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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
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・第五十七話 『裏路地』

いつも読んで頂きありがとうございます!

ブクマ、励みになります。

話数の修正しようとして間違い、削除してしまいましたorz

保存してあってよかった・・・。


 異世界からおはよう。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、君は一体何をしてるんだい?

 兄貴はちょっと心配です。

 異世界転移なんてしてるおれのほうが心配だって?

 いや、それもそうなんだが。

 それでも君のことを案じるのは、おれのデフォなのでわかってほしい。

 夢に見る君はいつも、おれの事を考えているように見えるけど。

 時々、何をしてるかわからない時がある。

 今日もそうだった。



 ■



 久々に夢を見た。

 『地球』に居るはずの最愛の妹、美祈の夢だ。

 おれはまるで上空にでも浮いているかのように、斜め上から美祈の姿を眺めている。

 ちょっとストーカーっぽい。

 許してくださいorz


 その日の美祈は裏路地を歩いていた。

 異世界転移に巻き込まれるまでは、おれや幼馴染たちも良く使っていた道。

 潰れたラーメン屋の看板や、もう何年も廃棄されたまま、電灯がまばらに点るタバコの自販機。

 そこかしこに見覚えがある。

 たぶんおれたちが住んでいた町に唯一の、カードゲーム『リ・アルカナ』をVRバーチャルリアリティで遊ぶことが出来るPUPAピューパという設備があるゲームセンター、『サプライズ』からの帰りだろう。

 そう、おれと幼馴染三人が異世界転移に巻き込まれた、アミューズメント施設だ。

 美祈があそこへと、足しげく通っているだろうことは想像に難くない。


 だが、嫌な予感がする。

 『サプライズ』からおれの家へ、確かにこの道は近道だ。

 繁華街の方からだと、途中に開かずの踏切があるせいで、距離はほぼ同じなのに、倍くらい時間がかかってしまうんだ。

 だけど、時間が少し遅いんじゃないだろうか・・・。

 周囲はすでに真っ暗だ。

 兄貴は言ったよな?

 「遅くなって一人でこの道使っちゃだめだ。」って。

 繁華街から一本だが、この道には少々素行の良くない輩が出没する。

 それは、この平和な町でも何かしら仕事があるんだろうヤの付く強面さんだったり、深夜に騒音を撒き散らし、二輪車で走行することで自身をPRする予備軍の彼らだ。

 おれの通り名が流行った頃に、話し合い(物理)したのも一度や二度じゃない。


 何か考え事をしているんだろう。

 学校指定のブレザー姿、肩からおれが誕生日に贈ったバッグを提げ、とぼとぼと歩いている美祈。

 左手には保護シート(スリーブ)に包まれた一枚のカード。

 おそらくはおれが別れ際に預けた、『蒼槍の聖騎士ガラント・オブ・フィナーレ』ウィッシュ。

 俯いているのではっきりとは見えないが、表情は決して明るいものでは無いんだろう。

 彼女と過ごした10年余り、滅多に感情を露にしない美祈だが、その動作の機微で心情を慮れるくらいには見守ってきたつもりだ。

 

 (これは明らかにおれのせいだな・・・。)


 わかりきったことを反芻する。

 その姿に胸がきゅーっと締め付けられるようだ。

 そしておれの懸念は現実の物になる。


 わき道から「いかにも」と言った体の若い男が三人。

 どこかで見覚えがあると思えば、その当時おれが交渉(物理)で道を譲らせた予備軍の彼らだ。

 奴らは一度顔を見合わせ、下卑た笑いを浮かべると美祈の進路と退路を塞ぐ。

 そこでやっと現状に気付く美祈。

 遅い!遅いよ!

 だからだめって言ったじゃないかー! 


 「い、急いでるので良いです。ごめんなさい。」


 美祈の焦った声が聞こえてくる。

 なぜかチンピラどもの声は聞こえないが、おそらくそういうもんなんだろう。

 それに声が聞こえなくても、言ってることはなんとなくわかる。

 どうせ奴らのボキャブラリーじゃ、テンプレのあの辺だろう?


 「急いでるんだってさー。」


 「かわいいねー。」


 「お兄さんたちが送ってやるよー、ギャハハ。」


 的な。

 なにがおかしいのかわからんが、ゲタゲタと笑いながらしゃべっている。


 (美祈、良いから逃げなさい!)


 おれの声は届かない。

 いや、届いたのか?

