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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第四章 氷の大陸メスティア編
246/266

・第二百三十七話 『騎士達の栄光(ナイツ・オブ・グローリー)』

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ、評価、感想励みになります^^




 おれの裏拳がノモウルザの頭部を捉える。

 確かな手ごたえに魔力を振り絞り、「なんちゃって発剄」を追加。

 身体に満ち満ちた炎の魔力を送り込めば・・・自ずと巻き起こる爆発。

 

 「うううるうがああああ!!!」


 頭部を半ば融解させながらもしゃにむに、もはやなりふり構わずに暴れるノモウルザが上体を逸らす。

 因みに・・・グロ映像じゃないぞ?

 当初からその片鱗はあったのだが、どうもノモウルザ・・・雪と氷で出来た生物?のようである。

 まぁ正直、そうとでも言われなければ納得いかない光景を幾度も見た。


 (あれ?でも・・・元は巨人族とか言ってなかったか?)

 

 そういう種族だったのか、はたまた神となった時に得た能力なのか。

 疑問は残るが考察は後にしよう。


 悪あがきでも多少の効果はあったのか、頭部を逸れ後方へ流れていく爆轟。

 しかし・・・。

 爆炎が命を得たかの如く動き、奴の頭上で大翼を、嘴を、爪を持つ白き炎鳳へと形成する。


 「クァァァァ!!!」


 放たれた炎を媒介に具現化したトゥラケインが、ノモウルザの全身を舐めるように蹂躙していく。

 

 「やめっ!はなぜっ!ぐおおおお!」


 言葉を詰まらせ矢継ぎ早、棍棒と言う得物すら手放した巨体の神は、今はひたすら・・・自身を炎に巻き込むトゥラケインの分体を引きはがそうと掻き毟る。

 見た目こそ『白炎鳳』トゥラケインそのもの。

 彼の盟友ユニットも・・・常人ならまだしも、『氷雪神』の力であれば跳ね除ける力があったのかもしれない。

 いや、さっきビキニのお姉さんが素手で引き裂いていたような・・・。

 やめよう、あの人物も間違いなく常人では無い。


 「セイ!」


 (まじか!これもだめなのか!)

 

 青いおっさんより背後の味方によっぽど恐怖を覚えながら、逸れかけた思考を軌道修正。


 ともあれ白炎の鳳凰にしか見えないそれ、実体は『祝福ブレスドされた痛撃ストライク』を纏うおれから放たれた攻撃の一部。

 それが、ノモウルザには理解できないようだった。


 「なばっ!なずぇ!?」


 鳳凰に触れた指先から水蒸気と化し、或いは雪や氷の断片となって溶けていく。

 逆属性に対する『貫通』の特性が、おれや竜兵の攻撃すら無効化していたノモウルザの内面深くまで浸透しているようだ。

 奴はもう詰んでいる・・・それでもだ、まだ足りない。

 次手は決まっている。

 着実に弱っていく祟り神をおれが黙って見ているとでも?

 答えは否、相手は神、最後まで容赦も遠慮もしない。

 今こそ・・・この地域に根差した悪意を断ち切る時だ。


 炎の翼をはためかせて突っ込む。


 (これで・・・決める!)


 連撃ラッシュ、トゥラケインの分体に意識を逸らした反対から。

 奴の巨体・・・その全身へくまなく左右の拳、踵落としに回し蹴り、肘や膝も織り交ぜて。

 着弾地点で断続的に発生する小爆発。

 爆発に煽られてよろめくノモウルザが、苦し紛れの反撃をしてくる。

 無造作振るわれた剛腕の一撃を宙返りで回避。

 追い打ち、更にノモウルザの溶けた身体から、立ち込める水蒸気から氷柱や氷刃が襲い掛かる。

 点や線では無く面でのそれ、避け切るのはさすがに難しい。

 しかし・・・。

 カッ!バシュウッ!

 額に熱を感じた途端、熱源から放たれた・・・ビームが凶器の類を薙ぎ払う。


 (・・・ビームて・・・!)


