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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
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・第七十九話 『15分』

いつも読んで頂きありがとうございます!

ブクマ、励みになります。


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、五分前行動は常識です。

 兄貴もそれを否定はしません。

 時間厳守ってのは、人と人が良好な関係を築く第一歩だよな。

 社会人が遅刻なんて持っての外にしてるのも大いに納得だ。

 なんて思っていた日がおれにもありました。

 いや、違うんすよ・・・。

 たぶんそれ、日本人(の一部)がきっちりしすぎてるんだよ。

 実際問題日本という実に小さな国の中でも、「なんくるないさー。」が有名な某南方の県辺りだと、待ち合わせに二、三時間遅れは当たり前らしい。

 それが異世界、まして時計なんてものが無い、時間の概念も半刻、一刻なんてレベルのとこだとどうなるか?

 それでは実際に見てみましょう。



 ■



 (マジか・・・。)


 予想しうる最悪の答えだった。

 『正義神』ダインが、『略奪者プランダー』の尖兵と化している可能性がある。

 それは当初から、『カードの女神』アールカナディアに示唆されていた話だった。

 しかし確証があった訳でもない。

 20年前の大戦時、超古代級究極破戒魔法『終末』を用い、大量虐殺を行った『聖域の守護者』ティル・ワールドに関しては、十中八九黒だと睨んでいた。

 あわよくば、『正義神』ダインは違った・・・と言う朗報はもう聞けないだろう。

 なにせ当事者である『銀髪の天女』サラが、彼の神の名を出したのだ。

 それも敬虔な信者だったであろう彼女が、敬称無しで・・・。


 「正確には・・・『正義神』ダインの姿と能力を持った何か・・・。と、言えなくも無いわ。」


 「どういうことだ?」


 言うとはなし、おれに聞かせるためと言うよりはむしろ、自分の記憶を辿るかのようなサラの呟き。

 

 「私は当時、彼の神の巫女的立場にあったのだけれど・・・その日の神託は、何かが違った。」


 どういうことだろうか?

 一つ一つ確認するかのように、見えない瞳で宙を見据え、ゆっくりと言葉を繋ぐサラ。


 「あの日最初の神託、それは確かに『正義神』ダインのものだった。とても焦ったような感じで、私たち『四姉妹』に集合をかけ、一方的に接続を切られた・・・。ただならぬ気配を感じた私たちが、集合場所として指定された空間に行った時、そこに居たのは『聖域の守護者』ティル・ワールドと『正義神』ダイン。私たちの姿を見止めたティル・ワールドはすぐにどこかへ行ってしまい、残された『正義神』ダインは・・・何処か虚ろな表情で私たちに襲い掛かった。真っ先に回復能力特化の妹『金翼きんよくの天女』ジルが、次いで攻撃能力特化の妹『紅爪こうそうの天女』ユウが殺された。二人はほとんど意識すらできなかったと思う。それもそうよね・・・。まさか自分の信奉する神が突然襲い掛かってくるなんて思えないもの。そして私を庇った姉、『蒼穹の天女』エナが・・・。防御能力特化の私は、余波でこれだけの傷を負わされたけれど、なんとかこの空間に退避したわ。それからはなんとか魔方陣を展開して、隠蔽系の結界魔法を張って隠れていたの。その維持の為に魔力を使っていたから傷を癒すこともできなかったわ。」


 違和感は色々とある。

 ダインが『略奪者プランダー』に使役されていたのだとしたら、何故他の『四姉妹』がウララの元にあるのか?とかな。

 だがそれを言えばロカさんやプレズントもそうだしな。

 とりあえず今はいいだろう。


 それはともかくだ。

 別空間に閉じ込められての不意打ちだったのか。

 それにしても・・・。

 防御能力に特化して、更にエナに庇われたにも関わらずこのダメージ。

 神の力の片鱗が伺える。


 「なるほど。ずっとここに隠れていたなら外のことはわからないか?」


 おれの問いに「・・・そうね。」と呟くサラ。


 「外ではお前たちが行方不明になってからすでに、50年以上が経過している。その間に戦争が起きて、戦争で20万人以上の命が失われた。大きな要因は20年前、『聖域の守護者』ティル・ワールドの使った『終末』。そして今、『天空の聖域シャングリラ』に属する天使族の大半が、『封印されし氷水ひすい王』に感染していると見て間違いない。」


 おれは最初に説明した大雑把過ぎる説明を肉付けする。

 異世界から転移した後『カードの女神』に『加護』をもらって、他の転移者を探してる・・・くらいの事しか言ってなかったからな。

 サーセン。


 「なっ!?50年・・・。『終末』、『封印されし氷水ひすい王』・・・!お願い!もっと詳しく話して!」


 元より余り健康状態の良くないサラが、一層顔色を悪くして懇願する。

 サーデインが居ないから丸投げができない・・・。

 渋々おれが、それに答えようとした時だった。

 ゴッゴン・・・。

 不可解な異音と遅れてやってくる振動。

 立って居られない程ではないが、思わずよろけるくらいの揺れだった。

 サラとキアラは青い顔で抱き合っている。


 (なんだ!?)


 「主!」


 「ロカさん!今、何分経った?」


 外にはプレズントたちが居るはず。

 アイツには15分で助けてくれるように頼んだが、おれの感覚だとまだ10分経ったかどうかだ。

 おれを守るように四肢を踏ん張り見上げるロカさんが、何とも言えない困った表情になる。


 「主・・・何分とは何であるか?」


 あああああああああああああ!!!

 この世界に何秒とか何分なんて概念無かった!


