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第2章 熱砂の要塞 Act6霞む想い Part6

挿絵(By みてみん)


グランはミハルの元を離れ、女神たる者の足跡を辿ろうとしていた・・・

「リーン様は闇へ堕ちたのか?」


グランの瞳が曇る。


「では何故、神の力を発動されない?」


疑問が過ぎる。


「結論は一つ・・・完全に破滅神とは成られてはいない・・・

 只、闇の力に囚われてしまったというだけ。

 まだ希望はあると言う事だ・・・」


白獅子グランは<神の祠>と呼ばれる結界を前にして考えていた。


「では・・・リーン様は何処いづこへ行かれたか?」


そう。

その祠があった処には只、苔むした洞窟がぽっかりと開いているだけだった。


「リーン様の足跡は此処とは違う場所で途切れていた。

 この本当の祠には来ては居なかったという事か。

 闇の者に先手を打たれてしまった・・・」


リーンを残し、ミハルの元へ向った事を後悔したグランは、


「今となってはリーン様に何と申し訳したら良いのやら。

 このグランが余計な事を申し上げてしまった為に・・・

 リーン様は本当の自分を探して罠に嵌められてしまった・・・

 ミハルにもどう詫びていいのか・・・」


周りの気配を探る聖獣グランは、ここに至る途中で感じた邪な残気に感付いていた。


「もし、リーン様が今のルシファーたる者の手に堕ちたとすれば。

 間違いなく堕とされてしまう・・・ミハエル様のように・・・」


気配を感じるが、肝心の手がかりを探しあぐねて、グランは天に縋ろうとする。


「神よ、全能なる神よ。どうか御子をお守り下さい。

 どうかリーン様をお助けする者に力を御貸し下さい」


平伏するグランが本当の<神の祠>に願いを祈った。





___________





   < グワアアアァッンッ>


最後に残った一両が斯座した。


「よしっ、マモル。砲戦終了!戦闘を一時中断する。各員合戦用具納め」


キューポラの天蓋を開けて、周りの観測をしつつ、ミハルが命じる。


「了解!本隊への連絡はどうしますか、車長?」


アルムが無線の準備を整えて尋ねると、


「うん・・・そうね。暫く現在地に留まるから。

 後続する中戦車隊に注意を払って貰ってくれない?」


未だ戦闘半ばである事を告げ、味方本隊への連絡を執るように命じ、


「私はあの人達を解放するから・・・少し待っていて」


そう告げるとキューポラから飛び出したミハルに、


「姉さん!魔法力は大丈夫?身体が万全でない事を忘れないで」


追いかける様に身体を出したマモルが、注意を促してきた。


「へっちゃらよ。直ぐに終るからマモルは周りの観測を行っていて!」


振り返ったミハルの笑顔を観て、マモルがため息を吐き、


「姉さんは嘘が下手なんだよな。

 笑顔を振りまいていても僕には判る・・・何か身体に変調をきたしているのか・・・

 魔法力が足らないのか」


マモルは心配そうに姉を気遣っていた。


挿絵(By みてみん)



ちからが足りない・・・さっきの戦闘だけでこんなに魔法力が減るなんて。

 やっぱりミハエルさんの力が無くなった事で、私の魔法力も体力もかなり減少してるんだ -


敵魔鋼騎に閉じ込められている魔法使いの魂を解放しながらミハルは思った。


ーこれでは次の戦闘が始まれば、皆に危険が及ぶかもしれない。

 何とか魔法力を温存しなきゃ・・・-


そう考えたミハルはそっと胸に手を当てて、そこに在るべき物が無いのを寂しく感じていた。


ーねぇグラン・・・何処へ行ったの?

 どうして私から離れてしまったの・・・今、何処にいるの?-


頼りにしている下僕の事を想ってしまう。


ー私がまた闇の力でおかしくなったら。

 誰に頼れば良いの?誰が助けてくれるの?-


もう闇の中に消えてしまったルシファーにも天使ミハエルにも、

頼る事が出来なくなったミハルは、心細く想って白獅子グランに頼ってしまう。


ーどうすれば良いの?今の私にはあなたしか頼れる者はいないと言うのに・・・-


魔鋼騎の中に囚われていた魂を解放させ終わったミハルが

トボトボとMHT-7へ戻りながら考えていると。


「姉さん!早くっ!敵の新たな部隊が近付いて来ているんだ!」


マモルの叫びが耳を突く。


「なんですって!」


ミハルの悪い予感は的中してしまった。


ーどうすればいいの?

 私にはもう魔法力は残り少ないというのに・・・

 これでは魔鋼騎戦を戦い抜く程の力は無い・・・どうすればいいの?-


車体を駆け上がり、キューポラに飛び込むミハルは、

自分が誰かに頼ろうと考え続けている事に気が付いた。


ーそうだ・・・私はいつも誰かに助けられ続けてきた。

 いつもいつも誰かを犠牲にして闘ってきていた・・・-


ヘッドフォンを着け、マイクロフォンを首周りに填めて、考え続ける。


ーそう・・・いつも・・・いつも。

 リーンを頼り、仲間に助けて貰い続けていた。

 運命を嘆き、宿命と立ち向かうと言いながら、独りでは何も出来なかった・・・

 そう、今はグランを頼って闇と闘う事を考えていた。

 これじゃあ、何時まで経っても父さん母さんを助け出す事なんて無理。

 魔法に頼ってばかりじゃ、何も解決出来やしない・・・

 やっと気付いた・・・やっと判った。

 今から私は変わらなければいけないんだ。

 今から私自体が変わらないと何も変えられないんだ。

 運命から逃げちゃ駄目なんだ。

 

 逃げちゃ駄目・・・逃げちゃ駄目・・・そう。


  運命と・・・闘うんだ     -


ミハルの瞳が彼方に向けられる。


「アルムっ、味方部隊と連絡。

 現れた敵部隊を挟撃、これを殲滅します!」


マイクロフォンを押し、ミハルが命じる。


「ミリア、残弾数は?」


突然の問い掛けにもミリアは動ぜず。


「魔鋼弾21、徹甲弾16!」


即座に答える。


「宜しい。それだけあれば20両は倒せる」


凛としたミハルの声にミリアは嬉しそうに答える。


「はいっ、ミハルセンパイ!やりましょうっ!」


その声に頷いたミハルが言い返してくる。


「やるのは・・・マモルっ、あなただからね!」


キューポラからの声に、振り返ったマモルが更に言い返す。


「当然だね。

 相手が中戦車なら、アウトレンジも可能だ・・・だね。みんな!」


マイクロフォンを通さずマモルが大声で呼びかける。


「やりますか。目にモノ見せてやりましょう我等フェアリア戦車隊の心粋を!」


タルトが叫ぶ。


「じゃあ、本隊へはどう報告します?観ていろって言ってやりますか?」


アルムが笑ってミハルに訊いた。


「いいえ、アルム。

 こう言ってあげなさい。

 <逃げる奴を見逃すな>って・・・ね!」


瞳に力を宿したミハルが晴れ晴れとした顔で、


砂煙で霞む前方を見据えて命じた。

オスマンに鋼の嵐が吹き荒れる。


ミハル達KHT-7はマジカの作戦に沿って闘いを始めようとしていた。


その作戦とは?


次回 Act5 現れる砦 Part1


君はその闘いに全てを賭ける!

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