 『地球』の人間ならばつっこまずにはいられない。

 次いで翼が大きく前面に盾の如く展開する。

 迎撃のビームを潜り抜けた残弾も、炎の翼を貫くことはできなかった。 


 【守リハ任セヨ!『悪魔デビル』!】


 意識に直接届く声・・・『念話テレパシー』は、当然おれの中に存在するトゥラケインの意志。

 回避もオート、敵弾には迎撃のビーム、更には炎の翼・・・今のおれは正しく『氷雪神』の天敵。


 (やべぇコレ・・・まじで便利すぎる。)


 なんだか自分の感覚が鈍ってしまいそうなほどの高性能だ。

 

 そんな風に思っていた時がありました。

 どこまでもいけそうな全能感から、急転直下の倦怠感。

 理由は明確だった。

 魔力の枯渇。

 それは・・・すっかり小さくなってしまった翼を見れば、一目瞭然だろう。

 もう空中を自在に飛ぶことはできない。

 おれはこの世界でも馬鹿げたサイズの魔力量を保有していたはず。

 にも関わらず、自身の中にある魔力が尽きかかっている。


 (燃費悪ぃ・・・!)


 そうなのだ。

 圧倒的火力と防御の優位性を確保したトゥラケインとの融合。

 『白炎鳳』が本来おれの盟友ユニットでは無いからか、それとも神すら圧倒する力を引き出しているからか・・・とにかく行動の度にどんどん魔力が消えていく。


 だが、攻撃の手は止めない!

 もはや不要となった翼を消し、額と足に纏う魔力も消す。

 全てを両の掌に集め、半ば以上崩れたノモウルザの胴体・・・その中心へ叩きこむ。

 ドン!

 ぶち当てた瞬間、衝撃で奴の身体に蜘蛛の巣状のヒビが入る。

 解放、『ソウル攪拌ミキシング』を解除して叫ぶ。


 「トゥラケイン!行けぇ!」


 「クァァァァ!!!」


 最後におれの魔力をごっそり奪いながら飛んでいくトゥラケインが、ノモウルザの身体を完全に貫いた。



 ■



 ノモウルザの全身は既に人型を保てなくなっていた。

 ぐずぐずと溶け、空間へと広がっていく間に・・・各所から光の粒子を撒き散らす。

 見慣れた光景。

 この世界に住む存在がカードへと転じる前兆。

 

 「オ・・・オオ・・・オオオ・・・。」

 

 口・・・どころか、顔があった場所さえ見分けがつかないのだが、膨大な量の光の粒子と共に耳へ流れてくる呻きのようなもの。

 その巨体ゆえか、神と言う存在ゆえか、どうやらすぐに『カード化』してくれる訳じゃ無さそうだ。

 たぶん放っときゃ復活するとかありそうだし、さっさとアルカ様にでも奉納したかったのだが・・・。


 (そもそもカードになるんだろうか?)


 そんな思考とは別に、おれの前へ滑り落ちてくる一枚のカード。

 掌にするりと納まったそれには、燃え上る大翼を広げた一羽の鳥が描かれていた。

 もはや『念話テレパシー』で語り掛けてくることも無いカードが、おれの掌の中ほんのりと熱を持ったように感じた。


 (・・・トゥラケイン。)


 思うこと、当然の色々ある。

 ただ、それがこの盟友ユニットと使役者だった魔導師の願い。

 おれは『白炎鳳』のカードを『図書館ライブラリ』へ収納する。

 正直今はまだ整理しきれないし、感傷に浸るのはまだ早い。

 わかっていたはずなのに、気付けばテツの落とした金箱に目線が向いていた。

 箱は・・・その時のまま、床に転がっていた。

 無意識、それが余りにも切なくて・・・不用心にも手を伸ばす。


 「アニキ!」


 竜兵の切羽詰まった声に振り向くのと、さっきまでとは戦場の様相が変わっている。

 『暴風の騎士』ダンテの振るう双刃を、大剣でいなしている竜兵。

 バイアも大盾を前面に構えた『大地の騎士』ゴリアテを前に攻めあぐねている。

 更にはアルデバランも、いつのまにか再召喚されたであろう『白騎士』レオナルドに阻まれ、『千年手ミレニアム』に陥っている。

 まさか・・・ロカさんたちがやられたとは思えない。

 現に神殿の扉は閉じたまま。

 ダンテやゴリアテが駆け付けた形なら、神殿の扉は開いていないとおかしいだろう。

 おそらくおれの仲間たち、ロカさんやポーラの足止めよりもこちらに戦力を集中する為、『配役キャスティング』辺りで呼び寄せたんだ。

 奴らの思惑通り、危険すぎる魔導師二人が完全にフリー。

 おれはノモウルザに注視するあまり、戦況の変化に全く気付けていなかった。


 サカキとレオの悪あがき・・・では無い。

 何故ならこんな状況になる前に、或いはなってしまったとしても頼れるはずの存在が、今完全に押さえつけられている。

 それも、この場には存在しえない異物イレギュラーによって・・・。

 

