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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第二章 天空の聖域シャングリラ編
54/266

・第五十一話 『冥王騎士』

いつも読んで頂きありがとうございます。

投稿遅れましたorz



 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょうひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈にこの盟友ユニット見せた事があったかな?

 兄貴の『魔道書グリモア』には本当に色んな奴等が居る。

 浪人に堕天使、子犬や変態。

 中には脛に傷持つような輩も居るだろう。

 ジェスキスを召喚することわりの文言にも、『砂漠の瞳』を追われた者っていう記述があるくらいだしな。

 それでもおれは彼らのことを気に入っている。

 どいつも皆、それぞれの信念や矜持を持って生きてたってのが自ずとわかるからな。

 それにこの世界で初めてロカさんを呼んだ時、彼が言った言葉。

 「我輩たちは皆、主が好きだから従っているだけである。」

 彼らがおれに向けてくれる想い同様に、おれも彼らのことを信じ敬っていると思える。

 きっとこれこそが、おれたちにとっての真実であると何故かはっきり言えるんだ。

 注:変態は除く



 ■



 サーデインが産み出した、二重の障壁の向こう側。

 金箱から飛び出した黒い影を、おれは『悪夢』と称した。

 彼がおれの召喚に応えてこの世界に顕現する際、障壁の向こう側では、漆黒の剣閃が吹き荒れた。 

 魔力障壁にも何本もの剣閃はぶち当たったが、防御と補助がメインのサーデインが全力で張ったそれを破るまでには至らない。

 正確には一枚は破っているが、もう一枚に被害が及ぶ前にサーデインが、新しいものを張りなおしているので事無きを得ていると言う所かもしれない。

 おれはサーデインに魔力を補填する。


 しばらくして舞台が落ち着き、サーデインが障壁を解除する。

 漆黒の剣閃によって上がった砂煙が晴れた時、向こう側はちょっとしたスプラッター映画のようになっていた。

 すでに満身創痍だった『翼竜ワイバーン』たちの姿は無い。

 いや、正確にはかつて『翼竜ワイバーン』だった者たちの、破片というか部品というか・・・。

 まぁ皆まで言わずとも後は察してほしい。

 都合6体分の光の粒子を撒き散らし、カードに転じた『翼竜ワイバーン』がおれに向かって飛んできた。

 

 さすがに大型のドラゴンは即死こそしていないようだが・・・。

 その巨躯のあちこちに漆黒の剣閃を受けたのであろう、深く鋭くその肉を抉り取られて、痛々しい姿へと変貌していた。

 片腕や翼を軒並み持っていかれた個体も居る。

 それでも他の4体を盾にしたのか、はたまた彼らが身を呈してその1体を守ったのか。

 詳細は不明だが、ほぼ無傷に見えるドラゴンが1体。

 最も大きいサイズ、8m級の青い竜『氷竜アイスドラゴン』だけは健在だった。


 そして生き残りのドラゴンと、おれたちの間には一体の全身鎧が立っている。

 磨き上げられた黒曜石のようなその鎧、全身に突起物や刃が付けられており、身を守ると言うよりもどちらかと言えば、大群に突っ込みその身を使って敵を傷つけることを目的として作られているように思える。

 所謂アレだ。

 某国民的コンシューマーゲームに登場する、呪われた鎧。

 ヤイバの鎧的な物を想像して頂けたらほぼ正解である。


 身長はおれよりやや大きくて、約2mくらい。

 両手で腰だめの位置、捧げ持つようにしているのは、自身の身長よりも長い3mはありそうなサイズの大鎌。

 その刀身は分厚く、斬ると同時に傷口を抉る効果もあるように見受けられる。

 そしてつなぎ目に当たる場所からは、常時仄暗き青い炎が吹き上げていた。

 本来兜の隙間、目が見える所からは青い燐光が光っている。


 『砂漠の瞳』に所属していた悪魔族、死神種の盟友ユニット、『暗黒騎士』アルデバラン。

 いや、違うな。

 今の彼は、『冥王騎士』アルデバランだ。

 瞳に当たる部分から燐光を放ちつつ、振り向いたアルデバランがおれの姿を見止めて、声をかけてくる。

 

 「王よ・・・我がきみ命令オーダーを・・・。」

 

 どこか機械質なその声で、アルデバランはおれを王と呼称した。



 ■



 この状況を作り出した張本人でもある彼のことを、少し説明しよう。

 『暗黒騎士』アルデバランは、数多く存在する悪魔族の中でもこれまた特殊な、死神種という盟友ユニットだ。

 その大鎌を得物に、戦場に死を届ける騎士。

 彼には肉体が存在しない。

 あえて言うならば、その仄暗く燃える青い炎が彼自身らしい。

 その魔力で漆黒の鎧を動かす、いわば『動くリビングアーマー』が彼のスタイルだ。


 カードゲームの『リ・アルカナ』の設定では、1000年近く暗殺者として生きてきた彼を、『砂漠の瞳』の長であった『金色こんじきの瞳』リザイアが単騎で調伏したことにより、『砂漠の瞳』に忠誠を誓う騎士になったらしい。

 しかし彼も、20年前の大戦でその身を消失させたんだろう。

 今ではおれのことを王と呼び、仕えてくれている。

 

