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リ・アルカナ ~彼方からの旅人~  作者: -恭-
・第四章 氷の大陸メスティア編
236/266

・第二百二十六話 3vs1

お待たせしました!

いつもお読み頂きありがとうございます。

ブクマ励みになります^^


※シルバーウィーク頂いておりました!

英気を養い更新再開であります('◇')ゞ


 聞きなれぬ声と共に飛来した火弾の群れ。

 キュド!ドココココッ!

 着弾、太鼓のような音を立てて巻き上がる紅蓮。

 傍から見たら、おれは炎の城壁に覆い尽くされたように見えただろう。

 

 「我がきみぃ!」


 炎の狭間からおれの身を案じるのはアルデバランの声。

 駆け寄ろうとするアルデバランを、さっきまでと逆転レオナルドが押し留める。


 「邪魔だ!」


 「それはこちらのセリフ!」

 

 そして『宿敵ライバル』の効果が発動、相も変わらず黒と白の戦いは『千年手ミレニアム』。

 しかし・・・アルデバラン、今はレオナルドに集中しろ。

 なぜなら、おれは無傷なのだから。


 熱量を感じた時には、すでに身体が動き出していた。

 いつもの危険察知さんありがとうである。 口調からして新手の『略奪者プランダー』。

 蹲るレオと諸共かと思ったが、射線は横合いから・・・着実におれだけを狙っている。

 『魔導書グリモア』からカードを選択。

 カードに魔力を込め、即座に解放する。

 光の粒子へと転じるそれが、おれの言の葉で明確な効果に変わった。


 『フレイムライドり』


 炎が噴き上がる寸前に逸らした足裏に、魔力の粒子が集束。

 おれはその足で炎を蹴り上げる。

 瞬時、おれの管理下に置かれる炎の波。


 「やーれやれ、完全な不意打ちだと思ったんだがなぁ。」


 軽口、完全に姿を現した蛇面白ローブの目線は、炎の中に居るおれを見据えている。

 炎の中と外、期せずして絡み合う視線。

 その光景を端目で捉えたか、アルデバランも落ち着きを取り戻す。

 忠義に厚い奴の事だ。

 おそらく早くレオナルドを倒して、明確な敵の増援に対処したいとか思っているんだろうが・・・。  

 レオナルドがアルデバランを倒せないように、アルデバランもレオナルドを倒せない。

 少なくとも横やりが入らない限り。


 (とりあえず問答無用!)


 先に仕掛けてきたのは向こうだ。

 ご丁寧に御用伺いする必要も無い。

 むしろ要件など知れている。

 ダガンッ!

 音たてて踵、床面を踏み抜く勢いで叩きつける。

 途端、一時の落ち着きを見せた炎の波が、意志を持って・・・正確にはおれの意志を反映し、炎の河に転じ蛇面の『略奪者プランダー』に襲い掛かった。

 隙を突き、蛇面の方へ逃げようと転移するレオ。

 いつぞやに見たものより、随分と飛距離が短い。

 遮るように炎の河を操り妨害。

 たたらを踏んだところで追いつき、容赦なくローキックで転ばせる。


 「ぐあっ!」


 (弱点見たりってとこだな。)


 たぶんあのチート能力、本人の体調が大きく関係するのだろう。

 あとは時間か・・・。

 頻度もそれなりに限られるのだろう。

 推測に過ぎない以上は油断できる問題じゃないが、そう考えないとこの追い詰められた状況で、レオが逃げないのも説明できない。

 

 その様子に「うわぁ、容赦無いねぇ?」などと言っている蛇面。

 迫りくる炎の河に狼狽える様子も無い。


 「魔導書グリモア


 宣言と共に、奴の目の前・・・A4のコピー用紙サイズ、カードが五枚浮かび上がる。

 どうやらこいつは『魔導書グリモア』を使うらしい。

 どこぞの猫型ロボット宜しく、「こんなこともあろうかと!」懐からカードを取り出すレオの存在が更に謎になる。

 そこから蛇面は一枚のカードを選択すると魔法名を告げた。


 『消火エクスティング


 言霊によって弾けたカード、赤い波動が広間を突き抜ける。

 おれが掌握していた炎は見る影も無く鎮火、炎の河どころかライターの火一つ見当たらない。

 鷹揚に頷いた蛇面が語る。

 

 「真の火魔導師は、発火も消火も思いのままなんだぜ?」


 火属性の使い手が居るのはわかっていた。

 でないと『炎虎フレイムタイガー』が居た理由が付かないしな。 

 やたら得意げ、「どうだ、すごいだろう?」とでも言いたいのか?