 「なん・・で!なんでお前がここに居る!ティル・ワールドォ!」


 そう、稀代の大賢者であるガウジ・エオは、忽然と姿を現した翼人の攻撃魔法を防ぐので精いっぱいだったのだ。

 三枚翼のその男、おれの叫びも一切無視。

 ガウジ・エオの結界により一層負荷をかけていく。

 ビシリ・・・ビシリ・・・と結界にヒビ。

 丁度ドーム状、守りの上を這いまわる紫電に、ガウジ・エオの額を汗が伝う。


 「セイィ!長くは持たないよ!何とかしなぁ!」


 魔女が発した言葉にティル・ワールドはボソリ、「・・・老いたな。」と一言呟いた。


 「なぁんだってぇ!あたしゃ永遠のピッチピチだよ!」


 激昂、彼女の身体から迸る魔力に、結界が気持ち持ち直す。

 それでもあれはまずい。

 浸食は目に明らか、突破されるのも時間の問題だろう。

 戦況の変化に気付けなかったミスも、テツに対する感傷も今は後だ。

 『ソウル攪拌ミキシング』の効果を途中で切り離したおかげか、必要最低限の魔力は残っている。

 彼我の距離を一息に、残りの魔力を拳に集中させて駆け寄る。


 「おおおらぁ!」


 今日一番、捻りの効いた正拳突きは・・・果たして翼人には届かない。


 「それは・・・痛そうだな・・・。」


 相変わらずボソボソと、小さく呟いた男はおれの拳が届くよりも早く、上空へと退避済み。

 まるで・・・おれの行動を事前に読んでいたかのような動きだった。

 そのまま数度羽ばたき、サカキとレオのすぐ横に降り立つ。

 距離が離れたおかげでガウジ・エオの結界は守られたが、それ以上に意味不明。

 まさかティル・ワールドも『略奪者プランダー』なのか?

 最大級の混乱と困惑が襲い掛かってくる。


 「全く・・・今回は見ているだけのはずだったのだがな・・・。おい、これは貸しだとツツジに言っておけ・・・。後は貴様らで何とかしろ。」


 「ああ・・・助かった。」


 おれたちの驚愕も他所に、淡々と言いたいことだけを言っている雰囲気のティル・ワールドに、言葉少な謝辞を述べるレオ。

 サカキは逆に何を言うでもなく、懐へ手を突っ込んだ。

 

 「させるかぁ!」「やらせんぞい!」


 二人揃ってダンテとゴリアテを力尽くで吹き飛ばし、雄叫びを上げ肉薄する竜兵とバイア。

 もちろんおれもそれに追走。

 距離はあるが、後詰めでも良い。

 しかし、それを制するようにレオの魔法が発動する。


 『騎士達ナイツ・オブ栄光・グローリー


 瞬間、神殿を煌々と照らす白、緑、黄・・・三色の光。

 光の先には武器を眼前に立てた三人の騎士が立っている。

 そして竜兵とバイアが振りかぶっていた得物は、奴らの遥か手前で止まっていた。

 『障壁』、そうとしか形容できない見えない壁により。


 「うわぁ!」「なんとぉ!」


 更に叩きつけた得物の勢いそのまま、後方へ吹き飛ばされる竜兵とバイア。

 『騎士達ナイツ・オブ栄光・グローリー』・・・三人以上の騎士を使役していることによって発動できる防御魔法。

 その効果は正に絶対防壁。

 神による攻撃ですら威力そのままに跳ね返す。

 並び立つ騎士の間を縫うように、一枚のカードが飛んできた。





ここまでお読み頂きありがとうございます。

良ければご意見、ご感想お願いします。

いつの間にか1000pt越えてました、あざぁーっす!

変わらぬご愛顧下さる皆様はもちろん、新たに読み始めて頂いた方々にも心よりの感謝を!

お礼にSSを書こうと思いつつ、「土曜出勤だったな・・・。」近々公開予定です。

次は500ブクマ目指して(*´ω`) 


※いよいよメスティア編クライマックス!

長引いておりますが、あと数話お付き合いくださいませ!

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