隊の任務の一つは果されようとしていたんだが。


ミハルは宿命に抗おうとしていた。

そう・・・魔王に戻ったルシファーと対峙して・・・


次回 Part5

君は信じていた、その魂はきっと自分の事を思い出してくれるものと・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