 アルデバランは悪魔族なこともあって、専属召喚『魔王の左腕』召喚も補助できるが、その詠唱速度はイアネメリラの三倍ほどかかり、正直実戦レベルには達していない。

 そして本来、彼の等級は指導者級。

 階級だけで言うならば、英雄級であるロカさんやアリアンの方が強いことになる。


 しかし今回、彼を呼び出した際に振るわれた猛威は、そんな次元を遥かに超越していると言えるだろう。

 もちろん『リ・アルカナ』において、等級による優劣と言う物は大きな意味を持つ。

 だが『大将軍』ガイウスのように、英雄級とは程遠い実力しか持っていない者も居るし、逆にカードの組み合わせや相性によっては、指導者級で神すら倒すことも可能だ。

 特にこの異世界においては、カードに書かれているテキストだけでは、とても判断できないような事例がままあった。


 けれどアルデバランに関しては違う。

 この結果は起こりうるべきして起こった事。

 正確には、おれがそうさせたんだ。

 秘密は彼のテキストにある。


 【能力アビリティ『冥王化』アルデバラン召喚時に、紋章クレスト瞳を4追加することにより発動。指導者級『暗黒騎士』より英雄級『冥王騎士』へと進化し、攻撃力及び防御力が飛躍的に上昇。また、召喚後最初に降り立ったエリア全体へ、その攻撃力分のダメージを与える。】

 

 つまりはそういうことだ。

 本来なら瞳の紋章クレスト三つで召喚できるアルデバランを、あえて紋章クレスト七つで召喚することによって、その力を英雄級まで進化させ、なおかつ召喚時に範囲攻撃を行える。

 ただ問題なのは、その攻撃がエリア全体へ及ぶこと。

 幸いそこまで広範囲のエリア指定をしないので、おれとサーデインさえ避ければ後は、自ずと敵に当たるっていう寸法だった。



 ■



 アルデバランのおかげで形勢逆転したな。

 またしても手札が無くなったが、背に腹は変えられないって奴だ。

 しかしこの世界に来てから、本当に手札の枯渇に悩まされる。

 この『魔道書グリモア』、ほんとどうなってんだ。

 いや、そういうカードを選んだのはおれでした。


 「アルデバラン、ドラゴンを任せて良いか?」


 「我がきみ、王に疑問は不要。貴方はただ、命じれば良い。」


 おれの問いへ返答を返しながら、ゆっくりと振り向いたアルデバランは、生き残った手負いの大型ドラゴン4体、それにほぼ無傷の『氷竜アイスドラゴン』を睨みつけ、大鎌の石突きを地面へトンっと降ろした。

 生き残りのドラゴンたちは、無理矢理使役され明確な意思を持てずに居ても、やはりその覇気に気圧されているのだろう。

 互いに緊張感が高まっていくのがわかった。

 それにしても・・・。


 (固い、固いよアルデバランさん・・・。)

 

 元暗殺者とはいえ、そこはさすが騎士と言うべきか。

 サーデインも思わず苦笑している。

 おれが背中越しにかけた「じゃあ、任せるぞ。」の言葉に、「命令オーダーを拝命した。これよりドラゴンの殲滅を行う。」と、やはりどこか機械的な口調のアルデバラン。

 そして彼は、一度地面へ立てた大鎌を腰だめの位地に構えなおす。

 その姿を見計らったように、手負いの4体と『氷竜アイスドラゴン』がアルデバランに襲い掛かった。

 アルデバランは、手負いのドラゴンが放った豪腕をあっさりと両断する。

 そしてそのまま前進しながら、まるで紙製品を切り裂くようにドラゴンたちを屠っていく。

 2体屠った所で、他の個体を押しのけるようにして、半ば味方まで巻き込みながら突進してきた『氷竜アイスドラゴン』をヒラリと跳躍することで避け、空中で制動した。

 いつのまにかサーデインが、遠隔障壁の応用で空中に足場を作っていたようだ。


 「助力に感謝する。」


 アルデバランはドラゴンを見据えたまま、サーデインへ淡々と礼を告げ再度跳躍すると、着地までの一瞬に大鎌を二回振るう。

 その大鎌の一閃、正確には二閃によって、手負いのドラゴン2体は悲鳴すら上げられぬままに、胴体と首がお別れした。

 そしていつも通り光の粒子を撒き散らし、カードに変わった所でおれは右手を伸ばす。

 大型ドラゴンのカード四枚を、即座に『図書館ライブラリ』へ収納。

 残りは最早、ほぼ無傷とは言えいかにも力不足に思える、『氷竜アイスドラゴン』が1体だけだ。

 アルデバランが、大鎌を頭上で回しながらおれを促す。


 「我がきみ、こちらが終わり次第合流する。ここは任されよ。」


 (どうやら心配する方がばからしくなるようだ。)


 おれとサーデインはその場を彼に任せ、未だ喧騒渦巻く草原の魔物側へと移動する。

 さてどうするか。

 サーデインと並走しながら考える。

 おれだけ先行することもできるが、冷静なサーデインに状況を見てもらいながら進んだ方が間違いないだろう。

 焦る気持ちを理屈で押し付ける。

 視認できる範囲では、魔物たちにまだ大きな被害は無さそうだが。

 それでも徐々に、押し込まれている感は拭えないな。

 

 エデュッサやアフィナ、それにシルキーたちが居るであろう先頭集団は、敵方の魔物がまるで壁のようになっていて見ることが出来ない。


 (ったく、どんだけ居るんだ?)


 とりあえずあいつらと合流しないことには・・・。

 おれは手近の魔物を殴殺しながら、魔物の壁を押し進んだ。

 


ここまで読んで頂きありがとうございます。

こんおままでは仕事で日曜がががorz

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