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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第四章 氷の大陸メスティア編
242/266

・第二百三十三話 『竜棍』

お待たせしました!

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^

 

 竜兵、アルデバランと並び立ち、ノモウルザ及び『略奪者プランダー』二人と相対する。

 ぼわん・・・見慣れた煙を上げて、バイアがドラゴン姿からいつもの仙人風、人型へ変化した。

 それを見てノモウルザ、おれとの会話以上に迸る冷気を強める。

 

 「竜の爺・・・何の真似だ・・・?」


 ノモウルザと言う巨人が居るにも関わらず、体格的には不利となる『人化』。

 あえて・・・だろう。

 バイアが先ほど寄越した『念話テレパシー』ではっきりと言っていた。

 おれと竜兵に神殺しを成してもらうと・・・。

 つまり、あの青いおっさんはおれたちに任せるってこと。

 そして『人化』したバイアのターゲットは、サカキとレオって寸法だ。


 「ふぉっふぉ・・・お竜ちゃん、こないだのアレはあるかのぅ?」


 神の威圧を物ともせずにバイア、竜兵に軽い調子で問いかける。


 「うん、あるよ。じっちゃん使って。」


 竜兵が手札の一枚へ手を滑らせ、魔力を込めたカードをバイアに渡す。

 バイアの手元、形作られる竜の装飾施された棒・・・『竜棍』。

 ヒュンヒュン数度振り回し、連結部のギミックを操作して頷くバイア。

 

 「また・・・しばらく借りるぞい?」


 バイアの言葉に竜兵が「うん!」と、元気よく返答し、蚊帳の外なおっさんがキレる。


 「何の真似だと聞いたぞ!爺ぃぃぃ!」


 相変わらず沸点が低いな。

 勢い任せ、ノモウルザの周囲に煌めく雪の結晶が、凶悪な氷柱になっておれたちへ降り注ぐ。

 

 「やれやれ・・・。」


 ふぅっとため息、バイアは人型のまま・・・口から『吐息ブレス』を放出した。

 さすがにドラゴン姿ほどの範囲は無いが、正面の氷柱は全て融解。

 おれたちに被害は一切無い。

 と、思ったら・・・。 


 「ちょいと爺!あたしらの分も消しな!」


 背後から怒声、次いで響くガインガインと硬い何かと何かがぶつかる音。

 確かめるまでも無く声の主は、当然『真・賢者』ガウジ・エオ。

 そして硬い物同士がぶつかる音は、ノモウルザの飛ばした氷柱・・・バイアが消し漏らしたそれを、彼女が防いだ音だろう。

 ガウジ・エオはキアラとホナミ、それにカリョウとテンガを結界で守りつつ、ドヤ顔で腕組みしていた。

 この人にノモウルザ任せた方が良いんじゃないのか?って気がしてきた。


 「だめだよ。それは男の仕事だよ。」


 ふぁっ!?おれ、声出してませんけど・・・。

 いたって普通に、おれの思考と会話する賢者に困惑。

 現実に引き戻したのは好々爺の声だった。


 「ふぉっふぉ・・・すまんのぅ、小娘。」


 (小娘て・・・。)


 バイアとガウジ・エオ、及び青いおっさんことノモウルザの関係性が全く見えてこない。

 雰囲気的には明らか旧知の仲っぽいのが更に・・・。


 それはともかく。

 思わずつっこんでしまいそうになった。

 おれは悪くないと思うぞ。

 だって・・・一万年生きてるらしいんだぜ?

 見た目とか完全に20代後半くらいだけど。

 何と言うか、アリアムエイダの『人化』モードよりも若いくらい?

 まぁ、ガウジ・エオの倍生きてるバイアからすれば十分小娘なんだろうが・・・。

 なんだこの釈然としない感じ。


 「セイ・・・なんか言いたいことでもあるのかい?」


 「・・・いや?何も無いぞ?」


 おれの声・・・震えてないよね?