 「サラ、ちょっとまずいかもしれん。外に出て話そう。その傷も治さなきゃな。」


 (かっる・・・。)


 「え?え?」と困惑するサラを、お姫様抱っこで抱え上げる。

 見た目以上に相当軽い。

 この感じだと50年以上飲まず食わずで、本当に最低限の生命維持しかしてこなかったんだろう。

 サラを抱え上げたのに合わせ、キアラも慌てて金箱に飛び込む。

 お留守番組の顔を想起する。

 すでに手遅れかもしれない・・・。



 ■



 取り残されたお留守番組が『南天門』を見上げている。

 正確にはその天辺部。

 セイとロカさんを飲み込んだ後、消えてしまった鍵穴のあった場所を。


 「プレズント様・・・。」


 不安そうに呟くアフィナ。

 シルキーも同様に、胸元へ手を握り合わせて祈るような表情だ。


 「んー、マスターだし、ロカさんも付いてるから、よっぽど大丈夫だとは思うけどなぁ・・・。」


 逆にプレズントは、余り心配していない感じ。

 実際にはそれなりに焦っているのだが、それを不安がる少女二人に見せる必要も無い。と言った大人の判断である。

 リゲルは馬である、特に動揺も無い。

 彼にとって重要なのは守るべき処女のアフィナとシルキーであり、セイとロカさん=オスとしか認識していない。

 まぁセイの場合は、「うまい飯を作るオス」となっているのだが。

 

 「あ、あの・・・プレズント様。」


 どこか言い辛そうに声をかけるアフィナに、「なんだい?」とプレズント。


 「セイはたぶん・・・時間の事言ったと思うんですけど、15分ってどのくらいですか?」


 「え?」


 何となく、セイや竜兵が話していた事を思い出しつつ尋ねるアフィナに、心底驚いた表情で聞き返すプレズント。

 自信満々に「了解。」と言っていたプレズントの姿を見て、てっきり周知のことなのだろうと思っていたアフィナは、その返答に驚愕する。


 「え?」


 そう・・・彼らは15分という時間が、どのくらいかわかっていなかった。

 プレズントのこめかみに汗が一筋流れる。


 「ア、アハハ・・・たぶん、そろそろじゃないかな?」


 笑って誤魔化しにかかるプレズント。

 正確にはまだかなり早い。

 今やっと10分経ったか経たないかである。

 だがそこにつっこむ者は誰も居ない。

 全員が知らないことであるし、えてして待っているものにとって時間と言うのは長く感じるものなのだ。


 「よーし、お兄さん頑張っちゃうぞー!アフィナ君、火魔法よろしくー。」


 そしてプレズントは、アフィナが産み出した火魔法をコストに変え、『増幅』されて常軌を逸した威力になったそれを、おもむろに『南天門』へ打ち込み始めた。



 ■



 ゴウンゴウンと地面が揺れている。

 これ明らかにプレズントだろー!と思いながら白い空間を走る。

 

 「サラ、出口は!?」


 「待って!貴方はどうやってここへ来たの?」


 いやいや、そんな話してる場合じゃないと思うぞ?

 ここに来るときは「何とかしてくれ」なんて言って来たけど、お留守番組のメンバー構成考えたら、「とりあえずイっとく?」になってると見て間違いない。

 それでも「なんかダイ○ンばりの吸引力な鍵穴に吸い込まれた。」と答えておく。

 おれの返答を聞いたサラも眉を顰め、「ダイ○ン?」と訝しむが、そこは食いつくところじゃない。

 

 「とりあえず・・・出口を開くわ。たぶん『南天門』の上に出るはずよ。」


 「おーけー、それで良い。」


 サラの言葉に合わせ、目の前に光のモヤが生まれる。

 

 (さすがに両手が塞がってるのはまずいか・・・。)


 上ってのがどのくらい上のなのかわからない以上、手で身体を支えなければいけない可能性がある。


 「サラ、おれの首に手を回せるか?ロカさん、頭。」


 「わかったわ。」「承知。」


 なんだか微妙に頬を赤く染めたサラが、おれの首に腕を回しぎゅっと抱きつく。

 ロカさんが子犬モードになって、おれの頭に飛び乗ったことを確認し、光のモヤの中に突っ込んだ。


 視界が開けると、足元2,3m下に『南天門』の天辺部。

 正面には、そこに向けて今正に放たれようとしている、直径5mはあるだろう巨大な火球。

 どうしてこうなった。


 「ちょ、おま・・・待てええええええ!」


 声に反応し、お留守番組がおれの存在に気付いた。

 何とか思いとどまったようで、火球が徐々に小さくなっていく。

 おれはそのまま飛び降りるように、『南天門』の天辺に着地を目指す。

 衰弱している怪我人のサラに、できるだけ衝撃を与えないよう、左手一本でお姫様抱っこを維持している。

 そして膝の屈伸と右手をクッションにして、柔らかく着地した瞬間だった。

 ジュウッ・・・。


 「じゅう?」


 明らかに不審な音に、思わず間抜けな声が出る。

 音は右手から・・・。

 ・・・oh・・・。

 もうね・・・大火傷ですやん!?

 神々が作ったとされる謎物質製の門を、ステーキプレート並みに熱するとかどういうこと?

 何とかしてって頼んでるのに、とりあえず焼いてみるとか・・・ばかなの?


 「あっつ!!!」


 熱さは遅れてやってきた。

 そしてものの見事にバランスを崩すおれ。


 「あ、主ーーーー!」


 ロカさんの絶叫を聞きながら、おれは落ちた。






ここまで読んで頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


仕事、某有名タイトルオンラインMMO、読書、執筆活動と激しく時間が足りません。

詰み本も山ほどorz

もう優先順位の低いものから切り捨てるしか・・・。

うん、仕事だな(マテ

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