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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第一章 精霊王国フローリア編
27/266

・第二十五話 『スタイル』

ブクマ、評価、感想ありがとうございます!

励みになります。


※2/13 誤表記修正しました。


 異世界からこんにちは。

 おれは九条聖くじょう ひじり、通称『悪魔デビル』のセイだ。

 美祈、優しい君ならアイツと、友達になってくれるかもしれないな。

 兄貴にはちょっと無理そうだ。

 あの残念は仲間・・・ではないし・・・

 手の掛かる妹って感じかなぁ?

 竜兵と歳も同じだしな。

 君と違って、どこへ行っても予想の斜め上で失敗する奴なんだ。

 もちろんおれにとって、最愛の妹は君だけだ。

 なんたっておれの辞書の『妹』のとこには、「めがみ」ってルビ振ってあるからな。



 ■



 今日はもう昼になったので、『涙の塔』行きは明日に延期した。

 ちょっと大臣の件でゴタついたからな。

 おれたちはゆっくり話すために、謁見の間から大食堂へ移動した。

 クリフォードが言った、「そう言えば朝から何も食べていないな、セイもアフィナも空腹ではないか?」の言葉に、テンプレでアフィナが腹の虫を鳴らしたからだ。

 おれの作ったものが食べたいと言うアフィナに、「マヨネーズを作るなら、作ってやってもいいぞ。」と言うと、全力で首を横に振ったので、これはしばらく使えそうだ。


 この大食堂、50人程度が同時に食事できそうな大部屋なのだが、特に何か無ければクリフォードも同じ場所で食事するらしい。

 一国の長とは思えない距離の近さだな。

 食堂には今、おれたちしかいない。

 おれたちというのは、おれとアフィナ、クリフォード、セリシアと羽根妖精二人だ。

 テーブルに並べられたのは丸パンに薄切りのハム、生野菜のサラダっぽいやつと果物か。

 お茶だけはおれが淹れた、作り置きの紅茶っぽいものを出してやろう。

 紅茶っぽいものを一口飲んだアフィナが、「・・・やっぱりセイが作った・・・」と呟いたので、おれが目線を合わせて「マヨ・・・」と言うと、慌てて視線を逸らした。

 そんなにいやか。

 そういえばこの世界に来てから、米を見ていないな。

 テンプレの異世界物よろしく、白米には苦労しそうだ。

 美祈の作った、炊き込みご飯とお味噌汁が食べたいです。

 一息ついた所で、おれと幼馴染たちの話をしようか。


 「おれは悪魔族、堕天使、闇精霊等の盟友ユニットと、闇炎系の攻撃魔法を好む、身体強化魔法と拳で戦う。」


 「・・・なるほど、それで『幻獣王』ロカか。」


 クリフォードが得心顔で頷く。


 「ロカさんはおれの主力だな。次は竜兵か。」


 「竜兵っていうのは、おれの弟みたいなもんだな。あいつは・・・とにかくドラゴンだ。ドラゴン族をこよなく愛す。本人は両手剣使ってるな。こいつには、『ルビー』か『トパーズ』があれば助かるだろう。」


 セリシアがメモを取り始める。


 「姿は目立ちそうか?」


 クリフォードの問いに、おれは首肯で答える。


 「この世界では余り見たことが無いような格好をしているだろうな。半袖半ズボンに、つば付きの帽子を被ってるんじゃないかな・・・。」


 「それは確かに目立ちそうだな・・・」


 クリフォードはそう言うが、今のところ該当する容姿に心当たりも無さそうだ。

 もう一週間近く、この世界をうろついてるが、あいつもどこに飛ばされたやら・・・。


 「次はウララだな。この世界に転移したと思われる、おれの幼馴染たちの中で唯一の女だ。」


 「その娘はどんな特徴だ?」


 ウララか・・・。

 特徴がありすぎて逆に怖いな。


 「綺麗な黒髪のツインテール、黒い瞳のとんでもない美少女だ。・・・見た目はな。」


 ウララの説明をした所で、アフィナが息を呑む。

 なんだ?


 「・・・その人はセイの・・・?」


 何が言いたい?

 幼馴染だと言っているだろう。

 呟くアフィナを無視して話を進める。


 「アイツは・・・天使族しか使わない。肉体強化魔法と回復魔法に特化してるな。服は・・・ピンクのなんかヒラヒラした奴だ。得物は巨大な鈍器。」


 ゴスロリ魔法少女風の服なんて、どう説明したら良いんだ?

 おれの大雑把な説明だが、クリフォードたちがひっかかったのはそこでは無かったらしい。


 「「「・・・巨大な鈍器?」」」


 クリフォード、アフィナ、セリシアが揃って首を傾げる。

 そこか?

