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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第五章 亡国トリニティ・ガスキン編
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・第二百五十一話 『憑依蜘蛛(ポゼッションアルケニー)』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^

 おれは即座、出発の準備にかかろうと踵を返す。

 間際、突如後ろ襟をむんず。

 去り際の一シーン、普通なら颯爽と・・・とか形容詞が付く場面だぞ。

 誰の仕業かって?言わずもがなウララ様だよ。

 

 「待ちなさい!あたしも見送りに行くわ!」


 見送りは良いけどお前、首グイーンってなったんですけど?

 思わず「ぐえっ」とか声が出そうになって必死で止めたわ。


 「それなら撫子も行く~。」


 便乗する形、撫子姉さんがさっとおれの腕を取る。

 クリフォードやサラも自然にそれに倣おうとしたのだが・・・。


 「クリフォードとサラはだめよ!二人は、ホナミとガウジ・エオに結界を張ってもらうわ!」


 無慈悲な女神の神託である。

 目に見えてしょんぼりするエルフの王と銀髪の天使。


 「わ、私はどうしようか?」


 サビール氏・・・影が薄すぎて忘れてた。

 いやむしろ、あえて気配を殺していたのかもしれない。

 なんでって?

 ウララが怖いからだろ・・・。


 「待機!」


 ウララ・・・その人も一応偉い人だから!指差すのやめれ!

 がっくりと項垂れたサビール氏を含め、三人には気の毒だが、ウララの言う事にも一理ある。

 ただ・・・このメンバーで言えば、ウララや撫子姉さんも・・・つまりおれ以外なら、結界やら障壁やらはできたはずなんだが。

 ツッコまない方が良いんだろうな、たぶん、おそらく、きっと。

 

 ともあれ、恨みがましい視線を向けられながらも連れだって三人、客室の扉へと向かう。

 撫子姉さんはおれの腕を完全にホールド。

 放してくれって言っても・・・聞きやしないだろう。

 ウララが横目でおれの腕と撫子姉さんの接点を伺っている。

 

 「セイの・・・エロ魔神!」


 「・・・誤解だ。」


 状況をちゃんと見ようぜ?

 おれは何もしてないだろう・・・。

 撫子姉さんはと言えば、「あらあら、くすくすー。」と更に圧迫を強めるのみ。

 姉さん・・・「くすくす」は口で言うもんじゃ無いと思うぞ?

 なんかこう、理由は良く分からんが・・・撫子姉さんがウララをからかっている感じなんだろうな。

 そこはさすが撫子姉さんか。

 おれたち幼馴染の姉貴分をしていただけの事はある。

 下手な人間がそれをやれば、己が命を縮めるだけ。

 未だ気絶中のカリョウとテンガが良い見本だ。

 いや、あいつら別にウララをどうこうした訳じゃ無かったんだけど・・・南無。


 「いつまでもばかなことやってないで!さっさと行くわよ!」


 そっぽを向いて扉を開け放つウララに続き、おれと撫子姉さんも退室。

 一応言っとくがウララさん、障害になっていたのはむしろお前だ。

 はぁ・・・とにかく、ロカさんとアフィナ、シルキーを拾って移動しよう。

 

 (あ・・・だけど、どうやって行くんだ?)


 当初はガウジ・エオが同行する予定だったからな。

 なんか「あたしに任せときな!」的対応でごまかされてしまったが、結局道程の話を何も聞いてないじゃねえか・・・。


 (最悪、また船か?)


 でっかなイカさんがタイガーホースになりかけてるんだが、まさかそう何度も・・・。

 待て、この考えはまずいぞ。

 所謂フラグって奴だ。


 そんな益体も無いことを考えながら扉をくぐれば、廊下の向こうから聞きなれた足音と声。

 ズダダダダダッ!


 「アニキーーーー!」


 「主ーーーー!」


 竜兵の手にはしっかりと一枚のカードが握られている。

 どうやらヴェルデの母親は取り戻せたようだ。

 ん?だけど・・・カードから時折、なんか黒いモヤが出てる感じだな。

 

 (ロカさんが何かしたのか?)


 黒いモヤ・・・で何となくだが、ロカさんの闇の力だと当たりを付ける。 

 おれたちの前まで来て急制動、手に持ったカードを差し出した。

 揃って覗き見れば、やはり『嵐竜ストームドラゴン』のイラストに蜘蛛の巣が張っている。

 表示名は『憑依蜘蛛ポゼッションアルケニー』。

 案の定と言うか何と言うか、盟友ユニットカードに寄生して不意打ちをする盟友ユニットのようだ。

 しかし今は、そこから多脚が飛び出すことも無く、一定間隔で黒いモヤがカードを覆う。


 「アニキ!なんとか捕まえたよ!今ロカさんがあの蜘蛛・・・『憑依蜘蛛ポゼッションアルケニー』を抑え込んでくれてるって!」


 「そうか、ロカさん良くやってくれた。」


 「なんのこれしき!」

 

 飛びついてきたロカさんを抱え上げて労う。

 だが、これで大団円とはいかない訳だ。

 カードを取り返した喜びもつかの間、竜兵の顔色が曇る。



 ■


 

 容易に想像の付く話だった。

 現状、『嵐竜ストームドラゴン』・・・ヴェルデの母親のカードから、『憑依蜘蛛ポゼッションアルケニー』を引き離す手段がわからない。

 出来る物なら既にやっているだろう。

 それが、ロカさんが封じ込めるにとどまった理由だ。

 

