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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
63/266

・第六十話 『青の城壁』

いつも読んで頂きありがとうございます!

ブクマ、励みになります。


※2/5 修正しました。

 設定上の名前と投稿した文の名前が違っていた><

 『蒼穹の乙女』→『蒼穹の天女』

 2/9 微妙な言い回し修正しました。

 

 異世界からおはよう。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、おれはマジモンの天使と遭遇した。

 兄貴も実際に見たのは初めてだ。

 VRバーチャルリアリティでは、ウララが良く使っていたから、そこまで衝撃ってほどじゃあ無かったけどな。

 クリフォードなんかの話し振りから想像すると、この世界における彼らへの認識は、あくまでも「天使」を自称する有翼種。

 って雰囲気だったが。

 だけど実際目の前に居るとなかなか不思議な感じだ。

 羽根の継ぎ目とかどうなっているのか・・・。

 さすがに頭に輪っか乗ってるのとかは居ないようだ。

 まぁ・・・おれにとっての天使は美祈だk(ry

 ※以下美祈への賛美が続くので割愛。



 ■



 おれたちは、『青の城壁』に一つだけある通用門の前に立っていた。

 全高が3mほど、幅は5,6mくらいか。

 青い不思議な素材でできた門だ。


 (これが青空を魔法で固めたってやつかね?)


 そんな事を考えながら見ていると、門の脇にある小屋のような所から、白い鎧姿の人物が二人現れる。

 白い鎧姿の二人は、厳ついおっさんの天使だった。

 スキンヘッドと髭だるまのおっさん二人に、純白の羽根が生えている。

 むしろ羽根と鎧が豪奢な分、むさくるしさが際立っていた。


 (なんだこれ・・・誰得だよ・・・。)


 二人は油断無く槍を構え、おれたちへ誰何してきた。


 「貴様等は何者だ!なんの目的でここへ来た!」


 おれはサーデインと顔を見合わせる。

 ここまで来る前に打ち合わせは済ませていた。

 サーデインがおれたちの一歩前に出る。


 「おはようございます。我々は旅の殉教者です。旅の途中で傷ついた『一角馬ユニコーン』を保護しまして、お礼にと『虹の橋立』を渡らせて頂きました。滅多にあることではありませんので、せっかくですから『正義神』ダイン様の神殿に拝礼させて頂こうと愚考した次第でございます。私は旅の司祭レフティア。この者たちは、私の旅に付き合ってくれている若者たちですよ。」


 「ほう・・・『一角馬ユニコーン』を・・・。」


 おれたちは、殉教者を詐称できる服装に着替え、本来の姿に戻ったシルキーとリゲルを伴いここに来ていた。

 サーデイン曰く、この国で聖職者は青か白の服装になると言うので、おれもアフィナも自身の本来の服装の上に、白いローブを頭から羽織っている。

 国の内情に詳しいサーデインが、少し階級が上らしい青い法衣を着ていた。

 エデュッサ?