 それにしても真の火魔導師とは・・・ずいぶんご機嫌に謳ったものだ。

 ぜひうちの放火魔と語らってくれ。

 おれには興味が無い。 

 対峙したまま、とりあえず「・・・そうかよ。」と呟いておく。

 数瞬、沈黙に包まれる世界。

 沈黙を破ったのは蛇面だった。 

 

 「『悪魔デビル』、てめぇはどうなんだ?」


 さっきまでの軽薄な雰囲気を一転、地の底を這うような重苦しい声。

 そこに込められた感情は・・・言うなれば怨嗟?

 何かまた・・・知らない所で恨まれてるパターンか・・・うぜぇ・・・。

 それより今はレオの処遇なんだよ。

 おれが生殺与奪権握ってるから大人しいけどな、ちょっと目離したら何するかわかんねーんだから。 


 「ああ、すげぇな。おれは燃やすのはできても、消すのは得意じゃないからな。」


 面倒になり、奴が望んでいそうな言葉を投げかける。

 おれの言葉を聞いた途端、蛇面は天を仰ぎ大声で笑い出した。

 

 「くっくっく、くわーはっはっはっは!そうかそうか、そうだよなぁ!」


 一しきり笑った後、ゆらり・・・おれを睨みつける。

 作り物の蛇の顔が、まるで本物の大蛇のように怖気を誘う。


 「じゃあ何で・・・何でてめぇが、火魔導師の代名詞みたいに言われてんだよ!?てめぇは辛気臭ぇ闇魔導師だろうが!」


 え・・・なにこれ、怖い。



 ■



 「俺は忘れてねぇぞ!てめぇに受けた屈辱をなぁ!」


 絶叫、正に猛るとはこのこと。


 「・・・・・・。」


 (そんなこと言われてもな・・・。)


 全く身に覚えが無いのだが、どうやらおれは奴のプライドを甚く傷つけたことがあるようだ。

 おそらくは『地球』でだろう。

 まぁ、接点がそれしか思いつかない。

 ただ・・・どう対処したものか?

 うん、とりあえずレオをきっちりしめとこう。

 蛇面から興味を失い警戒は解かないまでも一先ず放置。

 目下ボコボコで絶賛蹲り中の獅子面へ意識を割く。

 

 「てめぇ『悪魔デビル』!シカトしてんじゃねぇぞぉ!?」


 しかし案の定、おれの注意が逸れたことを認識した蛇面が語気を荒げた。

 その言、まるで深夜のコンビニ前で、無意味に車座を形成する予備軍の皆さん。

 『リ・アルカナ』のトップランカーに、こんなチンピラは居ただろうか?

 思い出せない・・・だが、居たのだろう。

 でなきゃこいつが、ここに存在する理由がわからない。


 おれが逡巡してしまった間に、蛇面は目の前のカードを選択した。

 割り込むには距離があるし、むしろ短絡的に見える蛇面よりレオの方が警戒すべき対象だった。

 奴の掲げた両手、徐々に巨大な火球を形成する。

 おれも一枚だけ『魔導書グリモア』に入れてある魔法カード。

 指導者級の盟友ユニットですら直撃の際には即死する、古代級火属性攻撃魔法。

 

 「行くぜぇ『悪魔デビル』!あの世で『太陽サン』のテツ様が本当の火魔導師でした。おだって済みませんって詫びるんだなぁ!」


 口上、『太陽サン』のテツ。

 テツと名乗った蛇面の頭上、3m大の火球へと変貌を遂げた種火。

 居たなそんなヤツ・・・いや、居たっけ?

