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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
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・第五十三話 『魔力炉(マナタンク)』

いつも読んで頂きありがとうございます!

ブクマ励みになります。


 異世界からこんばんは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈ともホットラインが繋がらないだろうか?

 兄貴は今切実に願っている。

 思えば『地球』に居た頃は、本当に恵まれていたんだな。

 何にって?

 まぁ色々あるんだが・・・。

 その一つにはやっぱり通信手段があるだろう。

 インターネットやTVでの情報検索然り。

 今時小学生でも携帯電話を持つ時代だ。

 この世界では情報の伝達において、非常に手間がかかる。

 一応ワープや空中飛行なんかで、時間や距離の短縮はできるみたいだが、それはあくまで人づてって事だからな。

 秋広の置いていったミリタリー系の漫画なんかでもよく言われている、「情報は最大の武器」って言葉が、現実として実感できるくらいには思い知らされている。

 そして何より・・・美祈の声が聞きたい。



 ■



 おれは周りを見回す。

 十分に限界と言える状況だ。

 戦える者で無傷なのは、おれとアフィナ、それにおれの召喚した盟友ユニットたち。

 魔物の中ではシルキーと『一角馬ユニコーン』が二、三頭だろうか?


 「サーデイン、アルデバラン魔力はどうだ?」


 「私は問題ありません。」


 「我がきみよ。済まない。少々消耗している。」


 残存魔力の有無を聞き、アルデバランに魔力を譲渡する。

 

 「アフィナとシルキーはどうだ?」


 きょとんとした二人の肩を掴み魔力を流す。

 どうやら結構消耗しているようだ。

 まぁ無理も無いだろう。


 「セイ、ありがと。」


 「・・・セイさんはこんな事もできるのか・・・。」


 二人揃って、おれに掴まれた肩に手を当て顔を赤くする。

 意味がわからない。

 ちなみにカーシュには空を飛んでいる間に、十分な量を譲渡していた。

 しかしこの魔力ってのも、自然に使ってはいるがよくわからんな。

 まぁ使えるものは使わせてもらう。

 それにしても・・・おれの存在が『魔力炉マナタンク』染みてきた。(遠い目


 だが、この戦力なら非戦闘民?獣?を守りながらでもなんとかなりそうだな。

 もちろん最早逃げるつもりはない。

 こうなってしまったらもう、殲滅してしまった方が良いと思う。

 幸い、さっきアルデバランがこじ開けた道を埋め尽くせるほどの、残存戦力は無いようだしな。

 問題はあの『大王陸亀キングトータス』もどきの赤いゼリーだろう。

 

 「アルデバランはエデュッサとスイッチ。サーデインはアルデバランの補助をしながら、赤いゼリーを障壁で閉じ込めるようにしてみてくれ。アフィナとシルキーで防御結界できるな?エデュッサとカーシュはおれと来い!」


 おれの指示に「「「了解。」」」と答え、あっというまに陣形を整える盟友ユニットたち。

 アフィナやシルキーは一瞬戸惑っていたが、指示通り他の『一角馬ユニコーン』や『水晶鹿クリスタルディアー』なんかと防御結界を展開しようとしている。

 逡巡してもしかたないだろう。

 おれと盟友ユニットには絆的なものがあって、思考が伝わりやすい。


 おれの横へ並んだエデュッサに、無言で魔力を譲渡する。

 何も言わなかったが、相当に消耗しているはずだ。

 

 「ご主人様、ありがとうございます。」


 敵と対峙しているというのに、丁寧なお辞儀をしてくるエデュッサに、「よくがんばったな。」とねぎらいの言葉をかけ、二秒で後悔する。


 (なんでお前は脱ごうとするんだ・・・。)


 「ご褒美は体でおね・・・」


 変態発言を拳骨で強制的に打ち切った。

 おれの基本の集中姿勢。

 肩幅に開いた両足、腰だめに拳を構える。

 大きく一つ深呼吸。

 所謂、丹田の構えって奴だ。

 へその辺りに生命力というか、なんか熱い力が溜まって行くのを感じる。

 まぁ気のせいかもしれないが・・・。


 「ばかやってないで行くぞ。カーシュも行けるな?」


 【英雄よ。任せろ。】


 おれたちの仕事は、有象無象の魔物たちを蹴散らすことだ。

 カーシュが全身に風の刃を纏い始める。

 そして彼の代名詞、『疾風怒濤』が発動する・・・!



 ■


 

 ドゥッ!そんな音を響かせながら、おれの拳が打ち抜いた『赤熊レッドベアー』最後の固体が、倒れ伏し光の粒子に変わっていく。

 激戦はかなり続いた。

 おれたちは、約二時間は戦い続けていたんじゃないだろうか?

 ドラゴン来襲に端を発したこの戦闘は、昼過ぎから最早すでに夕暮れ、という時間までかかっていた。

 最初にかけた運動強化魔法、『幻歩ファントムウォーク』の効果もとっくに切れている。

 カーシュとエデュッサも、全身細かな傷だらけ、肩で息をしているが一応は無事だ。

 おれは後半、完全に素で戦っていたが無傷だ。

 むしろ素で戦えている姿に自分でも引いた。

 おれはいつ人間やめたんだろう・・・?