 あいつはメイド服のままだ。

 最初同じように白いローブ着せようとしたら、なんのこだわりか豹柄のローブなんて持ち出してきたので、慌てて止めた。

 一応ミニスカだけはやめさせてロングスカートにさせてるので、司祭付きの女中に見えないことも無い・・・と思いたい。

 交渉は基本的にサーデインに一任してある。

 彼ならそつなくこなしてくれるだろう。


 おれたちは旅の途中で、この地へ巡礼している体を装うことにしている。 

 そしてこの国で、一部神聖視されている『一角馬ユニコーン』を前面に押し出す形で、切り抜けてしまおうというのが作戦だった。

 なんかこの国の守護神である『正義神』ダインの騎獣が、『一角馬ユニコーン』だったとかって逸話があるらしい。

 それと彼らの性質。

 まぁ所謂、処女厨ってのが巫女や司祭なんかの純潔を尊ぶこの国では、非常に琴線に触れるとか何とか。


 「なるほど・・・旅の司祭殿、それは失礼しました。ようこそ、『天空の聖域シャングリラ』へ。」


 二人の門番は、おれたちを舐めるように上から下まで観察した後に、シルキーとリゲルを確認して顔を見合わせ、そう言って頭を下げた。

 どうやらうまくいったらしい。


 サーデインが人好きのする笑みを浮かべ、彼らに握手を求める。


 「いえいえ、門番のお仕事ご苦労様です。」


 ちらっと見えたサーデインの掌には、金貨が握られていた。

 サーデインの握手に応えた門番が驚く。


 「司祭殿、このような・・・。」


 「なんですかな?私は、仕事熱心な門番殿たちとの出会いに感動し、思わず握手を求めてしまっただけですが?」


 サーデインはそんな事を言いながら、彼らににっこりと笑いかけた。

 今、彼の笑顔を見て、絶賛賄賂進呈中と想像できる人など居ないだろう。

 さすが王弟・・・。


 「・・・では、ありがたく。」


 先ほどおれたちを警戒していた時よりすっかり柔和な顔になり、再度深々とサーデインに向けて頭を下げる門番二人。


 「それではどうぞお気を付けて。」


 「ありがとう門番殿、お二人の頭上にも、神の恩寵があらんことを。」


 門番に見送られて『青の城壁』を潜るまで、サーデインは満点の司祭を演じきった。



 ■



 まぁ、サーデインが司祭を演じたと言うのは間違いだな。

 ふと、そんな事を思う。

 サーデインは元から司祭であり、聖職者だ。

 もちろん『正義神』ダインのじゃなくて、彼が異端認定した『混沌の女神』アザレアのなんだがな。

 そして奴のすごい所は、嘘をついていないってことだ。


 確かに服は、門番が誤解するような物に着替えた。

 そして旅の司祭レフティアと名乗る。

 彼は一言も『正義神』ダインの司祭であるとは言っていない。

 そしてレフティア・・・彼の本名サーデイン・L・フローリア。

 ミドルネームはレフティアだ。

 ちなみにクリフォードがRでライティア・・・謁見の間にあった左右の王座に関係してるんだろう。  

 まぁこれは蛇足だが。

 そして最後に言った「神の恩寵がありますように。」

 ここでも『正義神』ダインの名前は出していない。

 いやー、サーデインさん策士スキルが半端ねーな。


 「まぁ、長いこと王弟なんてやってると自然にですよ。」


 おれがそんな事を思いながらサーデインを見ていると、彼は振り返って苦笑いしながらそう言った。

 心読まないで、怖い。


 『青の城壁』から十分に距離を取った所でサーデインが呟く。


 「しかしこの国も変わりませんね・・・。」


 「それは・・・さっきの門番とのやり取りか?」


 おれが尋ねると、「ええ。」と答えるサーデイン。


 「正義、正義と語っていますがね。狂信者と言うべき国民は、実際どの程度なのでしょうかね?少なくとも、先ほどの門番たちのような末端の者には、そこまで考えている節は見受けられないんですよね・・・。」


 確かにな。


 「少なくともおれが門番だったら、こんな怪しい奴らは通さないぞ。」


 自分で言っててちょっと悲しくなったが、サーデインも同意見らしく苦笑いだ。


 「国なんて・・・えてして、そんなもんですよ。」


 少し自嘲気に呟くサーデイン。

 きっと彼も生前色んな体験をしたんだろう。

 長命種であるエルフ族だったのだし、それこそおれたち人族の何倍も。


 「セ、セイ、もうしゃべって良い?」

 

 「ん、ああいいぞ。」


 余計なことを言ってボロが出ないよう、お口チャックを厳命していたアフィナとエデュッサが、ほぅっと息を吐く。

 シルキーもボワンと、音を立てて人化した。


 「んあー、緊張した~。」


 「私もドキドキしたよ。」


 「ご主人様、伽ですか?」


 途端に姦しい。

 それと変態、お前脈絡無さすぎ。

 迫り来る変態を手でいなしながら歩いていると、サーデインがポツリとつぶやいた。


 「せめて『四姉妹』が居てくれたら、もう少しこの国もマシだったんでしょうが・・・。」


 今までも何度か出てきた、『四姉妹』と言う言葉にふと何かが符合する。

 これはもしかしたら、おっさんとは言えリアル天使を見たからかもしれない。


 「なぁサーデイン・・・?」


 「どうしました主殿?」


 自身の中に生まれた疑念を、言葉にするのが一瞬躊躇われる。

 サーデインを始め、急に立ち止まったおれを訝しむアフィナとシルキー。

 隙を突こうとして拳骨であしらわれるエデュッサ。

 ええい、鬱陶しい。


 「『四姉妹』ってのは・・・それ一人でも英雄級、揃えば揃うほど力を増すってアレか?所謂・・・『蒼穹の天女』エナとか・・・。」


 「え、ええ・・・良くご存知ですね。長女が『蒼穹の天女』エナです。」


 マジかー。

 おれ、それ知ってるわ。

 それはつまりもう一つの可能性を示唆していた。


 「サーデインとウララの対面が無かったのが、本当に悔やまれるな・・・。」


 苦々しく漏らしたおれの言葉に、サーデインがさっと顔色を変える。


 「主殿・・・まさか?」


 「ああ、『四姉妹』の内少なくとも三人は、ウララの『魔導書グリモア』で見たことがある。そして彼女たちは等しくPUPAピューパに反応していた。」


 「セイさん、どういうこと?何の話をしているの?」


 シルキーには『カードの女神』の『加護』でカードが使えるって言っただけで、詳しく説明してなかったな。

 不安そうにポニーテールが揺れている。


 「おれたちは、この世界で暮らす者たちのカードを使役している。でも、おれが転移する前に居た世界では、存命中だったり『略奪者プランダー』が握っているカードは、使用できなかったんだ。」


 シルキーの目が驚愕に見開かれる。

 そして残りはアフィナが続けた。


 「つまり、セイとセイの幼馴染たちが使ってたカードって、この世界ではもう死んでる人なんだよ。」


 一瞬静まり返る一同だが、サーデインがその沈黙を破る。


 「主殿、確かに今の統治に助けにはならないでしょうが・・・ウララさんが『四姉妹』のカードを持っている事は、ある意味僥倖かもしれませんよ?少なくとも『略奪者プランダー』に奪われている訳ではないのですから。」


 確かに・・・そうとも考えられるな。


 「じゃあやっぱり・・・少しでも早く助けてあげないとね?」


 アフィナの言葉に、おれとサーデインは改めて頷きあうのだった。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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