・第八十話 『魔力譲渡』
いつも読んで頂きありがとうございます!
ブクマ、感謝です。
※2/13 改稿しました><
なんというか・・・間違って下書き版を投稿してました。
ごめんなさい!
異世界からこんにちは。
おれは九条聖、通称『悪魔』のセイだ。
美祈、助けてください。
兄貴の仲間は一体どうなってるんでしょうか?
神様よりむしろ、フレンドリファイアが恐ろしい今日この頃。
過去のしがらみ云々はわかるよ。
時間の概念で失敗したのもわかる。
そっちに関してはおれのミスだろう。
だけどさ、なんとかしようとして・・・普通燃やす?
ちょっと考えようよ。
そこに行き着く前に、色々手はあったと思うんだ。
今思うと、サーデイン・・・いや、サーデイン「さん」のありがたみが身に染みる。
奴のあだ名は、「オーバーキル」改め「放火魔」で決定だ。
とりあえずプレズント、お前正座なー!
■
ええ、現在絶賛落下中ですね。
『地球』で言えば三階建ての建物、その屋上くらいの高さからです。
そうですね・・・約10mほどに感じます。
このまま落ちたら普通に痛いでしょうなー。
いやいや、あかんがな。
落ち着いてる場合じゃなかった。
やたらヒリヒリする右手と、「主!気を確かに!傷は浅いのである!」なんて言って、微妙に錯乱気味のロカさん。
普段まともなのに、パニックに弱いのが最近判明。
目が見えてないからはっきりとはわからないのかもしれないが、なんとなくの浮遊感に身を強張らせるサラ。
とりあえずおれとロカさんは良いとしても、怪我+衰弱中のサラを地面に激突させる訳にはいかないだろ。
おれは空中でなんとか体勢を制御し、『翔歩』の効果で空中を蹴る。
50年振りの外界だしな、怖がっているんだろう。
サラがことのほかおれに抱きついて来るんだが、ポジションがちょっとよろしくない。
こいつこんなガリガリなのに・・・どういう構造だ。
まさに人体の神秘。
いや、天使だけど。
「サラ、悪いが少しだけ力弱めてくれるか?」
おれの言葉に「え?」と聞き返すサラ。
やむおえず確信を突く。
「いや、当たってるんだ・・・色々と。」
一瞬で耳まで真っ赤になった彼女が「ごめんなさい!」と手を離し、テンプレで落ちかけ「キャア!」となる。
おかしい、テンプレマスターは下にいるはずなのに・・・。
そんなこんなを注意しながら何度か繰り返し、約2mほどまで降りたところで力を抜いた。
地面に降りる途中、ふわりと身体が軽くなる。
プレズントの重力制御だろう。
「マスター!」「セイ!」「セイさん!」
お留守番組の面々が、慌てて駆け寄ってくる。
「ロカさん、水出してくれ。」「承知。」
おれは火傷を冷やすので忙しい。
「いやー、無事で良かったよ。」「そうだよセイ!また無茶して!それにまた、女の人・・・。」などと言ってくる、放火魔と残念にジト目を向ける。
「とりあえず・・・お前ら正座。」
「「「え?」」」
おれはお留守番組へ、無情に告げた。
■
「で、言い訳は?」
しゃがむ事で正座中の三人と目線を合わせる。
「いやぁ、なんとかしようと思って。ね?アフィナ君。」
「そ、そうだよ!元はと言えば勝手に行っちゃう上に、皆にわからない時間を指示するセイが悪いんじゃないか!」
「わ、私は止めようとしたんだ!セイさん、信じてくれ!」
三者三様のお答え。
因みにプレズントは一見申し訳無さそうにしているが、「てへぺろ」の表情が隠せてないからな?
ふむ、反省0が二人ですね。
まぁシルキーの場合、本当にこの二人・・・と言うかプレズントに押し切られたんだろう。
「とりあえずシルキーは立って良し。だけど・・・これだけは忘れるなよ。見てるだけも同罪だからな?」
良い笑顔でシルキーを説教すると、目の端に涙を溜めながらブンブンと頭を振って頷いた。
なんだかおれが苛めてるみたいじゃないですか、ヤダー。
とりあえず二人はそのままに、おれは『図書館』を開く。
中からレモンっぽい果物とハチミツを取り出し、『カード化』を解除。
「ロカさん、水頼む。」「承知。」のやり取りをして、ヤカンに水を貯めコンロ型魔道具に魔力を流す。
適度に調整した物に、塩をほんの一つまみ。
ロカさんが居てくれると水周りが楽だなぁ。
ロカさんが水をろ過・・・ダジャレではない。
何をしてるかって言うと、まぁホットレモネードもどきを作っている。
サラに飲ませるためだ。
さすがに50年、飲まず食わずだった人間に固形物もアレだと思ってな。
今サラは、丸まったロカさんをソファー代わりに身を預けていた。
とりあえず念のため、シルキーに先に飲ませてみる。
「うん、おいしいよセイさん。」と、満面の笑みで答えるシルキーを確認し、サラにもできあがったホットレモネードもどきを、カップに注いで振舞った。
恐る恐る口をつけた彼女が、一口飲んで俯いてしまう。
サラの瞳から流れたであろう雫が、彼女の膝元へポタリポタリと落ちた。
「お、おい、大丈夫か?口に合わないなら止めろ。」
慌てたおれに対し、サラは弱弱しく頭を振ると、消えそうな声で呟いた。
「違うの・・・すごく、すごくおいしい。それに・・・温かい。この一杯から貴方の人柄、気遣い、それに優しさがわかる・・・。」
そう言ってまた少しずつカップを傾けるサラ。
「まぁ気に入ってくれたならなによりだ。」
おれは随分な年上であろう彼女の頭を、なんとはなしにポンポンと撫でてしまっていた。
それはともかくだ。
「それでお前ら二人は、本当に火魔法で何とかしようと思ってたのか?」
「アハハハハ。」
「そ・・・それは、プレズント様がイけそうって・・・。」
乾いた笑いの放火魔と、微妙に視線を逸らす残念。
二人の行動は、意外な所から賛同を得た。
「たぶんあのまま攻撃されていたら、あの空間は破られたと思うわ。」
サラだった。
思わず「マジで?」と聞き返すおれに、「ええ。」と端的に答えるサラ。
プレズント・・・ドヤ顔をやめろ。
「信じられない威力の火魔法だったわ。一体貴方がたはどんな力を有しているのかしら・・・。」
そうなのか。
まぁ、世界最強の火魔術師は伊達じゃないってことか?
