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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
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・第六十二話 『見習い天使』

いつも読んで頂きありがとうございます!

ブクマ、励みになります。


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、これはおれのせいなのか?

 兄貴も確かに無用心だったかもしれない。

 だけど考えて欲しい。

 日本人が「レーダー」と言われて、上空に飛び出すビームを想像できるだろうか。

 これ「レーダー」じゃなくて「レーザー」だろ!?

 当然こんなことしたら目立つわけで・・・。

 招かざるお客さんも、絶賛引き寄せ中だ。

 しかし空から少女が降ってくるのはテンプレなのか?

 でもこいつ、自前の羽根あるしな。

 振ってくると言うか、むしろ攻撃に近い勢いだったが。

 諸事情ににより、身動きが取れなかったおれもかなり危なかったぞ?



 ■



 ビカァァァァァ!!!

 カードから立ち上る、大口径のレーザービーム。

 うおおおお!?

 マジか!

 これレーダーなんてレベルの代物じゃねーだろーーー!

 おれは慌てて『回帰』のカードを『図書館ライブラリ』へ収納する。 

 なんか勢いでちょっと吹っ飛ばされた。

 森の木にぶつかって止まるおれ。


 「主殿!?」「セイ!」「セイさん、これは一体・・・。」


 サーデイン、アフィナ、シルキーが心配して近寄ってきた。

 いや、一体なんなのか聞きたいのはむしろおれだ。


 「サーデイン・・・。」


 おれはサーデインに説明を求めるが、彼はこめかみをポリポリと掻きながら「いや主殿、私だって『精霊王国フローリア』の秘匿魔法である『回帰』が、こんな効果を持つとは・・・。」とのお言葉。

 ふぅ~、そうだよな。

 『回帰』は七つに分割されて長いこと安置されていたらしいし、サーデインが合成してからの力を知らなかったとしても無理は無い。

 ため息一つ、力いっぱい木にぶつかった背中の具合を確かめながら立ち上がる。 

 遺失級の魔法を舐めてたな。

 それなりに背中も痛いし、まったくやれやれだ。

 しかし、どうやらパーツの一つはこれから向かう先。

 『天空の聖域シャングリラ』の王城方面にあるようだ。

 テンプレと言うかなんと言うか、最早トラブルと不安しか感じないんだが・・・。


 「ご主人様、何事です!?ご無事ですか!」


 森の中から周辺警戒させていたエデュッサが、すごい勢いで飛び出してきた。

 うおっ!

 いつもなら余裕で間に合うんだが、痛む背中を気にしていたおれは、咄嗟に避けることをしくじり、彼女の勢いそのままに押し倒された。


 (おまっ・・・せっかく立ち上がったのに・・・。)


 そのままおれは、頭をその胸に抱え込まれる。

 イアネメリラと言い、なぜおれの盟友ユニットはおれを抱きしめたがるのか!

 

 「ちょっ!おま・・・息が・・・。」


 エデュッサのボリュームがあり過ぎる胸のせいで、呼吸が・・・。

 助けを求めて他の連中をエデュッサの肩越しに探すが、サーデインは相変わらずの生暖かい目。

 まるで「わかってますよ・・・。」とでも言わんばかりの眼差しが、非常に鬱陶しい。

 ・・・お前には後で話がある。

 とりあえずは目線で殺意を送っておく。

 シルキーは『回帰』のカードから放たれた、レーザービームの衝撃から、未だ覚めやらぬと言ったところだ。

 立ち上がったは良いが、おろおろと右往左往するのみ。

 まぁ王女さまに変態は怖いよな。

 アフィナはなんか変なオーラを出しながらおれたちを睨み、ブツブツ何か言ってるが良く聞き取れない。

 両の拳を握り締め、なんだかプルプルと震えている。

 良いから早く助けろよ・・・。

 その時だった。

 いつもの危険察知、首筋がチリチリとするような感覚。


 「や、や、や、やっと!見つけましたぁぁぁぁ!!!」


 上空からそんな声が聞こえてきたと思うと、何かがすごい勢いで降りて・・・いや、落ちてくる感じがする。

 

 (くっ、このままでは避けられん!)


 上空から迫り来る何かを、おれは抱きしめるエデュッサごと、身をよじって避けようとするが間に合いそうに無い。

 すごい勢いで落ちてきた何かは、「ふぁぁぁぁぁぁ!!!」などと奇声を発しながらおれたちに向けて一直線。

 そしてその勢いのまま・・・なんとも偶然、運良くというべきか運悪くというべきか、エデュッサの後頭部に直撃して止まった。

 


 ■



 「あふんっ!ご褒美!」「うきゃう~!」


 やっとエデュッサの拘束から逃れたおれが聞いたのはそんな声。


 お尻を上空へと突き上げて、顔面から地面に器用に突っ伏すエデュッサを見て、ため息しか出ない。

 もうブレなさすぎだろ・・・。


 それともう一つの声の主を見つける。

 エデュッサの後頭部にぶち当たって地面に落ちているのは、どう見ても天使族の特徴である白い羽根を一対生やした少女に見えた。

 その少女が跳ね起きて、おれへと詰め寄ってくる。

 

 「セ、セ、セ、セイ様ですよね!?よね?」


 変態より復活が早いとか・・・若干引くわー。

 それにこいつ・・・なんでおれの名前を知ってるんだ?

