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プロローグ

続きじゃなくてすいません

 その大陸にはたくさんの国ができていた。繁殖力が高い人間達が、弱い自分たちを守るために作った砦。元々は協力してできたその国は数を増やし、弱い人間達は数の暴力に寄ってしまった。自分たちの優位性に慣れて錯覚してしまった。


 自分達こそが強者だと。


 故に、人間は自分が強者であるために弱者を探し、迫害し、騙し、戦争をし、人間はその数を増やすと同時に減らしていき、国もまた数を減らし増やしを繰り返してきた。


 そしてまた、新たに数が減る現象が起きようとしていた。


 とある場所には数えるのが馬鹿らしくなってくるほどの人間がいた。


 隊列を成した人間達が上の者の命令で死を恐れることなく、もしくは死を恐れながらも目の前の敵に向かって己の武器を振りかぶる。


 大勢の人間対大勢の人間で計略を練り交渉をして、相手の策を看破して、できるだけ己の軍が優位に立てるように殺し合いをするのが戦争と言うものなのである。


 たくさんの人間が死んでいく。戦争だから仕方がない。たくさんの人間だった物が踏まれていく。戦いなのだから仕方がない。たくさんの友だった物が作られていく。死合いなのだから仕方がない。


 だが、ある一人の兵士が疑問を抱く。これは、本当に戦争なのかと。


 蹂躙されていく、それを見ていることしかできない。絶望を見せられている、それを受け入れるしかできない。処刑台へと進まされていく、それを拒むことができない。



 これは戦争ではない。否、これは戦争である。


 これは処刑である。否、これは処刑ではない。


 これは戦いではない。否、これは戦いである。


 これは蹂躙である。否、これは蹂躙ではない。



 戦争は人にしかできず、処刑は人間にしかできず、戦いは同程度の者達にしかできず、蹂躙は相手を倒したい気持ちを持つ人にしかできない。


 俺達は、何をしている。


 その場にいた一人の兵士が独白する。その独白は力無く呟かれたが、なぜかその場にいた兵士達の耳へと届いた。


 兵士達は戦争をするためにこの場所へと来た。愛する者達のために、大切な人達を助けたいという純粋な思いを持っていたから、兵士は従軍した。


 報酬が欲しい、戦いがしたい、強制的に連れてこられた、守りたい、かっこいい自分に酔いたい、戦争へ来た者達はそれぞれ理由は違う。だが、ここまで来て彼らの思いは同じとなった。


 剣を持ったその手を震わせ、相手を殺すことを決意した顔を崩しながら、目の前を見た兵士達全員が、これが夢であって欲しいと懇願した。


 悲鳴と怒号と絶叫と叫喚と啼泣が混じりあっていたその場所は、今は鳴りを潜めただひたすらに静けさがあるだけ。


 しかし、そこには山があった。平らな平野には似つかわしくない赤い山。異臭を放ち獣が好む匂いを発した大きく歪な形の山。


 それを見て、兵士は確信した。これが、これこそが絶望なのだと、目の前に広がる友だった者達と今さっきまで敵だった者達でできた山を見て、兵士は力無くその場に膝をつく。

『俺達は、何をしている』もし、この質問に答えられる勇敢な者がいるならば、おそらく答えはこうである。



 是、これは一匹による惨殺である。



「なんで……こんな……」


 再び誰かが悲哀に満ちた声音で独白する。


 瞬間、山の頂上で座っていた一匹の耳がピクリと動く、と同時にそれを見た者達の顔が青ざめる。


「なんで……理由はある」


 鈴の音のようなこの場には似つかわしくない声音が墓場で響く。誰もがその者の言葉を一言も聞き漏らさないようにと辺りはさらに静まる。


 そして、その人ならざる者は腰を落としていた山から立ち上がる。二本の尾をゆっくりと左右に振り、青く長い髪と耳を風に撫でさせながら、彼女は言う。


「邪魔だったから」


 まるで進む道の蜘蛛の巣を払うかのように、邪魔な蔦を着るかのように言われたその言葉は、冷たさも暖かさも何もない無機質な言葉だった。

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