第2章 熱砂の要塞 Act8 砂漠の要塞 Part3
現れた魔王ルシファーに戸惑うイブリス
嗾けられたイブリスは己が手でミハルに・・・
「ま・・・さか。ルシファー?」
現れたもう一人の魔王に、イブリスは声を詰まらせる。
「イブリスよ、ミハルを殺す事は許されん。
もし、手を出すと言うのなら。
このルシファーがお前を消し去るまで」
紅き瞳の魔王ルシファーが呟く様に言い放った。
「わっ、解っておるわ。
この娘を生贄にせねばならん事位!」
同じ魔王とはいえ、イブリスはルシファーに恐怖を覚える。
「そうか。ならばさっさと生け捕りにしたらどうなのだ、イブリスよ」
ルシファーがすっと手を差し出しイブリスに向ける。
「解っておると言った筈だ。
見ておれ、こうなれば我が直接あの娘を捕らえてやるわ!」
<闇騎士リン>の姿で言い返すと、イブリスは砲塔に潜り込む。
「ミハルはこのリンを奪い返す為に此処へ来たのだ。
我が宿っていると解っていても撃つ事は出来まい!」
砲塔を動かしながら叫び、照準をMHT-7に併せ・・・られないっ!
「ううむ・・・これはどうやって使えばいいのか。・・・解らんっ!」
やっぱり・・・マヌケな魔王はどこまでいってもマヌケだった。
「くそっ、こうなれば・・・このリンの魂を呼び戻し、相手をさせねばなるまい」
イブリスはリンの魂を解放し、ミハルと闘わせる事に決めた。
「さあ、寄り代。あの天使ミハルと闘うのだ。奴を動けなくしろ!」
リンの身体から離れたイブリスが命じた。
瞳を閉じたリンが再び開いた時。
その瞳は、青と金色に変わっていた。
「やっと・・・チャンスが来たのねランネ」
ポツリと呟いたリンの瞳がMHT-7に向けられる。
「リンが乗った車両が動いた!」
マイクロフォンを通してマモルの耳にミハルの叫びが聴こえる。
「なんだって!やるつもりなんだな!」
急いで砲塔を旋回させて対応するマモルに。
「待ってマモル!
撃つならリンが疵付かない処を狙って!」
ミハルがリンの身体を想って指示を出したが。
「無理だよ姉さんっ、出来っこ無いよ。どうしても貫通してしまうから」
マモルが照準を併せながら叫び返す。
((フワッ))
マモルの手に、ミハルの右手が重なった。
「姉さん?」
振り返ると優しい笑顔のミハルが居た。
「そっか・・・替わるよ」
その顔の意味が判るマモルが、席を立つ。
「ごめんねマモル。一発だけ撃たせて」
砲手席に座ったミハルに、マモルもミリアも頷いた。
「さて・・・ミハル先輩の射撃に託しますかね。・・・装填完了!」
ミリアが親指を立てる。
「姉さんの射撃を見せて貰うよ」
キューポラに揚がったマモルがレンズを通してIs-3に視線を併せる。
<イブリス・・・いいえリン。
あなたを救う為に此処まで来たの。このチャンスを逃さない>
戦車戦となった今、戦車の砲手席に居るであろう<闇騎士リン>に
正面きっての闘いを挑めた事に感謝したミハルが・・・
<砲手席に居る事は間違いない。
魔王イブリスが砲手席で射撃しようとしているのは解る。
只・・・リンの身体を操っているのかは解らないけど>
ミハルの瞳にMHT-7に照準を併せたIs-3の砲向が映る。
<少し・・・痛いかもしれないけど。
少し、気を失うかもしれないけど・・・我慢してね、リン」
照準を併せたミハルの指がトリガーに掛かった。
「ミハル・・・お願いします。
私を・・・この魔王に囚われた身体を噴き飛ばして」
リンは自我を保てる間に、全てを終らせようと願った。
<どうせ、もう。
イブリスは私から離れようとしない・・・
闇の中でランネと共に穢されて堕とされてしまうくらいなら・・・
もうこの身体ごと噴き飛ばして欲しい。ミハルの手で・・・>
イブリスから身体を取り戻したリンが照準を併せたまま、トリガーに指を掛けて動かずに居た。
<どうした<闇騎士リン>、早く撃たぬか!
撃たぬとあらば我がその指を動かしてやるぞ>
イブリスが脅してくる。
「私は・・・私の最期はミハルに討って貰うから。
この身体が消し飛んでしまえば、お前も寄り代を失う。ざまあみろ!」
リンの叫びにイブリスが怒り狂う。
「なんだと!この魔王に抗うというのか娘!」
「今更遅い!天使ミハルに滅ぼされるがいいのよ!」
リンが勝ち誇り魔王を嘲る。
「こ、小娘がぁ!」
魔王イブリスがリンの身体を再び乗っ取った時。
ミハルが叫びと共に指を弾いた。
「イブリスっ!リンから離れなさいっ!」
((ズッドオオォムッ))
MHT-7の10センチ魔鋼弾が、Is-3に放たれた。
ミハルの指が引鉄を弾く。
その弾はどんな結果を招くというのか!?
次回 Part4
君は友を救う事が出来るのか?それとも・・・