 それはともかく。

 非戦闘獣たちと共に、防御結界の中で青い顔をしているアフィナとシルキーは、おそらく魔力切れが近いんだろう。

 

 そしてアルデバランとサーデインは、おれの指示通り赤いゼリーを障壁に閉じ込めることに成功したようだ。


 「なんとか・・・なったな。」


 おれが呟くと同時に、アルデバランとサーデイン以外は最早限界とばかり、地面に崩れ落ちた。


 「主殿・・・。これはあくまで応急処置です。」


 おれが赤ゼリーの閉じ込められた障壁に寄っていくと、サーデインが報告してくる。

 まぁ・・・そうだろうな。

 予想はしていた。


 (だがこれどうしたもんか?)


 サーデインが作った箱型の障壁に阻まれながらも、その障壁を諦めずゴンゴンとたたき続ける赤ゼリーを見つめ、半ば以上途方に暮れる。

 どう考えても放置して良い物には思えないが。

 

 (とりあえず倒した魔物たちのカードを回収しよう。)


 少々現実逃避しつつ『図書館ライブラリ』を開いた時だった。

 それまで油断無く、赤ゼリーを睨みつけていたアルデバランが振り向く。


 「我がきみ、これを。」


 そう言って鎧の肩甲部分を開くと、そこから一枚のカードがおれに向かって飛んでくる。

 器用な真似するなぁ。

 受け止めたカードを確認して、頭に?が浮かぶ。

 

 「『吹雪竜帝ブリザードドラゴンロード』・・・?なんだこりゃ。」


 「先ほど王に処理を任されたドラゴンだ。」

 

 え?

 おれがアルデバランに任せたのは・・・『氷竜アイスドラゴン』ですよ?

 『吹雪竜帝ブリザードドラゴンロード』ってほぼ英雄と同格の指導者級なんだが・・・。

 ましてドラゴン族は、等級よりも実物の方が強い場合が多々ある。

 まずデカいしな?


 「アルデバラン・・・コレ、倒して、きたの?」


 思わずカタコトになりかけるおれ。


 「ああ、我が彼奴に止めを刺そうとしたした所、面妖な鳥面が現れてカードを使った。」


 「・・・そしたら『氷竜アイスドラゴン』が、これになったと?」


 アルデバランの言葉を引き継ぐと、彼は大きく首肯する。

 色々マジか・・・。

 鳥面そっちにも行ったんかい。

 どうりで将軍級の『氷竜アイスドラゴン』相手に時間かかったと思ったが・・・。

 そういうことは早く言おうよ。

 

 「それでその鳥面は?」


 「我が睨むと、あっという間に何処かへ。」


 んー、逃げの一手か。

 一貫してるな。

 

 そしておれが『吹雪竜帝ブリザードドラゴンロード』のカードを、仔細に観察していると突然頭に声が響いてきた。



 ■




 【・・・ニキ・・・アニキー!】


 うお!

 なんだこれ。


 【アニキ、聞こえるー!?】


 おれのことを「アニキ」って呼ぶ奴は一人しかいない。

 

 【・・・竜兵か?】


 【おおおおおおお!!!繋がった!!!じっちゃん、繋がったよ!!!】


 頭の中で竜兵の声がワンワンと反響する。

 うん、これかなりうるさい。


 【お竜ちゃんや、落ち着きなされ。】


 こっちはバイアか。

 一体何事だ?


 【バイア、居るなら説明してくれ。竜兵は少し黙っとけ。】


 【アニキー!そんなぁー!】


 それから騒ぐ竜兵を宥めつつ、バイアが説明してくれる。

 どうやらバイアの『特技スキル』の一つ『竜脈』で、指導者級以上のドラゴン族とリンクできること。

 更に竜兵が『涙の塔』を守護する『闇の乙女』サリカに会いに行き、『魂の首飾り』の破片をゲットしたらしいこと。

 その破片から『竜の首飾り』なるものを作り出し、リンクしたドラゴンを通じて『念話テレパシー』を行使できるようになったこと。

 『乙女ネットワーク』改め、『ドラゴンネットワーク』らしい。

 神々や自然が産み出す『謎の道具ミステリアグッズ』自作とか・・・どんだけー。


 【アニキ、おいらアクセ作りとか好きだったじゃん?】


 たしかに竜兵は『地球』に居るとき、シルバーアクセとか作っていたな。

 いや、そういう問題か?

 だが待てよ・・・。

 確かにおれも料理が好きだった。

 この世界でおれたちのチートっぷりは、その辺にも現れているのかもしれないな。

 だとすると、秋広の服飾コスプレ関係とかも、強化されている可能性はあるな。

 まぁウララは・・・お察しください。


 それはともかくだ。

 おれは竜兵に現状を説明した。

 各国の秘匿魔法でもおれが覚えているものは多いはずなんだが、鳥面が使ったと思われる魔法?もしくは盟友ユニットカードに全然予測がつかない。

 もしかしたらおれの記憶に無いそれを、竜兵が知っているかもしれないと思ったんだ。 

 

 【アニキ・・・おいら、あれからもずっと考えてたんだけど・・・。この世界・・・カードゲームの『リ・アルカナ』に似てるけど、異世界。それはわかってるんだけどね・・・。】


 少し言い辛そうに、言葉を切る竜兵。

 なんだ?


 【アニキ・・・これって、これってさ!『無制限アンリミテッド』なんじゃないの!?だとしたら・・・おいらたち・・・。】


 竜兵が堪え切れない。とばかりに漏らした言葉に、おれは絶句した。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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