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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第一章 精霊王国フローリア編
8/266

・第七話 『カードの女神』前編

※4/26 微修正しました

 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、君は今どうしているだろうか?

 兄貴は今、神様とお話中だ。

 どうもおれの意思に反して、テンプレが止まらない。

 この手のお話は、秋広にお任せしたいのが本音だ・・・。

 とりあえず、情報の擦り合わせをしてみることにした。



 ■



 「感謝する、異世界の魔導士よ・・・。」


 そんなことを言いながら、神様が光り輝いて小さくなっていく。

 何故か今まで、ぼんやりとしか見えなかった神様が、年の頃10歳くらい、銀の長髪、右目が赤、左目が緑、陶磁器のような白い肌、まるで西洋人形のような美幼女に変身している。

 世界一有名な東京の電気街を闊歩する、例の紳士たちが「Yes!ロリータ、No!タッチ。」なんて、叫びながら敬礼しそうだから勘弁してくれ・・・。

 それにオッドアイって・・・おれの意思に反してテンプレが止まらない。

 最近の神様は幼女が流行らしい。

 おかしなフレーズもあったな・・・魔導士ってなんだよ?ちょっと『悪魔デビル』なんて通り名が付いてるだけで、普通の高校生なんだが?


 「あー神様?その姿はなんだ?それと魔導士って・・・おれは普通の学生なんだが・・・。」


 おれが疑問をぶつけると、幼女は小首を傾げその姿には不釣合いな、先ほどと同じ口調で悩みだす。


 「ふむ?魔導士では無いと・・・その魔力量と格好で一般人とは考えられぬが・・・これも異世界人の力なのか?」


 どうも自分の世界へ旅立ってしまったようだ。

 格好・・・?なんか違和感があったぞ・・・?

 おれは自身の体を改めて見回す。

 なんでVRバーチャルリアリティで選択した、漆黒の法衣を着てるんだ・・・

 ご丁寧に金の箱も腰に下がっている。

 幼女はおれの方へ手をかざした後、またもやなにかを考え出してしまった。

 仕方なくおれは、さっきから空気と化している二人の老婆に視線を向ける。

 意味を理解したのか、『双子巫女』が疑問に答えてくれる。


 「あれが『カードの女神』アールカナディア様の、本来のお姿だよ。」


 「そうさねぇ、ただ少しお力を使いすぎたのか、幼生体に退行されておるがね。」


 ふむ・・・『カードの女神』か・・・おれが『リ・アルカナ』をやってたことに、なにか関係があるのかもしれんな。

 その後しばらく『双子巫女』の二人が、現状を教えてくれた。

 神の間の外、おれが召喚された場所は、『精霊王国フローリア』の北端、リラ大平原という荒野に程近い『双子巫女』が守護する結界塔の一つらしい。

 この国は『レイベース帝国』とやらに宣戦布告を受けているらしい。

 どうやら専守防衛の国らしく、藁にもすがる思いってやつで、神代級空間転移魔法『流転』を使用して勇者?を召喚しようとした、と。

 まぁそこに運悪く引っかかってしまったのが、おれたちだってことか。

 神代級と同じ効果を及ぼす魔法は、相当レアだってこともわかってしまった。

 『双子巫女』はこの辺の事情を語ったあと、この魔法を使ったのは自分たちである、もう一人協力者が居るが、そいつは悪い奴じゃないから、どうか悪感情を持たないでやってくれと言ってきた。

 そおいう言われ方したら丸わかりだよな。

 発案がもう一人のそいつで、協力者が二人の老婆な訳だろ?そんで老婆はその一人をかばってるわけだ。

 まぁそいつをどうするかは会ってからだな。


 どうやら『カードの女神』とやらも、自分の世界からもどってきたようだ。


 「あぁ済まない、改めて自己紹介させて頂く。この『リ・アルカナ』の主神『カードの女神』アールカナディアヴェルダーシェだ。呼びにくければ、アルカとでも呼んでくれ。さっきの姿は、初対面の者と会う時のカモフラージュのようなものなんだ。この姿だと、話を聞いてもらうのにも苦労するのでね。」


