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第1章 New Hope(新たなる希望) Act3護るべきモノ Part2

挿絵(By みてみん)


チアキは小隊に届いた荷物を受け取り、街の中をフラフラ歩いていた。


前が良く見えないから、足元に注意を払っていた時。

「分隊長が行かれる必要はありません。」


搭乗員室で、マッカム先任がミハル中尉を止める。


「いいえ、先任。

 部下の落ち度は指揮官も同罪なのです。

 私がお詫びに行くのは当然の事ですから。」


ミハル中尉はそう返して、


「では、先任。私が留守の間、マモル准尉に指揮を委ねると伝えておいて下さい。」


搭乗員室から出て行った。

それを見送る搭乗員達は、部下を想う指揮官の姿勢に感謝の眼差しを向けていた。




「すっ・・・すみませんっ!」


チアキが慌てて謝ったが。


「何処に眼をつけておるのだ、貴様っ!」


その男の子に付き添う者達が一斉に怒鳴りつけてきた。


「いや、あの。荷物で前が見えにくかったもので・・・。」


チアキの前には荷物が散乱している。

そこに年の頃はチアキと同じ位の<オスマン帝国>の軍服を身に纏った美少年が立っていた。


「殿下。お怪我はございませんか?」


周りのお付が伺いを申し立てる。


「ああ、ボクは大事無いけど。」


その少年が周りの者に言ってから。


「そのの荷物が落ちちゃったね。」


オドオドしているチアキを見て笑い掛けた。


「こらっ、そこの兵隊、謝らないか!

 ここにわすは<オスマン帝国>第3王女シャルレット・サルマン殿下なるぞ。」


参謀肩章を吊った男が吼える。


「は?・・・王女・・・様?」


チアキは目の前に居る美少年を見詰めて固まった。


「そう、ボクはこの<オスマン>の王女なんだ。

 君は?どこの国から来た人なの?」


屈託のない笑顔でチアキに語り掛けて来たシャルレット王女に、


「男のかと思った。でも、そう言われてみれば女の子だよね。」


全く見当違いの答えを言ってしまった。


挿絵(By みてみん)



「なんと失礼な!どこの国の部隊かは知らんが、失礼過ぎるぞ!」


参謀が怒鳴り散らす。


「ははは。こんな服を着ていたらそう見えるのも仕方ないよね。君、名前は?」


男の子と言われた王女シャルレットは、意に返さず訊いてくる。


「はい。私は<フェアリア皇国>派遣隊所属、チアキ・マーブル一等兵です。」


チアキは上官と云う事もあり、姿勢を正して大声で申告した。


「ははは、チアキ・・・か。

 元気があって善いね。<フェアリア>から来てくれたのかい。ありがとう!」


シャルレット王女から礼を言われて、改めて姿勢を正し。


「いいえ、お礼を述べられる程の事は出来ておりません。」


敬礼を贈って畏まった。


「へぇ、君って面白いね。気に入ったよ、一緒に来て話を聞かせてくれない?」


そう言ったシャルレット王女は、参謀に目を向けた。

その眼に頷いた参謀が、


「殿下に対する無礼を働いた罪でお前の身を拘束する、来いっ!」


周りの男達に手で合図してチアキに掴みかかった。


「な?何をするのです?私はこの荷物を小隊に届けなければ!」


抗うチアキを問答無用で押さえつけて、男達はシャルレットの後に続いて行った。





「チアキが?オスマンの士官達に連行された?」


ニコ兵長が、驚きの声を挙げる。


「はい!街の目撃者から聞きました。

 なんでも、お忍びで訪れられたオスマンの殿下に無礼を働いたとかで。

 連行されて行ったみたいなのです。」


ジラが見聞きした話を報告する。


「どうします小隊長。相手が相手だけに、

 そっとやちょっとで還してくれなさそうですよ。」


腕組みしたミリア准尉に伺うニコ兵長が困った顔を向ける。


「うむ。下手な事をして奪い返せば、国際問題ともなり兼ねない。

 ここは分隊長と協議して判断しよう。」


決断を下しかねたミリアが、ミハル中尉に報告する為に中隊本部へと向った。



_________________



そのミリアからの報告を受けたミハルは、

唯一人でオスマン王女が居る建物へと向ったのだった。


「私はフェアリア皇国派遣隊戦車隊分隊長のシマダ・ミハル中尉です。

 私の部下が殿下に無礼を働いたと聞き及び参上致しました。

 殿下にお詫びを申し上げたいと思いますのでお通しください。」


オスマン帝国第3王女が居る建物に入り申告すると。


「何?フェアリアの派遣隊の隊長か。

 殿下は今、お前の部下を詰問されている。暫くそこで待っていろ。」


奥まったカーテンで仕切られた部屋を前にして、参謀達がミハルを止めた。


「殿下直々に話されておるのだ。隊長の出る幕ではない。」


追い払うような剣幕で言われても、ミハルは動じず。


「重ねて申し上げます。

 私の部下がどの様な無礼を働いたかは存じませんが、

 私が代ってお詫び申し上げたいと思い参上したのです。

 ・・・お取次ぎ下さい。」


参謀達を睨み付けてミハルが繰り返す。


「お詫びだと・・・いいだろう。

 ここはオスマン帝国内だ。

 我が国の流儀でお詫びすれば殿下に取り次いでやってもいいぞ。」


一人の参謀が下品な笑みを浮かべて、ミハルの身体を眺めた様に見えた。


「あなた方にお詫びを申し上げる事はない。

 私は殿下にお詫びを申し上げると言ったのです。

 解って頂けませんか?」


参謀連中の視線に気付いたミハルが、怒りの声をあげる。


「解らんなぁ、解っているのはお前が部下の無礼を謝りに来たって事と、

 俺達にお詫びしなければ殿下に取り次がないって事だけだな。」


下衆な言葉を吐きかける男達がミハルを取り囲む。


「あなた方は何をなさるおつもりなのです。

 それが殿下に従う者のする事ですか!」


取り囲む男達に一喝すると、


「どうしても取り次いで頂けないのなら、私が勝手にまかり通ります。」


右手の宝玉を紅く染め、男達を睨み付けた。


「お詫びをしないというのなら、無理にでもさせてやる。

 それが<オスマン>の流儀なのだ!

 女一人に男4人。

 通れるものなら通ってみろ!」


そう叫んだ男がミハルに手を差し出し掴み掛かる気配をみせた。


私を救出に分隊長が?


あれ?


救出にって・・・シャルと話していただけなんだけど?


あ。   分隊長っ!?


次回 護るべきモノ Part3


流石だ!分隊長。君にはどんな娘も勝てはしない・・・ドジな娘では。

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