 サーデインも警戒しておれの側まで寄ってきた。

 ちょうど10歩ほど離れた場所に自然体で立っているが、あれは一瞬で強固な障壁を張れる距離なんだろう。

 リゲルも水場から離れ、アフィナとシルキーを守るような位地へ移動した。

 馬とは言え男の子じゃないか、偉いぞ。

 とりあえずおれは明確に辺答せず、その少女をマジマジと観察した。

 

 年の頃は12,3歳だろうか?

 アフィナよりも幼く見える。

 まるで『地球』で言うところ、秘書官の女性が着ているような、黒っぽいかっちりとしたタイトスカートとブラウスを着ているが、年齢に対し少々背伸びしている感が否めない。

 本来は綺麗にしているであろうその服装も、落ちた衝撃で今はすっかり乱れている。

 髪はイアネメリラのそれよりも、かなり濃い桃色の髪を、肩までで切りそろえていて、その毛先はくるんと内側に巻いていた。

 そして手には羽根ペンと大きなメモ帳。

 

 彼女はおれの視線に気付いたのか、慌てて居住まいを正すとペコリと一つお辞儀する。


 (ん・・・?羽根ペンとメモ帳の天使・・・?)


 何かが引っかかる。

 

 「・・・お前!『見習い天使』キアラか!?」


 「ハ、ハ、ハ、ハイ!そうです!貴方はセイ様で間違いないですよね!?」


 おれは彼女の正体に気が付いた。

 『天空の聖域シャングリラ』の指導者級盟友ユニットで、指導者級としては圧倒的に戦闘能力に乏しいが、その飛行能力はダントツで、どんな天使も追いつけないと言われ、伝令役として20年前の大戦時も戦場を飛び回っていたらしい。

 と、アイツに聞いた。

 おれは・・・彼女を見たことがある。


 「主殿・・・彼女はまさか?」


 サーデインもどうやら気付いたらしい。

 

 「ああ、キアラは・・・ウララが使役していた盟友ユニットだ。何度かVRバーチャルリアリティで呼び出していたのを見たことがある。」


 おれの言葉に深々と頷くキアラ。

 だが、それなら何故?

 今ウララが盟友ユニットを呼び出せる状態には思えない。


 (まさかっ!?)


 彼女も『略奪者プランダー』に奪われ、逆に使役されているとか?

 おれが、一度緩めた警戒をまた強めた事に気付いたのか、大慌てに慌てるキアラ。

 急いで手に持ったメモ帳と羽根ペンを、肩掛けに下げているバッグにしまうと、大袈裟に両手をブンブンと左右に振っている。


 「ち、ち、ち、違います!私は、ウララ様が最後にくださった魔力で活動してるんです!私に与えられた使命は、セイ様にお会いして、この手紙を渡すようにと!」


 そう言って彼女は、バッグから一通の手紙を取り出す。

 確かにこの反応は・・・今まで『略奪者プランダー』に使役されていた盟友ユニットたちの行動とは違いすぎる。


 おれはその手紙を受け取った。

 さっと目を通す。

 そこに書かれていた字は、とても良く見知ったものだった。

 長年おれと共に育った幼馴染の一人、ウララの普段の言動には似つかわしくは無い、けれど彼女の外見には相応しいだろう可愛い丸文字だ。

 手紙は簡潔だった。


 セイへ


 あんたの事だから、きっとここが異世界ってのも理解してるんでしょ?

 もしかしたらもう、帰る手段まで見つけたかもしれないわね。

 あたしはちょっとドジっちゃったわ。

 まぁ自分で何とかするから、あんたは竜のこと頼むわね?

 あっきーはきっと自分でなんとかしてると思うし。

 じゃあまた、『地球』で会いましょ。


 ウララ


 はぁ~。

 思わずため息が零れる。

 今日はため息ばっかりだな。

 ウララの奴、相変わらず男前だが・・・。


 「キアラ、ウララはどうなってるんだ?」


 「あ、あ、あ、あの!ウララ様はなんて?」


 おれは手にした手紙を、そのままキアラに渡してやる。

 彼女はさっと手紙の文面に視線を走らせると、とても悲しそうに肩を落とした。

 そしておれを見上げ、目の端に涙を溜めながら懇願する。


 「セ、セ、セ、セイ様!ウララ様を助けて下さい!」


 おれがそのつもりであることを告げる直前、復活したエデュッサが注意を促す。


 「ご主人様!敵です!」


 おれたちがその声に反応した時には、上空からいくつもの羽音が聞こえていた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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