 なるほど、たしかに幼女の姿でも、どことなく神々しさのようなものは感じるが説得力は無いな。


 「じゃあお言葉に甘えて・・・アルカ様?魔導士ってのは?」


 幼女に様付けで話すのも、なんだか変な感覚だが相手は一応神様なんだ、仕方ないだろう。

 おれがそう尋ねると、彼女は一度頷き答える。


 「そのことなんだが、君・・・ええと、君って言うのもアレだな。名前を教えてもらえるかな?」


 「あぁ、おれは九条聖くじょう ひじり、セイと呼んでくれればいい。」


 自己紹介が済んだところで本題に入ろう。


 「まずセイ君、住んでいた世界のことを教えてほしい。」


 ここは素直に話す所だな、ある程度かいつまんで説明をする。

 大まかな世界のこと、おれたち幼馴染のこと、そしてこの世界と同じ名前のカードゲームのこと・・・

 どう考えても、なにか繋がりがあるとしか思えない。

 幼女はおれの話を目を閉じて聞いていたが、


 「まず身体能力が違いすぎるようだ。たぶん召喚された四人全員が、この世界の英雄と同等かそれ以上。一般人と比べたらそれこそ10倍とかになりそうだよ?それと一つ試してみたい。そのVRバーチャルリアリティとやらでやっていたように、魔導書グリモアだったか?を出してみてはくれないか?」


 と、言ってきた。

 なんだと・・・?魔導書グリモアが現実で出る訳あるだろうか・・・

 だが異世界ならあるいは・・・

 半信半疑、おそるおそるおれはその言葉を口にする。


 「魔導書グリモア


 その言葉に反応し、A4のコピー用紙サイズのカードが六枚、確かにおれの周りに現れた。


 「これは・・・」


 思わず絶句するおれに、したり顔で頷く幼女。


 「セイ君、おそらく考えている通りだよ。」


 (召喚もできるのか・・・?ここは『精霊王国フローリア』だったな・・・ならアイツがいいか。)

 おれの魔導書グリモアに『精霊王国フローリア』縁の盟友ユニットは少ない。

 灰色のカードを一枚タップして、星型の紋章クレストに変える。

 カードを一枚引く感覚、やっぱり来るか・・・。

 おれが『悪魔デビル』と呼ばれるようになった所以の一つ、ありえない引きの良さ。

 それが発動して、おれはそのカードを選択する。


 『霧の精霊を統べる者、全ての姿を得られし者、我と共に!』


 最小魔力で呼び出したそれは、精霊王国フローリアの英雄級盟友ユニット『幻獣王』ロカ。

 本来2m程の大きさの赤い目を光らせ霧を纏う狼なのだが、魔力の注いだ量でサイズや能力が変わる、今回は子犬サイズで目だけが爛々と光っている。


 「主、なにゆえ我輩は、このような姿で・・・」


 非常に不本意そうに尻尾も耳も項垂れるロカ、声がシッブいおっさんなだけに余計哀れだな・・・。おれは現状を説明した。


 「なるほど・・・それでは我輩は箱の中で皆に説明を。」


 そう言って金箱の中へ戻っていく子犬をみつめながら、おれは(そうか、箱の中に皆居るのか・・・)なんて考えていた。

 待てよこれ・・・まさかあいつらも・・・幼馴染たちの顔が脳裏をよぎる。

 秋広は良い、あいつならきっと巧くやる。

 問題はあと二人だ・・・。

 ゴスロリドレスを翻し、得意な得物のハンマーや棍棒等の鈍器片手に、サムズアップで「正義は必ず勝つのよ!」なんてドヤ顔のウララ。

 ありえない程のドラゴンに囲まれて「戦いは数だよ!アニキ!」なんて、某中将様よろしく言ってくる竜兵。

 これ、帝国どころか転移者が『災害ハザード』じゃねーか。 

 やばい、頭が痛くなってきた。


 そこへ、おそるおそる声をかけてくる老婆。


 「坊や・・・今のは・・・。」


 「ああ、『幻獣王』ロカだよ。ここが『精霊王国』フローリアの近くだって聞いたからな。」


 おれが答えると今度は幼女が、得心顔だ。


 「これで確信したよ。セイ君の力にはおそらく奴らの関与があるだろう。」


 また知らないテンプレだ・・・。

 


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