 正直思い出せない・・・たぶん居たんだろう。

 蛇面の凶行を止めたのは意外な人物だった。


 「落ち着けテツ。それを撃てばレオを巻き込む。」


 テツの背後から突然現れた白ローブ、またしても転移。


 (また新手・・・しかも3vs1だ。)


 メスティアに来てから『略奪者プランダー』が大盤振る舞い。

 ある意味では、遂に本腰を入れたと言った所か。

 次から次へとめんどくせぇ、誰か転移禁止の結界でも張ってくれないもんか・・・。

 新たに現れた人物、顔を覆い隠す面は鳥を模したそれ。

 静か、落ち着けるように蛇面を諭す。


 「鳥・・・面・・・!サカキ・・・『魔術師マジシャン』のサカキ!」


 脳裏を過ぎる弟分の・・・竜兵の握り締めた拳。

 そしてバイアとヴェルデの顔。

 いつのまにか口から呟きが零れた。

 

 それを拾った二者の反応は対極。

 一層警戒を強める鳥面と、俯き肩を震わせる蛇面。

 テツはさっと顔を上げると、妙にすっきりとした声で告げた。


 「サカキの旦那は覚えてるのに、俺の事は名前すら覚えてねぇのか。まぁいいや・・・てめぇもう死ねよ。『炎帝バーニングカイザー』!」


 「待て!テツ!」



 仲間からの制止も振り切り緩慢、死刑宣告が如く振り下ろされる腕。

 テツの腕の動きに合わせ、やけにゆっくりと落ちてくる火球。

 この位置、レオが巻き込まれるんだが、テツにとってはもう眼中に無いのか。

 直後、盛大な舌打ち、そして魔法名が聞こえた。


 「チィ!この馬鹿が!『引寄ドラッグ』!」


 サカキが懐から出したカードを使用する。


 (お前もそれやるのかよ!)


 おれの内心、何度目かもわからないつっこみを華麗にスルーして魔法が発動。

 カードから荒縄が生まれ、レオの全身に巻き付く。


 「がは!」


 おれにさんざ殴られ蹴られした傷が痛むのだろう。

 レオの口から乾いた呼気が漏れる。

 縄の先端は当然サカキの手の内に。

 「緊急事態だ、許せよ?」そう言い捨て、勢いよく縄を引くサカキにレオが引き摺られ、奴らの下へと引き寄せられる。


 (しまった!)


 そう思ったときにはもう遅い。

 サカキが使ったのは自軍専用の移動魔法だ。

 さすがに魔導師三人相手に一人はジリ貧だぞ。

 元からおれは短期決戦型なんだよ。


 そして、もはや目の前『炎帝バーニングカイザー』。

 さすがに直撃はまずい。

 サーデインくらいになると多重障壁で防いでくれそうだが、残念ながらおれにそんな力は無い。

 少しでも被害を和らげようとバックステップ。


 (間に合うかっ?)


 衝撃に備えクロスした両腕で顔を庇い、効果があるかわからないまでも全身に魔力を張り巡らせる。

 言うな、無いよりもマシの判断だ。

 火球が着弾するまでの、永劫にも似た一瞬。

 しかし・・・。


 炎はいつまでも襲い掛かってくることは無かった。

 恐る恐る腕を下ろすと・・・おれを庇うように立った赤銅色の後ろ姿。

 魔女のようなとんがり帽子に木製の杖、そして・・・ビキニの上下しか身に着けていない女性の後ろ姿があった。


 (え・・・?誰?・・てか、なんでビキニ?)

 

 頭には疑問符しか出てこない。

 そんなおれを赤銅色の女性はチラリ、いや・・・ギロリと一瞥。

 彼女はそれだけで『略奪者プランダー』の方へ視線を戻す。

 間違いなく助けられたのだろうし、文句無しの美人なんだが・・・なんだこの釈然としない気持ち。

 背中越しにかけられる言葉で更に困惑。 


 「あんたがセイで間違いないね?秋広の言った通りの容姿だよ。フン・・・本当に良い男じゃないか。」


 おれがどう言われてるとか、この際どうでもいいわ。

 それより問題は、突如舞い込んだ幼馴染の名前である。


 「あき・・・秋広!?貴女は秋広を知っているの・・・ですか!?」


 思わず敬語になったおれを誰も責められないだろう。

 窮地を救われた上、もうね・・・オーラがすげーんだ。

 それに彼女が答えるより先に、どうやらサカキに回復されたらしいレオが立ち上がり口を開く。

 

 「二人とも助かった・・・と言いたい所だが、お前らは何て者を連れてきたんだ・・・!」


 「いや!これは!」


 「済まんレオ・・・まさか追跡けられていたとは・・・!」


 声でしか判断できないからこそわかることもある。

 微かに震えるレオの声と、慌てるテツ、サカキ。

 困惑はどうやらおれだけじゃなかったらしい。

 ってか、これマジで誰なん?





ここまでお読み頂きありがとうございます。

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