 羽根妖精二人はその三人の上を、忙しくくるくる回っている。

 お前ら居たんだな。


 「かじきー?」「違うよーマグロだよー。」


 違います、魚は鈍器ではありません。

 カジキもマグロの仲間だしな。

 

 疑問顔のままクリフォードが、「鈍器とは・・・どのような?」と聞いてくる。


 「んー、良く使ってるのは、ハンマーとか棍棒だな。基本的には柄の付いた硬いものなら何でも良いとか言ってたな・・・あっでも、その辺にある岩とかでも普通に殴ってくるからな?」


 ドン引きする面々。

 まぁ気持ちはわかる。

 とんでもない美少女が、その辺の岩をぶん投げてくる映像。

 うん、おれも実際に見てなければ信じたくないな。

 でもアイツ、おれの『魔導書グリモア』と一番相性悪いんだよな。

 序盤一気に押し切れないと、無尽蔵の回復で逆にボッコボコにされるからな・・・。

 ああ、そうだ。

 あとアレがあった。


 「あと、ウララは・・・胸が『リラ大平原』だ。」


 「ん?それはどういう・・・?」と言うクリフォードに、「凹凸が無いってことだ。」と答えると、なぜか物凄い寒気がした。

 おーこわ、新人類かしら・・・。


 「ウララに必要なのは『サファイア』だけだ。次は、秋広だな。」


 天使は『サファイア』の産む紋章クレストしか必要としないからな。

 そこは純粋に羨ましい。

 秋広は『氷の大陸メスティア』に居るっぽいんだけどなー。


 「セリーヌ様が感知されたかもしれないと言っていた?」


 ポンと手を叩いたセリシアに、首肯で答える。


 「秋広は・・・簡単に出会えるかもわからんが・・・。うーん、アイツどう説明したら良いんだ?」


 おれは少々困った。

 秋広のスタイルは、独特すぎて説明が難しい。

 とりあえず容姿か。


 「青い縁取りと、金糸で刺繍されたようなロングコートを着ているが・・・アイツのことだ、たぶんうまく隠してると思うんだよな・・・。あとは・・・眼鏡だな。」

 

 ド近眼だから、変装してたにしても眼鏡ははずさないだろう。


 「その子のスタイルは?」


 クリフォードに問われるが・・・ああ、そうだ。

 特徴というか、教えても連絡を取る事の解決になるかはわからんが・・・。



 「アイツのスタイルは『狙撃』だな・・・。」


 「「「・・・狙撃?」」」


 またも声を合わせる三人。

 この世界だと、あんまり馴染みの無い言葉なのかもしれないな。


 「長弓とか、魔銃なんかを使ってな、超長距離から対象を攻撃するのが得意なんだ。盟友ユニットは色々使うからわからないな。」


 よく「僕の後ろに立つんじゃない。」とか言ってたな。

 一番ひどかったのは例のアニメの影響で、「狙い撃つぜ。」って言って、眼鏡をクイっとした時だな。

 おれと竜兵は流してたけど、ウララの逆鱗に触れて・・・「なんかむかつく!」って言われて『サプライズ』のコインロッカーに連れ込まれた後、二度とそのセリフは言わなかった。

 うん、黒歴史だ。

 忘れよう。


 「秋広には一応『エメラルド』と・・・できたら『パール』だな、アイツはたしか『深海王国ヴェリオン』の盟友ユニットも使ってたはずだ。」


 「なるほど・・・まぁ各々の容姿はわかった。異世界の魔導師はやはり変わっているな。どこかで目撃情報があれば、顔を繋ぐようにしよう。」

 

 気を取り直したクリフォードが言うが、おれは注意を促す。


 「竜兵と秋広はそれで良いけどな。ウララに関しては、不用意な接触は気をつけてくれ。」


 「どういうことだ?」


 訝しげなクリフォード。


 「いいかクリフォード。ウララは、見た目こそ美少女だが・・・呆れるほど沸点が低い。そして必ず口より先に手が出る。この異世界でどうなってるかわからんが、下手に触ると・・・文字通り蒸発するぞ。」


 またもや食堂が静寂に包まれた。

 だって生身の人間がハンマーでぶっとばされて、ミンチになるとこ見たくないだろ?



 ■



 「セイは、友達がいっぱいいるんだね。」


 「友達・・・と言うか、腐れ縁だな。」


 話が一段落するとそんなことを言うアフィナ。

 むしろ確認しなおすと、おれの幼馴染たち怖いわ。


 「ボクなんて、友達一人も居ないし・・・」


 そんな事言って、タハハって笑われたらさすがにかける言葉が無いぞ?

 空気と化していた羽根妖精が、アフィナの前でくるくる回る。


 「ボクたちが友達になってあげるー。」「違うよー、もう友達だよー。」


 ちょっと涙ぐむアフィナ。

 微笑ましい光景に見えるが羽根妖精A、人差し指を一本出して光らせるのはやめろ。

 自転車があったら、空飛んじゃうだろ?

 羽根妖精Bがおれに寄ってきて、耳元で囁く。


 「アフィナが、友達にしてほしそうな目であなたを見ている。友達にしますか?」


 ⇒ はい

   いいえ


 んー、とりあえず「いいえ」で。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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