顔の挿絵つき多重視点小説
みてみんの画像投稿システムを有効利用して、登場人物それぞれの視点から物語を構築していく多重視点小説にチャレンジです。視点転換ごとにそのキャラの顔を配していくので、文字だけの多重視点小説よりは読みやすくなると思っているのですが、どうなりますか・・・・
プロローグ
抜群の高G高衝撃耐性力を持つ鞍馬疾風は、蔵王研究所が出した《テストパイロット募集。時給千五百円。運動能力とバランス感覚および高G耐性力のある方希望》というアルバイト募集の千五百円という高時給につられて、何のテストパイロットなのか考えもせず、山の頂上にある蔵王研究所に向かった。
その途中、鞍馬疾風は好みの美女に遭遇した。
【F01】ファーストコンタクト
雨、交差点。蔵王美玲は信号が早く青にならないかなと気を揉んでいた。
赤でもないのに横断歩道の真ん前に止まっているシャコタンクラウンが気に入らないからだ。
交通の邪魔をしているのに不思議と誰もクラクションを鳴らさず避けて通っていく。
ボディの側面にビッグブラザーズと殴り書きがしてあるからだ。ビッグブラザーズとは、奥球磨丈とかいうゴリラ並の巨漢が率いる暴走族グループのことである。
中にいる連中の卑猥な視線を感じる。下手すると襲われかねない。美玲は取りあえず傘で奴等からの不快極まる視線をシャットアウトした。
美玲の悪い予感は当たっていた。
中にいた三人、金髪の高木弘樹、越野巾作、山本次郎の三人は傘を差して信号待ちをしているスレンダーな美人に目を奪われていた。
傘で顔を隠してしまったが、チラリと見えた横顔だけで美人だと確信できる。
三人は同時にヒューとため息をついた。次に三人が考えることは同じだった。
「やっちまおうぜ!」
三人がドアに手をかけたその時、ドスンという衝撃があり車体が揺れた。
追突されたのだ。
三人の色情は一瞬にして消失、激情に取って代わった。三人が飛び出して後ろをみるとホンダの軽がオカマしていた。
細身の若者がにやけた顔して出てきた。
鞍「すみません。信号機下の美女に見とれてしまって……それに青信号で止まってる車がいるとも思わなかったので」
こいつ舐めてやがると高木は思った。
高「オンドレ、修理代高くつくぞ」
越「ムチ打ちになっちまったぞ。治療費も高く付きそうだ。ヘラヘラ笑いのガキ、名前は?」
鞍「鞍馬疾風……くらまはやて」
高「お前、目には目をって諺知ってるか?」
鞍「ああ。目には目を鼻糞には鼻糞を、だろ」
高「なら分かるよな。まずはオレ等三人が受けた痛み、三倍返しさせてもらうぜ」
三人は鞍馬を取り囲んだ。三対一で勝ち目などないはずなのに、若者はにやけた笑顔のまま蔵王美玲を見やって信号を指さした。
青になっていた。
蔵王美玲はその若者に申し訳ないという思いと、面白くなりそうな展開を見ていたという願望を抱いたまま信号を渡り、座王研究所専用ヘリポートが屋上にあるビルに向かって全力で走り去った。
鞍「じゃ、オレも失礼します。これから会社面接があるから」
疾風は気になる美女が十分離れたのを確認してから言った。
高「ごら! 待たんかい、誰が行っていいと言った?」
高木はホンダの軽に乗り込もうと背中を見せた鞍馬に思いきり蹴りを入れた。
万歳をするような恰好で、派手に地面にぶっ倒れた鞍馬を見て三人は大笑いした。
鞍「何するんだよ。人が穏便に済ませようとしているのに」
鞍馬は服についた砂を払いながら立ち上がり高木を睨んだ。
とはいっても依然ニヤニヤしたままである。そのふてぶてしさに頭に来た三人は一斉に攻撃を始めた。
鞍馬は高木の顔面に拳一発、背後から抱え込みにかかった山本にはみぞおちに肘一撃、ひょろ高くてリーチのある越野が繰り出したパンチにはクロスで正面蹴りを入れた。
その間、わずか数秒。あれほど威勢の良かった連中は今、鞍馬の足下でのたうち回っていた。
鞍馬は、顔面を腫らし鼻血を出してもがいている高木の腕を掴んで、その手首にしてあるロレックスを興味深げに見た。
高「あ、あげます……。あげますから勘弁してください」
高木は泣きながら赦しを乞うた。
鞍「ヤバ、一時過ぎてるじゃん。面接に遅刻してしまう!」
鞍馬は慌ててホンダの軽に乗り込むと、一旦バックさせてからシャコタンクラインを避けて発進させた。
鞍馬はまだ、傘を差した美女がこれから面接を受ける蔵王研究所のオーナーである蔵王博士の娘とは知らないでいた。
その美玲は、ようやく迎えに来た蔵王研ヘリに急いで乗った。
ヘリが舞い上がる。
美玲は上空から山に巻き付く巨大な白蛇のような座王研への道路を見下ろした。
小さな軽自動車が懸命に登っていくのが見える。
その後を大型のバンとボンネットにビッグブラザーズと書いてある、あのシャコタンクラウンが追いかけていた。
所詮軽自動車である。アクセルベタ踏みでも、この急な坂道ではスピードが出るはずもない。
背後でクラクションが鳴った。
バックミラーを見るとさっきの三人組がドアップで映っていた。
鞍「オカマの仕返しか」
鞍馬は衝撃に身構えたが、三人組は予想に反して追い抜いて前に出た。
そして道幅いっぱいで蛇行運転を始めた。
鞍「なんだよ。この中途半端な嫌がらせは」と鞍馬が呟いた途端、強烈な衝撃が走った。
大型バンが全速で追突してきたのである。
後部座席が完全にへしゃげた。
ぶちゃけ、新たな祭都でザオロンの投稿をしてみたのですが、顔だけブック形式に関しては、みてみん画像投稿システムの方が遥かに優れていたので、図々しくも出戻り投稿をすることになりました。
これもチャレンジングな作品なので、どうなるか分かりませんが、上手くすれば、なろう独自のカテゴリーを創生できるかもしれないので、取り合えずは続けていきますのでよろしく。
では天派。