 「じっちゃんもこんな盟友ユニットは見たことが無いって・・・。無理矢理引きはがしたら最悪・・・。」


 皆まで言わずとも、その場に居たメンバーは続きの言葉を理解する。


 「ヴェルデには・・・?」


 おれの問い、力なく首を振って答える竜兵。

 そこで思い出したように彼は叫んだ。 


 「そうだアニキ!エオ姉なら何かわかるんじゃないかなって!それにホナミ姉のことはどうなったの?」


 「「「・・・・・・。」」」


 言葉も無く、ハッとするウララと撫子姉さん。

 おれ自身、眉がピクリと動いてしまった。


 「何が・・・あったの?」


 竜兵は場の雰囲気に聡い奴だ。

 それだけでただ事では無いだろうことを察してしまった。

 百聞は一見に如かず、おれたちは今退室したばかりの客室の扉を開ける。

 ベッドの上・・・横たわるホナミに手を当てた賢者。

 それを覆うクリフォードの緑色結界と、サラの銀髪から漏れ出た輝き。

 だが、ホナミもガウジ・エオも石像そのもので。

 明らか異常であることだけが一目瞭然。

 

 「そ・・・そんな!一体・・・何が!?」


 竜兵はその場に膝から崩れ落ちる。

 おれは彼の手を取って立たせ、その瞳を覗き込んだ。


 「竜兵、二人は生きている。」


 まだ動揺が治まっていない・・・続ける。


 「ホナミに『告死蝶コールド・バタフライ』がかけられた。ガウジ・エオは緊急措置で自分とホナミの時間を止めた。それがあの結果だ。」


 「『告死蝶コールド・バタフライ』・・・時間を止めた・・・。」


 もごもごと呟き反芻、竜兵はおれの端的な言葉から状況を必死に想定しているのだろう。

 呆然から戻ってくる意志、やんちゃな鳶色の瞳は彼らしい輝きを取り戻す。

 『地球』の知識から、答えの一枚を導いた。


 「ならアニキ!『生命ライフリングフラワー』!でも・・・おいらもウラ姉も・・・なで姉も無いよね?」


 目まぐるしく回転しているであろう竜兵の思考は、答えを見つけたがゆえに袋小路。

 そこまで至っているなら、おれが伝える言葉は簡単だ。


 「竜兵、『生命ライフリングフラワー』はある。」


 「・・・どこに?」


 「『亡国』トリニティ・ガスキンだ。」


 「そんな!そんなことって!」


 余りにも出来すぎてると思うよな?おれだってそうだ。

 テンプレとフラグの神様が大名行列。

 だが、それが事実なら選べる答えは一つだけ。


 「竜兵、おれは・・・すぐに出る。」


 ウララや撫子姉さんも居る。

 言葉には出せない、視線で語る。

 こっちは任せろ、だからお前は皆を守ってくれ・・・と。

 言うなれば、男の約束だ。


 「・・・わかった!」

 

 一瞬の躊躇、しかし頼れる弟分は・・・言外に告げた言葉すら把握して頷いた。

 そうして四人になった『地球』組、幼馴染のメンバーはその場を後にする。


 途中、バイアに引率されたアフィナとシルキーを拾い門前の広場。

 何だかんだいつものメンバー。

 おれとロカさん、アフィナにシルキー。

 最寄りは竜兵とバイア。

 四人を見送るため、少し離れた場所にウララと撫子姉さん。

 二人に抱き上げられたヴェルデとリューネ。

 それからポーラとポーレ長老、王二人の代わりだろう氷人族と雪人族の面々。

 各人、急な出発とこの場に居ない彼、彼女に思うことあれど敢えて訪ねては来ない。

 きっと、おれたちが出発した後、結構な騒ぎになるだろう。


 「ねね、セイ?出発は良いけどどうやって行くの?」


 一同の視線にいたたまれなくなったか、小声で尋ねてくるアフィナ。

 正直・・・おれもそこは気になっているのだが。

 ただ、竜兵が何とかすると言ったのしか聞いていないんだよな。

 満を持して、何処か聞き覚えのあるセリフを放つ竜兵。


 「こんなこともあろうかと!」


 掲げた一枚のカードを具現化、そこに現れたのは・・・。

 例のドリルな船を一回り小さくしたようなサイズ、しかし形はそっくりな・・・『潜水艇』?


 「「「・・・船?」」」


 全員の声が綺麗にハモっていただろう。

 ウンウンと頷いた竜兵は、満面の笑みにサムズアップで言うのだ。

 

 「そう船。・・・但し、『潜水艇』じゃないよ。おいらが作ったのは・・・。」


 溜める竜兵。

 いやな・・・いやな予感がする!


 「おいらが作ったのは『飛空艇』さ!飛ぶよ!」


 ちょ!竜兵ぃぃぃ!?自重ぅぅぅ!






ここまでお読み頂きありがとうございます。

お読み頂いている皆様のおかげで、ついに一周年を迎えることが出来ました。

一周年の節目にブクマも500になっていて「すわっ!?」と思ったり思わなかったりw

まぁすぐに減ったりするかもしれませんが^^;

お礼のSSも考えつつ、これからもお読み頂けるよう更新を続けます。

変わらぬご愛顧お願い致します^^

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