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第2章 熱砂の要塞 Act7 現れる砦 Part1

遂に雌雄を決する闘いへと発展する事となった砂漠の闘い。


ミハルは全てを賭けて闘う事を決意した・・・

 砂漠での本当の戦いの幕が切って落とされた。


フェアリア派遣隊は、

ミハル達が乗るMHT-7型重戦車一両の他はパンターⅡ型改のMMT-9中戦車一両。

その他は全てパンターかパンター改。

その数16両。

全ての車両を合わせても、18両に過ぎない。


それに比べて<魔女兵団>の車両は主力にエギリスのM4改ファイヤフライが20両。

他にも75ミリ砲を備えたシャーマンM4戦車12両、重戦車はロッソアのIs-3を含む12両という布陣で対抗してきた。


ここにオスマンでの双方が雌雄を決する大戦車戦が始まる事となった。





「こちらフェアリア派遣隊。

 先遣隊分隊長シマダ中尉に命令を伝達する」


アルムが無線を解放し、皆の耳に入る様にはからった。


「命令。オスマン帝国王女シャルレット殿下、ならびにマジカ大使より。

 <敵本陣、補給基地を撃破されたし。道案内を送る>

 との、命が下された。

 シマダ中尉は指揮下のMHT-7にて戦闘しつつこれを遂行せよ」


部隊指揮官の命令を受けた車内で、


「とうとう来たか!本当の決戦だね」


マモルが頷く。


「いよいよ<魔女兵団>を叩き潰す時が来ましたね」


ミリアも砲弾を叩いて力を込めた。


「え?私は聴いてなかったけど。そうなの?」


一人緊張感の無い声で、皆に訊くミハルに。


「姉さん・・・そうなのっ!」


「ミハル先輩・・・さっきの勢いのままでいてください」


マモルもミリアも拍子抜けしたようにミハルに言い返した。


「は・・・ひ・・・すみません」


2人に怒鳴られて小さくなったミハルは謝る。


「アイツだよ姉さん。

 自力で闇から抜け出した魂が宿るIs-3。アンネさんが乗ってきた車両だよ!」


マモルが忘れているのかと教えると。


「ああ・・・そういえばそんな車両が居たわね。

 あの車両・・・まだ魂を解放してなかったっけ?」


惚けたようにミハルが頬に指を当てて思い出す仕草をする。


「そうです!そのアンネさんと共にあのIs-3が連れて行ってくれる作戦なのですっ!」


ミリアがいい加減解れよと、ばかり大声で教えた。


「ふ・・・2人共、そんなに怒らないでよ。知らなかったんだから」


ブツブツ呟く様にミハルが小さくなって言うと。


「先ず、作戦を成功させる為には、乱戦に持ち込む必要がありますね。

 アンネさんの車両を追いかけるふりをしなければならないのですから」


ミリアが作戦を披露する。


「うん・・・なるほどね。

 敵に怪しまれてしまえば案内役のJs-3がやられちゃうものね」


納得するミハルに、


「だから僕達はアンネさんの後を追って行くだけにする必要があるんだ。

 味方部隊と共に進撃し、中戦車隊を撃破する。

 そして後方の重戦車隊だけになったら、アンネさんと共に敵の本拠地へ突入するんだ!」


マモルが補足した。


「なるほど・・・考えたわね。

 それなら巧くいくかも・・・。

 では、作戦名を付けようかな」


気を取り直したミハルが、作戦名称を考えようとしたら。


「あ、それ。もう付けられていますから」


ミリアが断わりを入れ、


「お に ごっ こ 大 作 戦 って」


    <ヒクっ>


ミハルの頬が引き攣った。


「・・・・名付けた人は・・・マジカさんね」


何も言わずとも、その名が出た。


「御明察。マジカ大使が命名されました」


「やっぱり・・・」


ミリアが即答し、ミハルが頷く。


「あはは。それじゃあ中戦車隊との戦闘に入るとしようか、姉さん」


2人の会話に割って入ったマモルが促す。

その瞳はミハルに笑いかけているようにも見える。


「そうね。先ずは血路を開かないと話にもならないからね。

 でも、倒した魔鋼騎の魂は解放してあげれないわ・・・どうしよう?」


一つの憂いが、ミハルにはあるようだったが。

その問題の答えは、あらぬ所から返って来た。


「ミハル車長!MMT-9から無線です」