そこでアフィナがプレズントを紹介する。
「それはそうだよ!『永炎術師』プレズント様と言えば、世界最強の火魔術師って言われてる方だよ!まさかお姉さん知らないの?」
うん、別にお前がすごい訳じゃないからね?
サラも「ご、ごめんなさい。知らないわ。」と、反応に困っている。
愕然とするアフィナに対し、プレズントは至極冷静だ。(お互い正座反省中だが
「ねぇマスター。その女性って、もしかしなくても『銀髪の天女』サラさんだよね?」
おれは首肯で答える。
アフィナはサラの素性に気付いていなかったのか、目を見開き驚いている。
「なるほど、なるほど。」と呟いたプレズントが、改めてという体で居住まいを正すと語り始めた。
「『永炎術師』は、サラさんが行方不明になってから付けられた称号だからねぇ。むしろその頃まだ生まれてないし・・・。たぶんこう言えばわかるよ。『真賢者』の弟子ってね。」
『真賢者』ガウジ・エオ。
人族でありながら一万年を生きたと言われる正体不明の人物。
『聖域の守護者』ティル・ワールド、『氷の賢者』プリエイルと並び称される『三賢人』の一人だ。
正確には他の二人と明らかに格が違うらしいがな。
『地球』ではカードゲーム時代に、存在が公式に発表されたにも関わらず、誰一人所有者が見つからなかった事で、その存在も半ば都市伝説になっていた。
この世界ではやはり実在するのか・・・。
「なっ・・・。」
今度はサラが絶句した。
■
その後、情報のすり合わせは滞りなく済んだ。
説明はおれがするしかなかった。
サーデインが居ないと、面倒な事が全部おれの役目になる。
本気であの腹黒エルフさんが恋しくなってきた。
それはともかく、問題が発生した。
「じゃあ体力は、アフィナの回復魔法で十分なのか?」
「ええ、助かったわ。それよりも・・・。」
『南天門』を開くための魔力が、サラには全然足りなかった。
そこでおれが魔力を譲渡しようとしたのだが・・・。
「ま、ま、ま、待って下さい!」
キアラが箱から飛び出してきた。
「サラ様が、セイ様の強力な闇の魔力を直接受け取ったら死んじゃいます~!」
えーなにそれコワイ。
「・・・どういうことだ?」
キアラの説明によると・・・。
サラくらいの純粋培養に近い光属性の天使が、直接身体に闇の魔力を入れられたりすると、最早それは毒にしかならないんだとか。
それもおれくらい強力だと、一瞬で死に至るレベルらしい。
おれの魔力って一体・・・。
「だけどシルキーは光属性なのに平気だし、キアラお前も、おれから魔力もらおうとしてたじゃないか?」
「セイさん。私は光属性だけど分類上は魔物である『一角馬』だからね。」
「私の場合はウララ様の魔力で耐性が付いているのと、元々雑種ですから・・・。」
おれの素朴な疑問に答える二人。
「ふぅむ・・・じゃあどうすりゃいいんだ?」
「マスター、一回クッションを入れて光属性にすれば良いんだよ。」
なるほど。
プレズントの言葉に、それなら話は簡単だな。と思い、シルキーを見た所で横槍が入った。
「ブルルン。」
今まで沈黙を保っていた(その辺の草食ってた)リゲルだった。
「なんだ?」と通訳を促すおれに、シルキーはついっと目線を逸らす。
黙ってじっと見つめると、大きなため息をついた後に渋々通訳を始めた。
「処女のサラさんには、リゲルが光属性の魔力を充填するから、その前にアフィナさんを挟めって・・・。」
「・・・・・・。」
場の空気が凍りつく。
おれは黙ってシルキーの手を取った。
何故顔を赤くする・・・。
「ちょっと待ったーーー!シルキー、じゃんけんで勝負よ!」
アフィナ参戦、ガチでウザい・・・。
「あ、あ、あ、あの!私も!」
キアラ?お前は魔力譲渡できませんよね?
おれは残念に拳骨を落とし、キアラを箱に突っ込み、シルキー経由でサラへと魔力譲渡を始めるのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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