 背後からどうやっておれの気持ち伺ったんだよ・・・ナチュラルに心読んでくる賢者怖い。

 バイアはガウジ・エオを「小娘」呼ばわりして、おれと竜兵へ茶目っ気たっぷりのウィンク。

 

 「こっちは任せて、お竜ちゃんと兄者君は伸び伸びやりんさい。」

 

 一言、そして・・・走った。

 ビシッ!


 「悪戯をするのはこの腕かのぅ?」


 「ぐぁ!」


 誰もが反応できなかったバイアの一歩。

 『竜棍』で強か手首を打ち据えられ、サカキが手にしていたカードを取り落とす。

 どうやらノモウルザの派手な動向の影、密かにカードを準備していたらしい。

 本当に油断も隙も無い。

 あっちはさっき竜兵に切られた後、つなげたばっかりの腕じゃないか?

 自業自得とは言え、正に傷口へ塩を塗り込まれた形。


 「わしはおんしに用があるしのぅ。」


 蹲るサカキにバイアは冷徹、追撃の打ち下ろし。

 からがら、転がって避ける鳥面。

 竜兵と話している時の好々爺の姿、そこには無い。

 用と言うのは・・・当然『竜の都』のドラゴンたち、その魂とも言えるカードのことだろう。

 さっき竜兵が『嵐竜ストームドラゴン』だけは回収していたが、犠牲者はもっとたくさん居たはずなのだから。


 「サカキ!」


 無論じっとなどしていられないレオ。

 件の胡散臭い挙動、白ローブの懐へ手を忍ばせる。

 

 「アルデバラン!」


 「御意!」


 あのよろしくない動きを看過できるはずもない。

 声かけと共に投擲された大鎌が、弧を描いて獅子面へ飛翔する。

 狙いは正確、全力で避けなければ・・・腰から上と下がお別れすることになるだろう。


 「こっ・・・のっ!」

 

 慌てて仰け反り大鎌を避けるが、その時にはすでにアルデバランが詰めていた。

 凶悪な衝角を備えた肩甲を前面に、ショルダータックルで迫る。

 あえなくお一人様脱落か?とも思ったが・・・。


 「ワシを無視するなぁぁぁ!!!」


 怒号、ノモウルザがレオとアルデバランの間に氷壁を形成した。

 ドゴッ!

 肩口から氷壁に突っ込んだアルデバランは動きが止まる。

 そこへ、高角度から一気に振り下ろされるノモウルザの棍棒。

 だが・・・それがアルデバランを打ち据えることは叶わない。

 なぜなら・・・。


 「「てめぇの相手は、おれ(おいら)だ!」」


 おれのフックと竜兵の横薙ぎの一撃が、ノモウルザの巨体を支える膝でクロスした。



 ■



 ガゴスッ!ゾンッ!

 

 「ぐがぁぁぁ!!!」


 悲鳴を上げよろめき膝立ち、体勢を崩す青い巨人。

 その間に氷壁から身を引きはがし、アルデバランはレオに追撃をかける。

 痛撃を撃ち込んだはずのおれと竜兵は・・・。


 「「かってぇ!」」


 二人揃って腕が痺れていた。


 (くそー、まじか・・・さすが本体だわ。)


 不意も突いたし、結構な力も込めた。

 だがしかし、以前張り倒した分体よりも遥かに硬い。

 音こそ抜群だったが、おれの打撃は元より、竜兵の大剣による一撃でも奴の傷は浅かった。

 それでも多少か傷は入っているのだが・・・本来血が流れるべきであろうそこから漏れ出すのは、極寒・・・液体窒素とでも言うべき冷気の奔流。

 傷口はビキビキと音を立て、あっという間氷の膜で覆い隠された。

 うん・・・これたぶん、『再生』に近い現象と思われる。


 「うげー、インチキくさー!」


 言ってやるな竜兵、気持ちはわかる。

 幸か不幸か奴のヘイトは、完全におれたちへ固定されたらしい。

 まぁ、おれたちを狙ってくれるならそれに越したことは無い。

 