アルムがヘッドフォンの片方を外し報告する。


「うん?ラミルさんから?」


自分の車両を任せたミハルが、小首を傾げて、


「繫いで」


隊内無線に出た。


「ミハルぅ、こっちは心配要らないからな。

 腕っ節の良いのが揃ってるから」


イキナリ、ヘッドフォンから大音量の声が耳に入る。


「うわっ、ラミルさん。そんな大声出さなくても聴こえてますから」


ヘッドフォンを思わず耳から離して答えるミハルに、


「はっはっはっ!お前の部下にしては上出来だ。そして魔法使いとしても・・・な!」


ラミルの指す部下にミハルもミリアも気付いている。


「あの・・・ラミルさんが太鼓判を押すくらい上達出来ましたか?」


ふっと息を吐く様に、ミハルが尋ねると。


「ああ・・・昔のお前そっくりだよミハル。一生懸命で、仲間を想う所なんか・・・な」


ラミルの声は、懐かしさというより心からミハルを想う、優しさが滲み出ていた。


「ふふふ、ラミルさん。昔って・・・今は違うみたいに聴こえてきますよ」


その優しき声にそっと言い返したミハルもラミルを想う。

始りの時からずっと一緒に闘いぬいた戦友のことを。


ーそうさミハル。今は違う・・・おまえは今、あの時とは全てにおいて違うんだ。

 背負う物も、闘う相手さえも。

 そして仲間も・・・そうだろミハル」


ラミルが告げたかった事が、ミハルには判っていた。


ーそう、昔はマモルとの約束を果たす為に闘った。

 生き残ってマモルと再開する為に闘っていた。だけど今は違う。

 新たな友とマモルと共に、闘う訳は唯一つ。

 友と父母を助け出す・・・そう。闇の真総統の手から -


「なあミハル。おまえはおまえの願いを果せ。

 私達に構わず突っ走れ。

 いいか、振り返らずに前へ進むんだぞ、解ったな!」


ラミルが教えてくれた、今度はミハル自身の為に闘えと。


「それに・・・な。

 私の方にも巫女が居るんでな。

 後始末はちゃんとさせるから。心配いらんぞ!」


ラミルが教えた後。


「ミハル分隊長!後始末はこの<剣聖けんせい>チアキが承ります。

 どうか、ご安心くださいっ!」


チアキが割って入ってきた。


「チアキ・・・そう。

 あなたにも魂を天界へ送る事が出来るの?」


挿絵(By みてみん)



尋ねたミハルに、即答するチアキ。


「「こう見えても、私は巫女の端くれ。いいえ、神の力を授かりし<剣聖>ですから。

 この剣に賭けて誓います!」


頼もしくなった声に、ミハルが頷き、


「ありがとうチアキ。

 あなたが派遣隊に来てくれた事を感謝するわ。

 あなたと・・・あなたのお父様にもね」


感謝の言葉を贈った。


「はいっ!任せて下さい!」


元気な声がヘッドフォンから溢れ出る。


「だとよ・・・ミハル。もう”チマキ”って呼べなくなったよな」


ラミルがそう言ってミハルを促し、


「ならば往くんだミハル。

 お前の願いの為に、おまえ自身の為に!闘えミハル!」


激励を贈ってきた。


「ありがとうラミルさん、ありがとうチアキ。ありがとう・・・みんなっ!」


ミハルの返事にラミル達は頷いた。


「それでは行くぞミハル!戦闘開始だ!」


ラミルはキューポラに立ち上がり、大きく手を振ってミハルに知らせる。

味方部隊の中、一両のパンター改Ⅱの砲塔の上で大きく手を振っているラミルの姿が眼に飛び込んで来た。


ーこれが最期ではない。必ずまた逢えるんだ -


そう想っていても自然と身体が動いてしまった。

ミハルもラミルに向けて決別を告げるかのように砲塔上に立ち、両手を打ち振って応えた。


「必ず!必ずまた逢おうね、ラミルさんっ!」


ミハルの声が、砂漠に流れていった・・・

ラミル配下のMMT-9は、<魔女兵団>との決戦を挑んだ。

フェアリア大使マジカの激励電文が読まれ、各員の士気は高まった。


秘匿作戦を実施するMHT-7も、砲撃に加わり双方の砲弾が入り乱れる。


オスマン最大の戦車戦の幕が切って落とされた・・・そう。


闇に支配された魂の解放と、両親と友の解放を求めて・・・


次回 現れる砦 Part2


君は生き残り、願いを果たせる事が出来るのか?

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