 美祈が一瞬、おれの居るほうを見上げた気がした。

 釣られるように上を見上げたチンピラの隙を突いて、駆け出そうとする美祈。


 美祈は逃げ出した。

 だがチンピラAに回り込まれてしまった!

 No!あかんやん。


 カードを持った左手を捕まれ雑居ビルの壁へと、壁ドンされてしまう。

 

 (おまっ!美祈に壁ドンとか!おれもしたことないのにっ!)


 あほかおれ!

 そんなこと言ってる場合じゃなかった。

 事態は深刻だ!

 ニヤニヤ笑いのチンピラAが、美祈の握っていたカードに気付く。

 楽しそうにそれを取り上げる。


 「返して!それはお兄ちゃんの!」


 美祈の悲痛な声が響く。


 (てめーら、ぶっ殺すぞ!!!)


 おれは、心底から殺気を迸らせたんだと思う。

 チンピラたちが慌てておれの居る方へ振り向く。

 確認して「なんだ何もねーじゃんか。」、そんな事を言ってるような体で美祈に迫る。

 その時だった。



 ■



 美祈を壁ドンしていたチンピラAの顔面に、革靴が突き刺さり吹き飛んだ。

 後ろから道を塞いでいたチンピラBは、腹を押さえて蹲っている。

 「何が起きたのかわからない。」そんな表情で驚愕する、チンピラCの即頭部にハイキックが叩き込まれた。

 動き方はおれとは違うなぁ。

 どっちかと言うと、ムエタイとかキックボクシング。

 足技主体で戦う武術に見えた。

 あっという間も無く、チンピラ三人を瞬殺したのはどこかで見覚えのある黒スーツの男。

 美祈を救った黒スーツは、後方に向けて淡々と語る。

 

 「お嬢様、暴漢どもは片付けました。」


 「ええ山本、ご苦労様。みきちゃん、お怪我は無くって?」


 (山本・・・お嬢様?)


 おれが慌てて視線を移すと、そこには金髪縦巻きカールの地雷女・・・。

 自分は何もしていないはずだが、腰に手を当て仁王立ち。

 いかにもな高級車のヘッドライトを背中に、近年まれに見るドヤ顔だ。


 腰が抜けたのかへたり込んでいる美祈を、山本と呼ばれた黒スーツが優しく助け起こす。

 立ち上がった美祈は、目尻に涙を溜めながら・・・。

 地雷女に抱きついた。

 泣きながら叫ぶ美祈。


 「あすかちゃん!怖かったー!」


 地雷女はそんな美祈を優しく抱きとめると、おれが大好きな栗色の髪を撫でながら、「あらあら、もう大丈夫ですわ。家まで送るので安心なさって。」などと声をかけている。

 それをにこにこと見守る黒スーツ。

 外は最早真っ暗で、もとより薄暗い裏路地に、サングラスがキラリと光る。


 (え?何これ・・・。)


 そこで意識が覚醒していく感覚。


 (ちょ、ま、何これええええええ!!!???)



 ■



 「何これええええええ!!!???」


 「ふわあああ!?」


 「な、なにっ!?」


 自分の叫び声で目が覚めた。

 おれの左右の腕に絡み付いていた、アフィナとシルキーも巻き添えだ。

 お前らいつのまにこんなことになってんだよ!?

 寝る時はちゃんと離れて寝たじゃないかorz

 もうなんなの・・・。


 それはともかく。

 夢見が悪いにも程がある!

 美祈さん・・・いつのまに地雷女と仲良く・・・。

 友達は選ぼうよ。 

 それにチンピラの声は聞こえなかったのに、なんで黒スーツと地雷女の声は聞こえるんだよ。

 もう訳がわからん。


 「主殿!?どうされました?」


 おれの叫びを聞きつけたのか、サーデインがテントの入り口を開けた姿で固まる。


 「いやはや、昨夜はおたのし・・・。」


 「サーデイン。今のおれには冗談が通じない。とだけ言っておく。」


 異世界宿屋のテンプレを呟こうとしたサーデインに忠告する。

 笑顔だが目が笑っていないおれに気付いたんだろう、サーデインは静かに頷いた。

 わかればよろしい。


 「ご主人様・・・あたいも混ぜてください!!!」


 はい、わかってない奴が居ます。

 おれは腕に絡みつく二人を振りほどき、変態の頭に拳骨を落とした。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。


※次回は美祈視点の予定です。

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