 「アルデバラン!レオを自由に動かせるなよ。バイア、奴らが懐に手を突っ込んだら注意しろ。カードが来るぞ!」


 仲間たちと作り出した得難い隙に、アルデバランとバイアへ指示を出す。

 同時に返ってくる「相分かった!」「御意!」の頼もしい応答。 


 「神と相対しておきながら・・・他者の心配か・・・ワシも舐められたものだ!」


 相対して距離を取ったおれと竜兵を、交互睨み付けるノモウルザの目は怒りで完全に血走っていた。

 身体から生じる冷気も鋭さを増している。


 「楽に・・・死ねると思うな!生きたまま内臓はらわたを引きずり出してやる!」


 膝立ちから立ち上がった奴が、おれたちへ向け言い放ったのはそんなセリフ。

 ノモウルザの口上を聞いて、竜兵が何とも言えない表情になる。


 「アニキ!アニキ!」


 訝しみながらも目線で「なんだ?」と問えば、予想外の言葉が返ってきた。


 「今のヤラレフラグだよね!?あきやんが言ってた!」


 「・・・まぁ・・・テンプレだな・・・。」


 それ以外どう言えと?確かに・・・敵がハラワタ云々言い出して現実になった試し、古今東西見たことないけども。

 おれも確かに、ありきたりなセリフだなーとは思ったけども。

 純真な竜兵に何教え込んでるんだ・・・秋広ェ・・・。

 見ろよ、青いおっさんブッルブル震えてるじゃん。

 どうすんだこの空気。 


 「ころ・・・ころ・・・殺ぉぉぉぉすぅぅぅぅ!!!」


 ほら怒ったぁ・・・いや、もうすでに怒ってたけどね?

 

 「あ!それもパターンだよね!?」

 

 やめてやれ竜兵、おっさんのHPはすでに0よ!

 もはや言葉も無く、ノモウルザはめったやたらに棍棒を振り回す。


 まぁ・・・そんな適当な攻撃は当たらないんだけども。

 逆にガウジ・エオが守ってくれてるとはいえ、けが人居る方狙われたりする方がずっとしんどかった訳で・・・。

 ともあれ、暴風さながらの棍棒を容易く回避しながら、おれと竜兵はノモウルザにヒット&アウェーで攻撃を加えている。

 完全に回避している相手の攻撃もさることながら、おれたちの方も残念ながら効いているようには見えない。

 こいつ、純粋な物理攻撃にやたら強い。

 かと言って魔法攻撃に弱いって訳でも無いけどな。

 事実、おれの「なんちゃって発剄」でも大した効果は得られなかった。

 さて・・・どうしたもんか。


 「よっ!はっ!アニキ!手札は、あと、何枚?」


 竜兵は確か残り三枚のはず。


 「ふっ!おらぁ!二枚だ!」

 

 おれたちは、ノモウルザと戦いながら普通に会話する。

 その態度が、更にノモウルザの頭に血を上らせていく。

 何か言えばフラグだテンプレだと言われたことが堪えたのか、完全にキレてる顔つきのくせに黙々と棍棒を振り回すのみ。

 「キレてないっすよ!神キレさせたら大したもんですよ!」って幻聴が聞こえてきた。

 いかんいかん、真面目にやろう。


 しかし・・・このままじゃ双方決定打に欠けたまま。

 今の所はバイアとアルデバランが、『略奪者プランダー』二人組を完全に牽制しているが、こちらが長引けば何をしでかすか未知数。

 できればあいつらには、このまま大人しくしていてもらいたい。

 そんなちょっとした焦燥の中、竜兵がそれに思い当たる。

 

 「アニキ!ウラ姉のアレは?」


 問いかけに首肯で返せば、「さすがアニキ!」とサムズアップ。

 その間もノモウルザの猛攻は続いているがどこ吹く風。

 「アニキが引いてるなら・・・。」呟いた竜兵は、『魔導書グリモア』を展開し、二枚のカードをタップした。

 カードが解け空中へ漂うのは、炎を模した紋章クレスト三つ。


 「アニキのルートはおいらが開ける!」


 勝利へのルート、正にそのための布石を打つと宣言する竜兵。

 おーけー、おれはお前を信じるぜ!






ここまでお読み頂きありがとうございます。

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